「もはや為す術なし」パンデミックに背を向けた中共【現代中国キーワード】

2022/12/29
更新: 2023/01/25

視而不見

中国語の「視而不見(見れども見えず)」は、日本語のそれと同じく、心が上の空であるため、目には映っていても認識できていないことを指す。

 ただし昨今は「誰の目にも明らかな事実でさえ、見ないふりをしている」の意味で、この中国語が使われている。

 周知の通り、中国は今、どこもが地獄絵図の様相を呈している。病院の廊下が遺体で埋め尽くされ、食肉用の冷蔵庫や冷凍庫には「通常は絶対に入れられないもの」が入れられた。

 かつて強制隔離の象徴であった方艙医院(連結式のプレハブ病院)は、遺体を仮置きする巨大なロッカーになっている。3年前の武漢の実態が(一層増幅されて)ついに北京をふくむ各地に出現したと言ってよい。

 火葬場は数十日待ちの大混雑である。こうなると、共産党幹部がどんなにコネや賄賂をつかっても容易に割り込みはできない。まして一般庶民は、家族が死んでも火葬してやれない悲しみに暮れるばかりである。

 「万人坑(まんにんこう)」という、中国側から見た旧日本軍の蛮行を象徴する用語が唐突に出てきた。その原義については真偽の程度もふくめて省略するが、今の万人坑は「複数の遺体を同じ穴に土葬すること」を指す。

 こうした悲惨な現状について、例えば中共の機関紙・人民日報は一切触れていない。

 12月29日付け同紙のトップ記事は、新華社通信による、西アフリカのベナンとの友好を謳った記事であった。「視而不見」ここに極まれり、と言うしかない。