子供の深刻な肺炎が中国各地で大流行 「本当は新型コロナの変異株」と専門家

2023/11/06
更新: 2023/11/06

このごろ、上海をはじめ北京、広州など中国各地で「新型コロナによく似た症状」の感染症が急激に広がっており、病院は昼夜を問わず大混雑している。

なかでも、深刻な肺炎を発症した児童患者が爆発的に増えている。各地では病床が足りず、十分な医療が行えない危機的な状況が続いている。

「新型コロナ」と認めない当局

なかには、呼吸困難がひどく、酸素吸入を必要とするような「白肺(バイフェイ)」と呼ばれる深刻な病状の児童も多い。「白肺」とは、肺が重度の炎症を起こしているためレントゲン画像に白く映る状態を指す。

各地の病院に、新型コロナによく似た症状の患者が殺到している原因について、中国当局は「マイコプラズマ肺炎(中国語:支原体肺炎)」と主張している。しかし「政府は再び隠蔽している。本当は新型コロナだろう。また呼び名を変えただけだ」と疑う民衆も多い。

この現状について、中国の一部の医師も「本当は新型コロナの変異株である」と知っており、診断上そのようにカルテに書くことはできないが、内々に暴露するケースもあるという。

米国のウイルス学の専門家で、米陸軍研究所のウイルス学科実験室主任も歴任した林暁旭博士は今月3日、エポックタイムズの取材に対し、「マイコプラズマ肺炎は、とくに手ごわい病気ではないため、白肺を引き起こすことはほとんどない。やはり新型コロナの変異株である可能性が高い」と分析している。

昨年12月初め、中国当局はゼロコロナ政策を突然解除した。その後、中国におけるコロナ感染の現状がどうなっているのか、ほとんど伝えられることはない。名目上は「コロナを克服した」ということになっているため、今さら中国当局が、感染の再燃を認めることはできないからだ。

本当にコロナ感染が落ち着いたのか、あるいは、当局の厳しい情報封鎖によって実状が伝えられないのか。「隠蔽」と「嘘」がお得意である中国共産党の統治下では、中国国内の感染状況は非常に不透明だ。海外においては、時折ネット上に流出する中国市民の投稿から、その一端を伺い知ることしかできない。

上海のある病院「患者数は例年の3倍以上」

各地の児童病院(小児科)が大混雑する様子を示す動画は、SNSにも多数投稿されている。それによると、昼夜を問わず、病院内や点滴室は人があふれかえっている。

NTD新唐人テレビの取材に応じた上海市民は、「上海でマイコプラズマ肺炎が大流行している。病院では、たった5分の診察ために7、8時間も待たなければならない」と明かした。

今月2日、上海交通大学医学院付属新華病院にかかった複数の市民は、その混雑ぶりについて伝えている。それによると「朝9時に診察の受付窓口に行ったら、残っていたのは夜の診察の番号だけ。番号は3000番だったよ」という。つまり1日で、3000人以上の患者が殺到していることになる。

同病院に勤務する医師は「9月からずっと、このような(混雑した)状態が続いている。ここ最近では、私たちは夜中の1時、2時まで患者の診察をしている。翌朝8時から、また次の日の診察が始まる」と明かしている。

 

新華病院の医師。(NTD新唐人テレビの報道番組よりスクリーンショット)

 

上海のメディアによると、上海市松江区にある病院の小児科外来では毎日700件以上と、例年の同期より3倍以上の患者が殺到している。

病院は、診察時間の延長と病床数の大幅な増加(30床から50床へ)を余儀なくされている状態だが、それでもなお100人を超える子供の患者が、入院のため病床待ち状態だという。

マイコプラズマ菌は、感染すれば発熱、せき、喉の痛みなど風邪に似た症状を起こす。子供に限らず、大人であっても感染する。

ただし、マイコプラズマ菌は自然界にも存在しており、容易に飛沫感染するが、発症してもほとんどの患者は軽度の上気道感染にとどまるため、多くの場合、自力で回復できる。

しかし、メディア取材に応じた新華医院の俞慧菊医師は、次のように語る。

「外来のマイコプラズマ肺炎患者の大半は10歳以下の子供が多い。なかには病院で治療を受けても重症化したり、白肺になるケースもある。私は、医師になって30年以上になるが、こんなに多くのマイコプラズマ肺炎の患者をみたのは、初めてだ」

俞医師は、自身の立場があるので、その病名をマイコプラズマ肺炎と呼んではいるが「この多さは異常である」ということも、言外ににじませているといってよい。

 

新華医院の俞慧菊医師。(NTD新唐人テレビの報道番組よりスクリーンショット)

 

また「今の感染の波は、冬休み頃まで続くだろう」と予測する医師もいる。そのため感染状況は、今後も深刻化する恐れがあるとみてよい。

マイコプラズマ肺炎にかかったという、ある上海市民によると「上海で1回感染し、1日半入院して、10日で治った場合の治療費は総額約9000元(約18万円)ほど。医療保険を適用しても、自費での負担額は約4000元(約8万円)に上る」という。

日本の感覚でいえば、おおよそ「数十万から百万円の自己負担」に相当するだろうか。

子供が病気に罹ることは親として最大の心配事であるが、それにともなう経済的な負担もまた、実に辛い現実となって重くのしかかってくる。

 

マイコプラズマ肺炎にかかった上海市民が投稿した自身の診察領収書。(NTD新唐人テレビの報道番組よりスクリーンショット)

 

 

(NTD新唐人テレビの報道番組)

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。
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