笹川平和財団は台湾有事を想定した机上演習を実施し、その報告書を3月末に公表した。報告書によると、もし米中が台湾をめぐり軍事衝突した場合、日米台すべてに甚大な被害が及ぶことが明らかになった。
同財団が実施した机上演習では、2026年に中国共産党が台湾に侵攻するシナリオを想定。米国が台湾防衛のため軍事介入し、日本も自衛隊が後方支援を行うという設定だ。演習の結果、中国共産党軍は台湾北部への上陸に失敗し大敗を喫したものの、日米にも深刻な被害が出た。
中国側は大量の弾道ミサイルで在日米軍基地を攻撃。日本は航空自衛隊の戦闘機200機以上を、米軍は400機近くを失った。さらに、日本は護衛艦18隻、米国は空母2隻を含む艦艇10隻以上を喪失。日米の犠牲者は合計2万人以上に上った。
一方、中国側も潜水艦27隻、戦闘機168機などを失い、4万人以上の死傷者を出す大打撃を受けた。最終的に中国共産党軍は補給を断たれ、秩序ある撤退のため停戦を余儀なくされたという。
演習では、中国が福建省から水陸両用部隊を台湾北部の桃園周辺に上陸させ、一時は台北を目指して侵攻を進めたものの、日米の援護を受けた台湾軍の激しい抵抗に遭った。さらに、米軍の潜水艦や日本の対艦ミサイルが中国の水上艦艇を次々と撃沈。中国軍は海からの補給を断たれ、孤立無援の状態に陥った。
台湾防衛では日米の航空優勢が鍵を握ったが、台湾周辺の米軍基地が中国のミサイル攻撃を受けて大打撃を被った。沖縄や九州の在日米軍基地が機能を喪失したため、日本は民間空港を含む国内7か所の飛行場を米軍に提供。九州西岸に展開していた海上自衛隊のイージス艦も中国軍の攻撃で2隻が撃沈され、日本の防空能力が大きく低下した。
宇宙やサイバー空間でも日米中の攻防が繰り広げられた。中国による衛星への攻撃で日米の偵察能力が低下する一方、米軍のサイバー攻撃により中国軍の補給が滞るなどの影響が出た。報告書は「現代戦では宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域の戦いが不可欠」としたうえで、「とりわけ日本のサイバー防衛は喫緊の課題」と指摘している。
笹川平和財団は、こうした破滅的な結果を避けるには、平時から危機の兆候をつかむ日米中の連携が重要と指摘。軍事力による抑止とともに、有事の回避に向けた外交努力を強化すべきだと訴えている。
また、万一の事態に備え、在日米軍や自衛隊の基地防護を強化し、邦人退避などの対応を日米台で事前に調整しておく必要があるとしている。報告書は「シミュレーションで得られた知見を生かし、日米中の対話を深めることが肝要だ」と結んでいる。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。