米サンフランシスコにあるナンシー・ペロシ下院議長の自宅に侵入し、夫ポール氏に暴行したとして訴追された容疑者の男は、議長の誘拐を計画していたことが連邦捜査局(FBI)の供述書で明らかになった。元パートナーによれば容疑者は「長らく精神衛生上の問題を抱えていた」という。
暴行と誘拐未遂容疑で訴追されたデービッド・デパペ容疑者は先月28日未明、ペロシ宅に侵入してポール氏を暴行した。議長はワシントンにいて不在だった。FBIの供述書によると、容疑者は結束バンドやハンマー、手袋などを所持していた。
容疑者によれば、議長は民主党による嘘の「グループリーダー」だという。このほか、議長を捕らえて尋問し、膝頭を壊すつもりだった。このことが他の議員らにも影響を及ぼすと考えていた。議長を拘束した後、別の個人を呼び出す計画だったが誰かは特定されていない。
FBIの供述書は事件当時の状況を詳述している。28日未明、容疑者はガラス戸から侵入し就寝中のポール氏を起こし、議長を呼ぶよう言った。ポール氏が不在だと答えると、家で待つと述べたという。この後ポール氏はトイレで緊急電話に通報した。
午前2時31分、通報を受けたサンフランシスコ市警察巡査はペロシ宅のドアを叩いた。ドアが開くと、ポール氏とデパぺ容疑者が片手にハンマーを持ち、容疑者はもう片方の手でポール氏の腕を握っていた。警官が2人にハンマーから手を離すよう求めると、デパぺ氏がハンマーを振るいポール氏の頭を殴った。直ちに警官が取り押さえたという。ポール氏はその場に倒れ込んだ。
暴行を受けたポール氏は頭蓋骨を骨折し、両手と右腕を負傷しており、治療のため入院している。事件後の議長声明によれば、ポール氏は回復に向かっているという。
元パートナー「彼は精神を病んでいた」
デパぺ容疑者の元パートナーだと名乗る女性はABC7の取材に対して、容疑者は長年精神衛生上の問題を抱えていたという。7年前に別れたという2人の間には息子が2人いる。「常に被害妄想で人に追われていると思い込んでいた」「自らをイエス・キリストだと自称していた」と女性は語った。女性はペロシ氏の家族に謝罪の言葉を述べた。
いっぽう、容疑者宅を訪れたジャーナリスト、ミシェル・シャレンバーガー氏の話では、周辺は悪名高い活動家が集まり薬物のシンボルが飾られた旗などが掲げられ、ホームレスの野営地の様相を呈していた。いわゆるヒッピーコミュニティだという。近隣住民の話では幻覚剤を入手するための人の出入りがあった。
デパぺ容疑者は連邦法により殺人未遂、誘拐未遂などの罪で最高50年の禁錮刑が科せられる可能性がある。カリフォルニア州も複数の容疑で訴追しており、終身刑となる可能性もある。
サンフランシスコ警視総監ウィリアム・スコット氏は、襲撃は意図的なものであり無差別ではないと述べた。
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