社会問題 お飾り同然の中国の「労働法」

これで「過労死」しても安心? 物議醸す中国の「徹夜保険」

2024/12/10
更新: 2024/12/10

中国にも一応、「労働法」たるものは存在しているが、実際にはただのお飾りでしかない。

各業界で過度な残業や過労による突然死が頻繁に報告されるなか、同国最大手保険会社による「残業はもう怖くない! 夢のために徹夜保険を!」と謳った「徹夜保険(中国名:「996奮闘無憂険」)」が発売され始めたことがニュースになり、物議を醸した。

なお、保険名にもある「996」とは、週6日、朝、午前9時に出勤して夜、午後9時に仕事を終えるという勤務形態のことを指す。

この保険の加入料金は年間18元(約370円)~、突然死や事故などで亡くなった場合、弁償金は最高60万元(約1246万円)だという。

同宣伝ポスターの右下には中国最大手保険会社「中国平安」の商品であることの表記があった。

「徹夜保険」をめぐる話題では、「死ぬまで安心して働けってことか!」、「過労死したら60万元、労働者の命は安い」といった批判のほか、「この種の保険って一方的に定められた消費者にとって不利な規定が多く、無事に補償をもらえない確率も高い」とする不信の声も上がっている。

 

「自分が死んだら絶対過労死だ」と生前つぶやく23歳で急死したソフトウェア開発エンジニア

11月30日、安徽省合肥市(ごうひ-し)の賃貸アパートのなかで、23歳のソフトウェア開発エンジニア・劉さんが急死した。

「急死原因については長きにわたる残業による」と複数の中国メディアが伝えている。

劉さんは亡くなる前、友人とチャットの際にこのように書き残していた。

「毎日残業ばかりだ」
「自分はもうそろそろ(死ねかもしれない)」
「自分が死んだら過労死だ」

劉さんはよく、午前0時を過ぎても、顧客の設計要求を解決していたことが仕事のグループの履歴からも確認できるという。

このように、劉さんの急死は長期的な残業が原因と主張しているが、会社側はこれを否定している。

 

友人とのチャットで、「毎日残業ばかりだ」「自分はもうそろそろ(死ねかもしれない)」「自分が死んだら過労死だ」などと明かす劉さん。(動画よりスクリーンショット)

 

急死する労働者多発の「子供服の街」

過労死といえば、「子供服の街」として知られる浙江省湖州市(こしゅう-し)の町「織里鎮(しょくり-ちん)」を連想する華人は多い。

この「街」では近年、過労死と思われる急死労働者が絶えず、2023年3月に至っては1か月で4人が過労死したことが明らかになった。

 

中国の「子供服の街・織里鎮」で働く労働者が賃貸アパート内で急死、1週間後に発見された時の様子、2024年10月(動画よりスクリーンショット)
中国の「子供服の街・織里鎮」における過労死の実態を訴えるSNS投稿(中国SNSより)
李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!