政府発表となにか違う 急激なインフレで生活水準低下、その原因は?

2024/05/29
更新: 2024/06/15

現在、私たちは過去45年間で最も破壊的なインフレを経験しており、この状況はさらに悪化し、長期的には壊滅的な影響を及ぼす可能性がある。しかし、「状況はそれほど悪くなく、すぐに収束する」と、毎日のように伝えられている。

この2つの現実をどう調和させるのだろうか。明らかに、これらの2つの状況が同時に真実であることはできない。

政府発表との乖離

最近、ソーシャルメディアで広く拡散された検証済みの画像が、2019年末以降の主要ファーストフード店の価格上昇を示している。これは多くの人々の実感と一致している。データによれば、過去4年間でファーストフードの価格は倍増しており、1ドルの価値は今では50セント、あるいは25セントにまで下がっている。これはどの基準から見ても驚異的なインフレ率である。

エポックタイムズ

この状況は簡単に検証でき、実際の体験とも一致している。ファーストフードだけでなく、外食全般や家庭の食品価格も同様の傾向を示している。私自身の推測でも、2019年末の価格と比較すると、インフレは50%から100%、あるいはそれ以上に感じる。

(Data: Federal Reserve Economic Data (FRED), St. Louis Fed; Chart: Jeffrey A. Tucker)

しかし、政府の発表はまったく異なる。公式のインフレデータでは、外食の価格は約26%上昇し、全体の価格は21%上昇したとされている。公式データと実体験がこれほど大きく異なる場合、どうすればいいのだろうか。アメリカのコメディアン、チコ・マルクスが言ったように、「私を信じるのか、それとも自分の目を信じるのか?」という問いに対して、私は自分の目を信じる方が良いと考える。

インフレ統計の問題点

では、政府のインフレ統計で何が問題なのか。基本的な原因は、政府がインフレを計算する方法が、単純にある期間から次の期間へのデータを比較するものではなくなっていることである。

1996年以来、経済学者たちはデータに「ヘドニック調整」(商品の価格と機能の関係を統計的に推定する)を行うことを推進してきた。

この考え方は、消費者が購入から得る喜びが増えているため、価格をその点で調整する必要があるというものである。例えば今日のテレビは30年前のものよりもはるかに高性能であるため、単純に価格を比較することは意味がないというものである。新しい価格は、品質の変化を加味し、調整されるべきである。

しかし、結局のところ、この譲歩は統計学者たちを解き放ち、あらゆる可能性を超えた方法で数字を操作することになった。結局、このヘドニックという言葉は、インフレ・データは政府の統計担当者の意のままに調整されるべきだという意味になった。

その結果、労働統計局が発表するすべての戯言に誰もついていけなくなった。私たちが本当に知っているのは、それがすべてでっち上げだということだけだ。

インフレデータの重要性

しかし、データを把握することは非常に重要である。例えば、小売業においては、正確なインフレ数値を知る必要がある。

4年前にハンバーガーに費やした100ドルは今日では200ドルに相当するが、だからといって小売売上が倍増したとは言えない。実際には、ドルの価値が半減しただけなので、小売売上は横ばいである正しいデータを把握することが、正確な税務申告書を提出し、生活費を合理的に管理するために必要である。これにより、商人が利益を上げることができるのである。

インフレを正確に捉えられないことは、通貨価値の減少を意味し、その恩恵を受けるのは政府であり、代償を払うのは国民である。

ShadowStats.comというウェブサイトでは、1980年代の方法でインフレを計算する代替手法を提供している。これによると、インフレ率は通常、公式データの2倍である。私にはこれがより正確に思える。詳細な説明はそのウェブサイトで見ることができる。しかし、この方法でも全ての問題を解決することはできない。

CPIの限界

また消費者物価指数(CPI)には利率(interest rates)コストが含まれていないため、債務、特に住宅ローンやクレジットカードの影響を反映できない。

また、CPIは「帰属家賃」(owners’ equivalent rent)という複雑な公式を採用しているため、住宅や賃貸の問題を正確に反映できず、健康保険料の問題ではさらに複雑である。

消費量に基づいて支出を調整する計算方法を用いているため、実際には保険料が上がっているにもかかわらず、CPIではデフレとして記録されるのである。

またCPIは、シュリンクフレーション(商品の価格は変わらないままその内容量が減る(シュリンクする)経済現象)やサービスや製品の購入時に支払う隠れたコストも正確に追跡できないのである。

例えば、チケット購入時の配達手数料やサービス料、航空会社が保安検査前に最後の瞬間に徴収する追加料金、そして小さな手荷物一つに対して75ドルを請求される場合などである。

これらは問題の氷山の一角に過ぎない。最も信頼できる方法は、同じ製品の現在の価格と五年前の価格を比較することであるが、これも完全ではない。例えば、あなたのお気に入りのファーストフード店のハンバーガーは実際には小さくなり、肉の量も減っている。高価な食材を削減し、安価な食材を増やしていることに気付いているだろう。

結論

これら全ての結果として、我々は生活水準の急激な低下という厳しい現実に直面している。誰もがその影響を感じている。

しかし、ちょうどこのような時に、我々は専門家たちに囲まれており、彼らは自信満々に「全ては大丈夫だ、最悪の事態は過ぎ去った」と言い続けている。彼らは既に4年間もそう言い続けている。

ウォール街は、数か月以内に米連邦準備制度が金利を引き下げると予測し、その期待のもとに株式を高値で買い増している。これは一種の中毒のようなもので、緩和的な金融刺激から別の刺激へと依存している。このような状況が続けば、今後数年間で新たな大規模インフレの波が発生する可能性がある。

専門家たちが嘘をついているのを見ているのは一つのことだが、もっとも悔しいのは、彼らが嘘をついていると知りつつも、真実を知る権利を奪われていることである。

ブラウンストーン・インスティテュートの創設者。著書に「右翼の集団主義」(Right-Wing Collectivism: The Other Threat to Liberty)がある。