カザフ、抗議デモを武力鎮圧 数十人死亡 「天安門事件」再現=海外メディア

2022/01/07
更新: 2022/01/07

カザフスタンではこのほど、燃料価格の高騰を発端に起きた抗議デモが全国各地に拡大している。鎮圧に乗り出した当局は6日、治安部隊とデモ隊が衝突し、抗議者数十人が死亡したと発表した。海外メディアはカザフスタンの「天安門事件」だと非難した。

鎮圧

抗議デモが全土に拡大したことを受けて、同国のトカエフ大統領は5日、非常事態宣言を発令した。大統領は抗議デモを国家テロと認定し、「対テロ作戦」を発動するために、ロシア主導の「集団安全保障条約機構(CSTO)」に平和維持部隊の派遣を要請した。

6日、カザフスタン最大都市アルマトイの警察当局者は、CSTOの平和維持部隊がデモ隊の鎮圧に参加した後、数十人の「暴徒」が治安部隊との衝突で死亡し、数百人が負傷したと公表した。

同国国営テレビ放送「Khabar24」の報道では、アルマトイでのデモ鎮圧で、少なくとも治安部隊員13人が死亡、同353人が負傷した。他の地域では負傷者1000人以上が出たという。

ロシアのタス通信は、6日の衝突で治安部隊はメガホンなどを使って、抗議者に対してアルマトイの広場から離れるよう要求し、離れない人には発砲すると警告したと報じた。タス通信は、治安部隊が抗議者に発砲したとの目撃情報があるとした。

英誌「スペクテイター(The Spectator)」電子版は6日、カザフスタンで起きた抗議デモの主因は、1989年に中国当局が民主化を要求する学生らを武力鎮圧した「天安門(事件)と似ている」と指摘した。

同誌は「天安門事件の前、中国が食糧を市場価格に移行させたように、カザフスタンも石油、ガスなどを市場価格に移行させたため、わずか数週間のうちに価格が2倍になった」とした。

また、燃料価格高騰に抗議するデモは民主化を求める運動に変わったと、同誌は指摘した。多くの抗議者は、「政府の腐敗、権威主義、民主主義の欠如、中国側のウイグル人住民への扱いを巡るカザフスタン政府の不作為、農業分野などにおける中国当局の投資」に強い不満があるという。

英ロンドンのカザフスタン大使館の前では同日夜、海外に住むカザフスタン人が集まり、当局による武力鎮圧に抗議し、ロシアなどの外国部隊が発砲しないよう求めた。1人の参加者はロイター通信の取材に対して、国内の人々は「30年間続いている独裁体制による暴政に抗議している」「カザフの人々は自由のために戦っている」と話した。

親中の前大統領

ロンドンの抗議者らは、カザフスタン国内の抗議者らと同様に、「去れ、老いぼれ(Shal Ket)」と書かれたプラカードを掲げていた。老いぼれとは、81歳のナザルバエフ前大統領のことである。国民の前大統領に対する強い怒りをあらわにした。

ロイター通信の報道では、カザフスタンの抗議デモで、多くのデモ参加者は「去れ、老いぼれ」と大声で叫んだ。SNS上に投稿された映像では、一部の抗議者は、ナザルバエフ前大統領の銅像にひもをかけて引き倒し破壊した。英BBCによると、この銅像は前大統領の出身地であるタルディコルガンにある。

ナザルバエフ前大統領は旧ソ連時代、ソビエト共産党中央委員会委員やカザフ共産党中央委員会第一書記などを歴任した。1991年、ソ連が解体し、カザフスタンの独立宣言に伴い、同氏は同国の初代大統領となり、約30年間政権を握った。

カザフスタンには、石油、天然ガス、レアメタルを含む非鉄金属などの埋蔵量が豊富。旧ソ連時代の中央アジアでは最大の経済規模を誇っていた。ナザルバエフ前政権は、数千億ドル規模の外国投資を呼び込むことに成功した。だが、その多くはナザルバエフ氏一族に流用されたとみられる。

「スペクテイター」は、ナザルバエフ氏一族の蓄財は「数百億ドルに達する可能性がある」との見方を示し、前大統領とその家族は「カザフスタン経済の隅々まで支配していた」と指摘した。

前大統領は2019年に大統領職から退任したが、国家安全保障会議の終身議長に留まり、依然として最高指導者としてカザフスタンに君臨している。

前大統領は中国当局と近い関係にあった。今年1月3日、ナザルバエフ前大統領とトカエフ大統領は、中国の習近平国家主席との間で、両国の国交建立30周年を祝うメッセージを互いに送った。

2014年、巨大経済圏構想「一帯一路」を提唱した中国当局は、カザフスタンを「一帯一路」の中で最も重要な国の1つと位置づけた。

一帯一路の始まりは、カザフスタンと強く関係する。2013年9月、中国の習近平国家主席がカザフスタンを訪問した際、「シルクロード経済ベルト」を提起した。同年10月に提唱された「21世紀海上シルクロード」と合わせて、「一帯一路」と呼ばれ、中国の重要な国家戦略として展開された。

いっぽう、ナザルバエフ前大統領は2014年、中国の「一帯一路」構想を基に、独自の経済政策「光明の道」を発表した。

中国当局は2016年、「『シルクロード経済ベルトの建設』と『光明の道』新経済政策の協力規劃(きかく)」を公表し、カザフスタンとの経済協力を強化すると示した。

欧米諸国に「債務の罠」と批判された「一帯一路」に参加した後、カザフスタン政府の財政赤字が急増したと報じられた。2015年、財政難を緩和し、政府の収入を増やすために、ナザルバエフ政権は土地法を改正し、外国企業や投資家による農地租借の期間を10年から25年に拡大した。法改正の直後、市民らによる抗議デモが起きた。

2016年にも、同国各地で大規模な抗議活動が行われた。抗議者は、土地法改正によって、中国当局によるカザフスタンへの影響力がさらに増大すると懸念し、同国政府が土地を中国の投資家に転借する可能性があると非難した。

(翻訳編集・張哲)