幾度となく死の脅迫を受けた…中国通信機器大手の内部告発者が語る一部始終

2023/03/16
更新: 2023/03/16

野心溢れる若い弁護士にとって、大企業の顧問弁護士はまさに「夢の仕事」だ。中国の通信会社ZTEから顧問弁護士の依頼を引き受けたアシュリー・ヤブロン氏も、まさにそんな「夢」を手にした若者の1人だった。

しかし、仕事の代償として祖国への忠誠心が犠牲になることを知り、彼の夢はたちまち悪夢と化したのだった。

昨年12月15日、ヤブロン氏はEpoch TVのインタビュー番組「米国思想リーダー」に出演。中国企業、ひいては中国共産党に刃向かうようになった経緯を語った。

彼は、ZTE社の米輸出規制回避策を内部告発し、自著『中国に立ち向かう:内部告発者はいかにして国にすべてを賭けたか(仮題)』を著した。

「安心を感じたことなどなかった」とヤブロン氏は胸の内を語る。

キャリアに目が眩み…

2011年10月、ヤブロン氏のZTEでのキャリアが始まった。それまで彼は、数年に渡りさまざまな法律事務所で弁護士としての腕を磨き、出世街道を歩んできた。

「法律事務所では、一種類の弁護士業務で多くのクライアントを抱える。一方、顧問弁護士は1人のクライエントを相手に複数業務をこなす。法律事務所ではただ業務をこなすだけだが、顧問弁護士はより幅広い業務に携わることができる。私はそこに興味を持った」とヤブロン氏は語る。

ZTEで顧問弁護士を務める前、彼はウイルス対策ソフトウェア会社のマカフィーや、中国の通信会社ファーウェイに勤務していた。

「数十億ドル規模の国際企業で、法律顧問補佐を務めることができるなんて、信じられないようなチャンスだと思った。しかし、すぐにアメリカ文化と東洋文化の違い、特に中国文化との違いについて思い知らされた」。

「違い」に関して、彼は「中国人は道徳という概念を異なるレンズで見ているようだった」と指摘している。なかでも、ファーウェイで同僚だった中国人弁護士が、法律を守ることを「単なる提案に過ぎない」と主張したことを次のように振り返っている。

「私たちは道徳心を持っており、その判断をすることができる。彼らはそうではない。彼らが不道徳な人間だと言ってるのではないが、彼らはビジネスやその手の決断に対して、西洋人と同じようには見ていない」

今にして思えば、この出来事はすでに「赤信号」だったはずだが、自分のキャリア目標に目がくらんでしまったという。

「疑問は抱いたが、傲慢さや、顧問弁護士まで上り詰めたいという欲望を止めることはできなかった」。

ビジネスの危険性に気づく

ZTEに在職していたヤブロン氏だったが、同社が国家安全保障上の潜在的な脅威として、米国下院の調査を受けていることを知るまでに、さして時間はかからなかった。同社とイランとの契約書がリークされたことで、仕事を続けるリスクはより明確になったという。

「ZTEとイランの契約書のコピーを入手したというロイターの記事が出ていた。ZTEは数億ドル相当のスパイ技術をイランに売っていた。問題はそれらに米国製品の部品が使用されていたことだった。」

ヤブロン氏が突き止めた通り、ZTEはペーパーカンパニーを使って米国製品の部品を入手し、それを中国に送り、そこからイランに販売していた。

米国政府の対イラン制裁により、イランへの製品輸出は米国の法律で禁止されている。

ZTEとイランとの契約が暴かれた後、ヤブロン氏がその文書の中身を確認し、起こりうる損害について判断するのに与えられた時間はわずか15分だったという。

「契約書の『米国輸出規制法の回避方法』と題された部分に目を通すと、そこにはペーパーカンパニーが全て列挙され、それぞれの会社が何をするかが書かれていた。それを見たときは、イスから転げ落ちそうになった」とヤブロン氏は当時を振り返る。

「そして、何かしなければならないと思った」

すべてを賭ける

ヤブロン氏は、米国政府の調査に応じるよう助言したが、会社が別の方針を決めたと後から知らされたという。

「彼らは嘘をつこうとした。違法行為を働いていないことを示そうと、私をスケープゴートにしようとした。そこで、私はいわゆる内部告発者となった。FBIに出向いて何が起こっているのかを説明せざるを得なかった」。

彼はFBIに32ページに及ぶ宣誓供述書を提出し、米国の輸出規制を回避して禁輸国へ販売する同社のスキームを暴露した。この文書は後にマスコミに流出し、ヤブロン氏が内部告発者であることも明らかになった。弁護士によれば、ZTEが実質的に中国共産党政権によって運営されていることから、彼と彼の妻の命は重大な危険にさらされることになった。

「妻と私はパソコンの前に座り、ブラウザの更新ボタンをクリックしながら、記事が出るのを待っていた。後戻りできないことになるだろうと思ったからだ」とヤブロン氏。「そして、確かにその通りになった。その瞬間、2人して飛び上がった。妻が私に『あと30分でこの家から出ないと殺される』と言い、私たちはそれを真に受けた」。

短期的に身を隠すことはできたものの、後にヤブロン氏はZTEに対する雇用請求を守るため、同社への復職を余儀なくされた。復職初日、彼がオフィスに戻ると、ドアには警察のテープが張られ、ホワイトボードに一言「死ね!!」とメッセージが残されていた。

さらにヤブロン氏は、雇用主から何度も死の脅迫を受けたという。

「彼らはこう言ってきた。『私たちZTEはお前を殺す。お前の家族を殺す。お前の子供を殺す。お前の子供の子供も殺す。』これが延々と続いた」。

2017年、通信会社ZTEと米国政府は和解に至った。同社は、米国製品をイランに違法に出荷したことによる国際緊急経済権限法違反の共謀罪と、司法妨害及び重大な虚偽陳述の罪を認めている。

同社は合計約12億ドルの罰金を支払った。

2022年11月25日、米連邦通信委員会は、ZTEやファーウェイを含む、国家安全保障上のリスクがあるとされる中国製通信機器の輸入・販売を禁止する新たな規則を採択した。

ヤブロン氏のキャリアは内部告発の影響を受けた。2年以上にわたる就職活動の末、最終的にはZTEの元同僚の助けを借りて再就職を果たした。現在は、企業のコンプライアンス遵守のための法的指導を行っている。

彼はどのような教訓を得たのだろうか?

「もちろん、大きな志を抱くのは良いことであり、原動力だ。しかし、止まる所を知らない野心は悲惨な結果をもたらしかねない。そのため、まず野心を向ける対象に注意すること。そして次に、どこまで正義を貫けるかだと思う」。

ヤブロン氏は、自分が「試験に合格した」と感じているという。

「仕事だけでなく、キャリアや財産をも危険にさらした。そして何より、自分の命を危険にさらした」。

エポックタイムズはZTEにコメントを要請したが、報道発表までに回答を得られなかった。

エポックタイムズのシニアエディター。EPOCH TVの番組「米国思想リーダー」のパーソナリティーを務める。アカデミア、メディア、国際人権活動など幅広いキャリアを持つ。2009年にエポックタイムズに入社してからは、ウェブサイトの編集長をはじめ、さまざまな役職を歴任。ホロコーストサヴァイバーを追ったドキュメンタリー作品『Finding Manny』 では、プロデューサーとしての受賞歴もある。
米国政治・時事を担当する記者