アメリカの初代大統領ジョージ・ワシントンから現大統領のトランプ氏に至るまで、アメリカ大統領の移動手段は大きく変化してきた。馬車から自動車、専用機、装甲車まで、240年にわたる大統領専用の乗り物の歴史を振り返る。
1789年、初代大統領に就任したワシントンは、ニューヨークで行われた就任式に向かうため、まずニュージャージー州まで馬で移動した。その後、就任当日には馬車に乗ってニューヨーク市内へ入った。しかし、式典終了後は街路があまりにも混雑していたため、馬車を降り、徒歩で大統領官邸へ戻ったという。

南北戦争期のリンカーン大統領は、ホワイトハウスと郊外の住居の間を一人で馬に乗って往復することが多かった。後に妻メアリーが安全を懸念し、兵士による随行警護を求めたことで、警備体制を強化した。

19世紀末になると、自動車が馬車に取って代わり始めた。ウィリアム・マッキンリー大統領は、アメリカ大統領として初めて自動車に乗った人物となった。
その後、タフト大統領は就任後、ホワイトハウスの馬小屋を車庫へ改装するよう命じた。これを機に、自動車は正式に大統領の移動手段として定着した。

1901年、マッキンリー大統領が暗殺されたことは、大統領警護制度の大きな転換点となった。それ以降、アメリカ大統領警護を担うシークレットサービスは24時間体制で大統領を守るようになり、移動時の警備も年々厳格化していった。
また、アメリカ大統領は自動車だけでなく、「水上のホワイトハウス」と呼ばれた専用ヨットも保有していた。
フランクリン・ルーズベルト大統領は、専用ヨット「ポトマック号」でアイゼンハワー氏とノルマンディー上陸作戦の計画について協議したという。しかし、カーター大統領が就任すると、倹約姿勢を示すため、この大統領専用ヨットを売却した。
さらに、フランクリン・ルーズベルトは、現職大統領として初めて飛行機で海外へ渡航した人物でもある。当時の専用機は「聖なる牛(Sacred Cow)」という愛称で呼ばれた。
その後、ケネディ大統領は大統領専用機の象徴となる青と白のカラーリングを採用した。機体に描かれた「アメリカ合衆国」の文字も、アメリカ独立宣言を想起させる書体が使われた。
なお、「エアフォースワン」は特定の航空機そのものの名称ではない。アメリカ空軍が大統領搭乗機に対して使用する無線通信上のコールサインである。

現在では、大統領専用の防弾装甲車「ビースト」や、特別改修された海兵隊のヘリコプターなども運用している。
馬、船、そして「エアフォースワン」へ。大統領の移動手段の変化は、単なる速度や快適性の向上にとどまらない。そこには、時代とともに強化してきた大統領警護体制の歩みを映し出している。大統領の移動そのものが、まさに「移動するホワイトハウス」となっている。
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