ドキュメンタリー映画『国家の臓器(国有器官)』が国際的な賞を多数受賞し、中国共産党(以下、中共)による生体臓器摘出問題への関心が再び高まっている。監督の章勇進氏と「法輪功迫害追査国際組織」(以下、追査国際)の主席である汪志遠氏は、『健康1+1』の番組で、中共による生体臓器摘出が近年ますます猖獗を極めていると語った。汪志遠氏は次のように述べた。「悪魔の集団が社会で暗躍し、彼らの狩猟の対象は人間だ。社会全体が危険にさらされている」
医学論文が殺人過程を漏洩
「追査国際」(法輪功迫害追査国際組織)の報告によると、中国本土で発表した臓器移植に関する論文の中に、「温虚血」時間が0である臓器が大量に記載されていることが判明した。「温虚血」時間が0とは、臓器摘出時に心拍があり、血液が循環していることを意味する。中国・昆明市の延安医院の呉剣らが2008年に発表した論文『2例の心肺同時移植におけるドナー心肺の摘出と保護』は、2例の殺人事件の記録にあたる可能性があると指摘している。
論文には次のように記されている。
「ドナーが手術室に入室後、通常の手術手順に従い麻酔および挿管を行った。ソル・メドロールを静脈注射し、ヘパリン(3mg/kg)を投与した。麻酔が効いた後、通常通り消毒し、手術用の布をかけ、正中切開を行い、標準的な手術方法に従って迅速に胸部へ進入する」

「追査国際」の分析は以下になる。
1.このドナーは生きていた可能性が高い。もし死亡しているのであれば、麻酔を施す必要はない。
2.このドナーには意識があった。医師は神経の感覚や反射をもとに麻酔の効果を判断する。麻酔が効いてから手術を開始すると記されている以上、このドナーは感覚があるか、神経反射があったと考えられる。
3.このドナーは自発呼吸が可能であり、脳死状態や深い昏睡状態ではなかった。なぜなら、医師は手術室に入室後に気管挿管を行っているからだ。手術室に入る前に自発呼吸がなければ、(手術室に入る前に)すでに挿管されているはずである。
「追査国際」の報告では、次のように指摘している。「彼らは殺人の過程を論文に記述し、それを海外のインターネット上で発表している。このことは、彼らにとって殺人が日常業務となり、何の躊躇もなく行われていることを示している」
ある学者が中国の2838本の心肺移植に関する論文を分析したところ、そのうち71本の論文で、ドナーが心肺摘出前に脳死ではなかった可能性が極めて高いことが判明した。
この研究は2022年に『American Journal of Transplantation』に発表された。著者は、イスラエルのテルアビブ大学医学部シーバメディカルセンターの心臓移植科のヤコブ・ラヴィ(Jacob Lavee)主任と、オーストラリア国立大学の博士候補生マシュー・ロバートソン(Matthew P. Robertson)氏である。
二人の学者は次のように説明している。これらの論文では、脳死と診断した後に気管挿管を行ったという記述が見られる。しかし、脳死を判定するには「無呼吸テスト(apnea test)」が必要である。つまり、人工呼吸器を外し、患者が自発呼吸できるかどうかを確認する検査である。したがって、脳死と判定された患者は、必ず事前に人工呼吸器を装着しているはずである。
また、一部の論文ではドナーに静脈カテーテルを挿入したり、筋肉内に抗凝固薬であるヘパリンを注射したことを記載している。研究によると、もし本当に脳死の患者であれば、救命処置の過程ですでに静脈カテーテルを挿入しているはずである。このことから、これらの論文に登場するドナーは脳死の患者ではなく、場合によっては自力で動くことができる生きた人間であった可能性があることが分かる。
公安局長が発明した脳死装置
これらの中国の論文では、心肺摘出前のドナーの状況についての記述がない。研究者は、その一つの可能性として、被害者を手術前に行動不能にするために、近距離で脳死状態を引き起こす装置が使用された可能性があると分析している。例えば、元公安局長・王立軍が発明した「原発性脳幹衝撃装置」の特許が挙げられている。
王立軍は、錦州市および重慶市の公安局長を務めていた際に、複数の「研究センター」を設立し、臓器移植に関する研究を進めていた。彼は前述の脳死を引き起こす装置の開発だけでなく、医学の専門知識がないにもかかわらず、摘出した臓器を保護するための保存液の発明にも関与していた。
番組『健康1+1』に出演した汪志遠氏は次のように示した。自身のチームが病院を調査した結果、一部の病院で提供される移植用臓器が「脳死センター」から来ていることを突き止めた。生きた人間を脳幹に衝撃を与えて神経を損傷させ、脳死状態にすることで、医師が生体からの臓器摘出に伴う心理的負担を軽減させようとした可能性があると指摘している。
さらに汪志遠氏は、中国本土では現在も脳死に関する法律が制定されておらず、行政機関が正式に認めた脳死診断の基準も存在しないことを強調した。そのため、「脳死」とするドナーから臓器を摘出することは、中国国内では本来違法である。
臓器提供のデータ偽造が暴露される
「追查国際」の10年以上にわたる調査によると、中共は前後して「死刑囚の臓器」や「市民の自発的な提供」という名目で、法輪功学習者からの生体臓器摘出の事実を隠蔽してきた。
しかし、汪志遠氏とそのチームの調査によると、中共当局が2015年のすべての移植用臓器は「市民の自発的な提供によるもの」と宣言した後、少なくとも3年間、中国紅十字会(赤十字)に登録された臓器提供者の数は極めて少なく、一部の地域では臓器提供の活動すら始まっていなかった。
2018年8月31日、「追查国際」が北京市海淀区の紅十字会に電話したところ、当直の職員は「北京市の臓器提供の取り組みはまだ準備段階にある」と回答した。また、市内の各区の紅十字会は、宣伝活動のみを行い、実際の臓器提供の業務は行っていなかったことが判明した。
国際社会から生体臓器摘出への非難が高まる中、中共は2013年に「中国人体臓器分配・共有システム(COTRS)」による臓器分配の強制使用を発表した。しかし、大紀元が入手した浙江省の内部確認報告によると、2015~18年にかけて、多くの臓器がCOTRSを経由していなかったことが明らかになった。中国の病院で行われる膨大な数の臓器移植を考慮すると、明らかにされたのは氷山の一角にすぎない。
2017年6月10日、「追查国際」が、山東省煙台市の毓璜頂医院の臓器コーディネーターである王主任に、電話調査を行った際、臓器は全国ネットワークを通じて取得しているのか、と質問した。これに対し、王主任は次のように率直に答えた。「あのネットワークでは何の問題も解決できない、全部ウソだ! 単なる形式にすぎない!」
ヤコブ・ラヴィ(Jacob Lavee)氏などの学者は、統計学の角度からCOTRSのデータが偽装されていることを発見した。COTRSのデータは、異常なほど単純な二次関数にほぼ一致しており、これは他のどの国の臓器提供データにも見られないパターンだった。さらに、データには多くの矛盾や異常があり、システマティックな偽造や人為的操作なしには説明できないことが明らかになった。
国際的な学術誌が中国の論文を撤回
一部の中国の臓器移植論文は、正当な臓器提供の証拠を示すことができなかったため、国際的な学術誌から撤回される事例が相次いでいる。2017年2月6日、『Science』のウェブサイトは、浙江大学第一附属医院の鄭樹森医師が2016年10月に『Liver International』に発表した論文が撤回されたことを報じた。
理由は、論文で扱われた563例の肝移植手術において、合法的な臓器提供源を証明できなかったためである。さらに、『Liver International』誌は、鄭樹森医師による今後の論文投稿を永久に禁止した。
2016年、『Liver International』に掲載した学者からの書簡によると、鄭樹森医師の研究が行われた期間、中国の臓器提供システムに登録されたドナーはわずか2326人しかいなかった。その中には、「自発的に臓器を提供した」とされる死刑囚も含まれていた。さらに、アメリカの同時期のデータによれば、心停止後のドナーの肝臓が移植に適合する割合は約30%にすぎない。(この統計に基づけば、)浙江大学第一附属医院の肝臓移植がすべて自発的な臓器提供システムによるものだった場合、同病院だけで全国の「自発的ドナー」の80%を占める計算になる。
同書簡の通信作者であるオーストラリア・シドニーのマッコーリー大学の臨床倫理学教授、ウェンディー・ロジャーズ氏は、2019年に科学誌『Nature』で世界のトップ10科学者の一人に選ばれた。彼女が率いる研究チームは、中国の移植医師が発表した論文を調査し、2019年2月に報告を発表した。この報告では、400本以上の論文で囚人の臓器を使用した可能性があると指摘していた。この調査結果を受け、少なくとも2つの学術誌が20本以上の論文を撤回した。
2022年には、国際心肺移植学会(ISHLT)が声明を発表し、中国本土の臓器移植に関する論文を受理しない方針を示した。
各国の生体臓器摘出犯罪者への対策
世界各国は、「臓器移植ツーリズム」に打撃を与えるために、立法を進めている。中国での生体臓器摘出問題が暴露された後、イスラエル、スペイン、台湾、韓国、カナダなどの国々は、自国民が外国で出所不明な臓器を移植するのを防ぐために、相次いで法案を可決した。さらに、ヨーロッパ連合(EU)は2015年に『人体臓器の取引に関する欧州評議会条約(CETS No. 216)』を採択し、20以上のEU加盟国と非加盟国が署名した。
2023年11月28日、東京地方裁判所は、海外での臓器移植仲介を行っていた「難病患者支援の会」の理事長、菊池仁達に対し、臓器移植法違反として、懲役8月(求刑・懲役1年、罰金100円)の実刑判決を言い渡した。菊池被告は法廷で、日本人患者に海外で臓器移植を受けるよう紹介し、そのほとんどが中国本土に渡航したことを認めた。
アメリカ議会は、生体臓器摘出犯罪者に対する制裁のため複数の立法が進められている。2023年3月27日、アメリカ下院は『強制臓器摘出防止法案』を可決した。また、2024年6月25日、アメリカ下院は『法輪功保護法案』を可決した。
歴史的転換点
汪志遠氏は、アメリカの『法輪功保護法案』を人類の道徳的な頂点に立った画期的な決定として評価し、次のように述べた。「中共による生体臓器摘出は、ナチスのホロコーストよりも残酷な方法で現代社会に現れた。その目的は、真・善・忍の信仰とその信仰を持つ人々を絶滅させることだ。その目的は、これらの人々を消すことにとどまらず、彼らの信仰そのものを消し去ること、つまり人間の魂を絶滅させることだ。私は、全人類がこの犯罪行為を止めるために努力し、人類の道徳的に許される最低ラインを守るべきだと考えている」
『国家の臓器(国有器官)』の監督である章勇進氏は、第二次世界大戦後、人々は強制収容所や大虐殺の悲劇が再び繰り返されることがないように語り続けてきたが、現在、このような犯罪行為が現代社会で実際に発生していることを指摘した。彼は、ドキュメンタリー映画を通して、被害者家族の視点からこの歴史的な事件を反映させ、このような出来事が二度と起こらないことを願っている。彼はさらにこう述べている。
「これは中国における25年間で最も痛ましい歴史の一幕だ。同時にこれは歴史的転換点でもある。私たちにはこの反人道的な犯罪行為を止め、進行中の歴史を変える機会がある」
章勇進氏は、この人道的災難を止めるために、各視聴者に真実を周囲の人々に伝えるよう呼びかけ、アメリカ国民には、上院が早急に『法輪功保護法案』を通過させ、正式な法律としての成立を促すよう呼びかけた。
国家の臓器(State Organs)は2025年3月26日(水)に東京の文京シビックセンター 2Fで上映会(19:00~21:00)を開催する。
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