92歳のTSMC創設者、「熊本は半導体に理想的」九州に期待

2023/10/16
更新: 2023/10/16

世界各国が半導体産業の拡大に競い合う中、台湾積体電路製造(TSMC)創設者の張忠謀(モリス・チャン)氏は、日本の九州における水資源や電力供給の豊富さを挙げ、その地域の仕事に対する姿勢が半導体製造環境に理想的であると発言した。

TSMCはこの日、台湾の新竹県立体育館で社内スポーツ大会を開催。ことし92歳の張氏も出席し、各国の半導体産業発展に関する見解を述べた。

張氏は50年前、テキサス・インスツルメンツ(TI)のために九州を訪れた経験を回顧し「九州の環境は半導体製造に適している」と語った。「九州は資源が豊富で、日本全体の仕事に対する姿勢も素晴らしい」と指摘した。

特に、張氏は熊本県のインフラと技術産業への取り組みを称賛し「熊本は半導体製造に理想的な場所である。ここには高度な技術開発を支える資源と熟練した労働力が存在する」と強調。日本の地方都市がグローバルな半導体供給網の一部としての役割を拡大する機会を持っていると期待を込めた。

現在、TSMCは熊本で第1工場を建設中で、6ナノの先端半導体を生産する第2工場の建設案も検討されている(共同通信10月13日付)。日本政府が補助金を通じて支援する半導体事業による熊本の経済波及効果は、10年で4兆3千億円に達するとの試算もある。

張氏は、競争の激しい半導体分野の世界情勢についても見解を述べ「半導体産業はもはや(無分別に)グローバルではなく、自由貿易の時代も終わっている。最も重要なのは国家安全保障であり、各国がそれに集中している」と指摘。TSMCが世界の主要なプレーヤーとしての地位を維持するためには、内部の団結と技術革新が不可欠であると強調した。

「競争相手は地政学的な利点を利用して私たちを打ち負かそうとしている。だから、これからの数年間でのTSMCの挑戦は、過去と同じか、それ以上に厳しいものになる」と張氏は述べた。

張氏は、自らの米国での経験を基に、1950年代から1970年代初頭の米国の半導体製造環境が現在の台湾と同様に優れていたと指摘。しかし、米国は現在、半導体製造の大部分を失い、エヌビディアのように資本集約度の低い高度な半導体設計分野へと移行していると分析した。

さらに、設備を常時稼働させる従業員とその家族の長年の勤労によって、世界的な競争を乗り越える台湾の半導体産業が支えられてきたと労った。「深夜に設備トラブルが発生してもエンジニアに連絡すれば『わかりました、すぐ伺います』と返答がある。妻も不平を言わず、この状況に米国人は驚いている」と張氏は語った。

しかし、未来の20年から30年後には、このような状況は変わる可能性があるとし、今後はインド、ベトナム、インドネシアなど新たな国が半導体分野で台頭してくるだろうとの見通しを示した。

日本の安全保障、外交、中国の浸透工作について執筆しています。共著書に『中国臓器移植の真実』(集広舎)。