臓器狩り停止に向けて…法整備、米台で進展 日本でも認知高まる

2023/07/22
更新: 2023/07/21

中国における臓器の強制的な奪取「臓器狩り」問題をめぐり、米国や台湾で法整備が進行中だ。日本でも議連での取り上げや議員からの周知が行われている。議会だけでなく国際的な医学界でも継続的な警告により問題の認知が高まっている。

米国で厳罰化求める法案

米下院外交委員会は6月21日、「法輪功保護法案」を全会一致で通過させた。「臓器狩りという大量虐殺の終わりを目指す」ことを掲げ、この人道犯罪に加担した者を罰する法律を制定することを政府に求める。最大の犠牲者は中国伝統気功・法輪功の学習者であることから法案名がついた。

同月末には、米共和党のミシェル・スティール、ニール・ダン両議員がブリンケン国務長官に書簡を送り、臓器ビジネスに関わる人物の入国禁止やビザ停止など対処を急ぐよう求めた。

スティール氏の両親は北朝鮮からの脱北者だ。共産主義の恐ろしさに長らく取り組んできた同氏は「中国の臓器摘出に対しても早急に行動を起こすべきだ」と訴え、移植技術を中国の医師に提供できないようにすべきだと書簡のなかで述べた。

下院では3月末、「強制臓器摘出停止法案」が共和・民主両党の圧倒的支持を得て可決した。臓器狩りに関与した者は入国禁止に加え罰金刑や懲役刑が課せられる。

米国では医学会でも臓器狩り問題が取り上げられている。

半世紀あまりの歴史を持つ米国医師および外科医協会(AAAP)は7月、中国の臓器強制収奪問題を非難し、中国など全体主義の国家から来る医学生や医師らが米国で移植医療の技術を学ぶことを規制すべきだと提言した。

米国では中国の移植医344人が技術訓練を受けていると、ハドソン研究所の宗教自由センターのディレクターであるニナ・シェイ氏は指摘する。「米国の移植医療界は中国の移植産業を公然と支持している」として、中国移植医の受け入れを批判している。

世界的に権威ある医学誌「米国移植学誌」は、中国での多くのドナーの死因は脳死や他の自然死ではなく、臓器収奪プロセスがあると指摘する論文を昨年発表した。

台湾地方議会で活発化する 厳罰化求める声

台湾では立法院や地方議会でも臓器狩りの関与に対する厳罰化や啓蒙活動強化などを盛り込んだ法案の可決が進んでいる。

議案を通過させた新北市の周勝考市議(国民党)は、「臓器の強制的な摘出は絶対に許されない行為だ」と強調し、誘拐や臓器売買の被害を防ぐためにも臓器狩りの厳罰化が必要だと訴えた。

游錫堃立法院長(国会議長に相当)も臓器狩り撲滅に向けた法整備に意欲を示している。

「臓器狩りは国連によって人道に対する罪として認定されている。人権を重んじる台湾は、立法を進めるべきだ」とSNSの投稿で指摘。米下院で臓器摘出停止法案が通過したことを引き合いに出し、「臓器狩りを禁じる立法措置は国際的な潮流だ」と述べた。

日本でも着実に広がる

日本でも国会や地方議会でも臓器狩りについて言及されている。

臓器狩り問題に長らく取り組んできた逗子市議会の丸山宏章議員は18日、エポックタイムズの取材に対し「日本でも国会の議員連盟が取り上げていく機運はある。少しずつ進展していっている。もっと動きを加速させたい」と語った。

2014年、丸山氏は市議会で臓器移植に関する決議案を提案したが、法輪功迫害と中国共産党といった具体例をあげたことで強い反発を受けたという。いっぽう、今は「(臓器狩り問題の)認識は広まっている」と述べ、法整備に向けて認知度の向上は「避けては通れない」とし、啓発を続けていく考えを示した。

山田宏参議院議員は18日、「中国共産党により不当に収監されている数百万人の法輪功学習者やウイグル、チベットなどの人々から、オンデマンドで適合臓器が抜き取られ殺害されているとの数々の証言がある」とツイートした。

山田氏は2019年11月に参議院外交防衛委員会で、カナダの独立調査団による報告書『中国臓器狩り』を手に掲げ、人道問題として法整備等対策が必要だと強く訴えた。SNSでも「『臓器収奪』という大虐殺」と表現し、問題の周知を行なっている。

今国会でも石橋林太郎衆議院議員が中国臓器狩り問題について質疑をした。岸田政権で人権担当補佐官が設けられたことや、対中政策に関する列国議会連盟(IPAC)の東京会合で中国臓器狩り問題が話題に上がったとして、「日本の国会でもこの問題が前進することを非常に強く望む」と訴えた。

人道に反する臓器摘出の問題に対処するために、米国、台湾、そして日本はそれぞれの法的対応を進めている。これらの取り組みは、医療専門家と立法者の協力により、全体主義国家の行為に対する強力な反対のメッセージを送っている。

日本の安全保障、外交、中国の浸透工作について執筆しています。共著書に『中国臓器移植の真実』(集広舎)。