中国経済に新たな危険な兆候が見られている。貸付と借入の減少が続いており、国の深刻な経済・金融問題を浮き彫りにしている。これは北京が直面する課題と失敗の一つの証となっている。
中国人民銀行(人民銀)が最近公表したデータによると、銀行と銀行以外の金融機関の総融資額、つまり「社会全体の融資」は、1~3月の期間で12兆9300億元(約273兆円)に上った。昨年同期の流れと比べて約1兆6100億元(約35兆867億円)、およそ11%の減少である。
2024年1~3月の銀行の貸出額は9兆4600億元(約204兆1千億円)で、これも2023年の同期間と比較して大きく減少している。これらの数字は、経済学者たちの予測を下回った。
経済成長に不可欠な資金供給が不足している現状は、北京の指導者たちにとって懸念材料だろう。特に、中央銀行が金融市場に寛大な流動性を提供しているにもかかわらず、ビジネスへの資金提供は引き続き減少しており。明らかに、貸し出しと借り入れの不足は供給ではなく需要の不足を反映している。
人民銀のデータによると、市場に流通している資金、マネーサプライM2は、3月末までの12か月間で8.3%という速いペースで増加しており、2月末までの12か月間の8.7%からはわずかに低下しているものの、まだ拡大傾向にある。
にもかかわらず、企業への融資は減少傾向にある。この貸し出しと借り入れの不足は、供給不足ではなく需要不足を示している。これは経済問題の中でも最も根本的な問題を浮き彫りにしている。
この需要不足の多くは、中国国内の不動産危機に起因している。2021年に大手デベロッパーの恒大集団が債務不履行を発表して以来、問題は悪化の一途をたどっている。
恒大をはじめとする重要な不動産開発業者の消滅は、建設活動を大幅に減少させ、2月のデータでは前年同月比で33%下落した。
また、住宅購入を検討していた人々を躊躇させ、住宅販売も前年同月比で約30%減少している。特に注目すべきは、これらの開発業者の破綻により、何百万人もの住宅購入希望者が完成するかどうかも分からない住宅の前払いに住宅ローンを組んでいることだ。
さらに、より根本的な問題が浮上している。恒大をはじめとするさまざまな不動産デベロッパーの破綻は、中国金融の全体的な有効性を損なっている。
現在未完成のマンションを前払いした人々の多くが、住宅ローンの支払いを拒否している。それに伴い、銀行やその他の金融機関は、帳簿上にかなりの量の疑わしい負債を抱えている。
デベロッパーの破綻はまた、中国金融全体に疑わしい負債の遺産を残した。
この暗雲の下で、潜在的な貸し手は借り手候補の財務の健全性を少なからず警戒している。このような疑念は、金融機関同士の取引や通常の日常的なフローにも躊躇を生む。
2008~09年にかけての金融危機の際、アメリカでも似たようなことが起こった。当時の米国でも、そして現在の中国でも、金融市場が経済成長を支える力が弱まっている。
このような根深い問題に対して、人民銀の利下げはほとんど効果を発揮していない。人民銀は過去1年ほどの間に5回の利下げを行った。しかしそのどれもが小さな一歩だった。
例えば、同行の主要指標のひとつであるプライムレート(最優遇貸出金利)は、0.4%しか低下していない。
同時期に中国は年2%前後の緩やかなインフレから緩やかなデフレに転じていることを考えると、中央銀行の引き下げによって、政策開始時よりも実質金利が高くなってしまった。これは借り入れを促すものにはならない。むしろ抑制している。中国共産党の金融政策が経済活動の拡大を引き出すことができなかったのは、不思議ではない。
人民銀が状況に応じて大胆に動いたとしても、中央政府は不動産危機に直接対応する必要がある。不動産部門の問題が発生した2021年に当局が迅速に動いていれば助かっただろう。
2023年まで行動を起こさなかったことで、金融市場の仕組みを弱体化させる時間を与えてしまった。もし当局が直ちに、例えば数百万人の中国人購入者がすでに支払った未完成のマンションを政府がバックアップすると発表していれば、不動産デベロッパーの破綻による悪影響を鈍らせることができただろう。
しかし、中国共産党は何もしなかった。当局が未完成のマンションやその他のデリケートな開発を支援するために動いたとしても、その金額は必要性に見合わないものだった。最終的な措置として、中国共産党政府は恒大の損失額の5%強を補填したにすぎず、それ以降のデベロッパーに比べればはるかに少額だった。
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