米、中国側の軍事的動きを「鷹のように」注視 台湾情勢巡り

2022/03/07
更新: 2022/03/07

ロシアによるウクライナ侵攻で国際社会が欧州情勢に注目を集める中、米国のバイデン政権は元政府高官らで構成する代表団を台湾に派遣し、また、米軍高官は中国当局の動きを「鷹のように」注視していると発言した。専門家は、米政府の台湾政策は曖昧から明確になりつつあると分析する。

注視

ロシアがウクライナ侵攻に踏み切った2月24日、中国の軍用機9機が台湾の防空識別圏(ADIZ)に侵入した。一部の専門家は、中国当局はロシアのウクライナ侵攻に合わせて、近く台湾に軍事侵攻を始める可能性が高いと懸念した。

米メディア「エアフォース・タイムズ(Air Force Times)」3日付よると、米太平洋空軍司令官のケネス・ウィルズバック空軍大将は同日、フロリダ州の米空軍協会年次会議で記者団に対し、台湾情勢をめぐって「私は、軍事偵察施設を含めて(中国の習近平国家主席を)鷹のように注視している」と述べた。

ウィルズバック司令官は「今のところ何もないが、しかし、これは中国指導部の内部で話し合っていないという意味ではなく、中国側は今後何もやらないという意味でもない」と語った。

司令官は、中国当局はロシアがウクライナに攻撃した後、控えめな態度をとっていると指摘した。「中国のある1人の報道官は下級の広報担当幹部にロシアを誹謗中傷しないようにと指導した。なぜなら『台湾問題に対処する時、ロシアが必要かもしれない』ということだ。この報道官に公の場で説明してほしいと思うが、それが何を意味するのかは推測できる」と司令官は話した。

代表団派遣

米軍が中国当局を警戒するなか、2月28日にはバイデン政権が超党派代表団を台湾に派遣すると報道された。

バイデン大統領が派遣した代表団は3月1日、台湾を訪問した。代表団は、米軍制服組トップを務めたマレン元統合参謀本部議長、フロノイ元国防次官、オサリバン元大統領補佐官(国家安全保障担当)、元国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長のグリーン氏とメデイロス氏ら、民主党政権や共和党政権の元高官で構成している。

マレン氏は台湾の蔡英文総統と会談した際、この代表団は「米台間の強固なパートナーシップに対する米国の超党派の支持を反映している」とし、米国は台湾との「約束をしっかり守る」と述べた。

米シンクタンク、外交問題評議会(CFR)のデービッド・サックス研究員は、「台湾への代表団の構成から、バイデン大統領が与野党は台湾問題で意見一致していることをアピールしたいという意図を見受ける」と米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)に語った。

サックス研究員は、代表団のメンバーに経済貿易に携わった元高官、国務省の元高官のいないことを指摘し、「これは台湾に向けて、軍事と安全保障に関して強いメッセージを送った」との認識を示した。

安倍晋三元首相は2月27日、フジテレビの番組でロシアのウクライナ侵攻を巡り「教訓を得ないといけない」と発言したほか、日本と米国の「核共有」について「議論すべき」で、米国は台湾問題について「曖昧さを捨てるべきだ」と強調した。

同研究員は、バイデン政権は台湾への代表団派遣で、「米国が欧州情勢に気を取られ、インド太平洋地域に気持ちを集中できなくなると心配している日本などの同盟国を安心させたい狙いもある」と分析。

「実際にこれは中国側へのけん制でもある。米政府は、欧州情勢に乗じるいかなる試みもよした方がいいと中国側に警告しているのだ」とサックス氏は指摘した。

同研究員は2020年9月、CFRのリチャード・ハース会長とともに、米誌「フォーリン・アフェアーズ」に投稿し、台湾問題をめぐって「曖昧な戦略」から「明確な戦略」に変わるよう米政府に呼びかけた。

同研究員は、バイデン政権は「明確な戦略」について公言していないが、「明確になりつつある」との見方を示した。一方で、昨年4月にも、元政府高官による超党派代表団を台湾に派遣した現政権について、「元高官よりも現職の政府高官を派遣すれば、より強いメッセージを出せる」と同研究員は指摘した。

(翻訳編集・張哲)
 

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