イタリアはG7諸国で唯一中国の「一帯一路」に加盟したが、経済的利益が得られないとして、離脱を検討していることが報道された。保守派のメローニ首相は就任前から同プロジェクトに否定的な姿勢を見せており、直近では台湾海峡の情勢に注視するなど、台湾との連携を強化している。
中国資本に警戒感
メローニ氏は先週、マッカーシー米下院議長とローマで会談した。ブルームバーグ通信によると、メローニ氏は会談の際、最終決定はしていないとしつつ、「一帯一路」プロジェクトから離脱する考えを示した。複数の出席者の話で明らかになった。メローニ首相は就任前から、コンテ政権の一帯一路計画への参加決定には反対していた。
2019年3月、中国の習近平主席がイタリアを訪問し、当時のコンテ政権と協力覚書を結んだ。期限は2024年まで。いずれか一方が終了の手続きを行わない限り、自動で更新される。
イタリアが離脱を検討する背景には、「一帯一路」プロジェクトから十分な経済的利益が得られていないとの指摘がある。ロイター通信によると、イタリアから中国への輸出は2019年の130億ユーロから昨年の164億ユーロにわずかに増加しただけだった。いっぽう、中国の対イタリア輸出は317億ユーロから575億ユーロへと大幅に増加した。
イタリア当局は中国資本の浸透に神経を尖らせている。ジェノバとトリエステの二つの港の開発協力協定は、「一带一路」の象徴的なプロジェクトとして注目されていたが、アドルフォ・ウルソ産業相は最近「トリエステ港は中国の手に渡さない」と危機感を示した。
米ボイス・オブ・アメリカの報道によると、ドラギ前政権は立法を通じて、半導体産業や種子生産といった国家の戦略的利益に関わる投資への審査を厳格化した。中国企業によるイタリア企業の買収案件も、幾度となくイタリア政府によって中止させられたという。
緊密さ増す台湾との関係
中国との関係を見直す代わりに、保守派のメローニ氏は台湾との関係構築に努めている。4月の英国訪問ではスナク首相と協力覚書を交わし、「台湾海峡の現状を一方的に変更することに反対する」ことに言及。4月末にはウルソ産業相を含む代表団を台湾に派遣し、半導体分野での協力について協議を行った。
メローニ氏は2022年の選挙に際し、台湾中央社のインタビューに対し、双方の協力関係を強化する考えを示した。
関係強化の一環として、台湾は第二の駐イタリア公館となる「ミラノ台北事務所」の準備を進めている。すでに設置されている台湾貿易センターとは異なる役割を担い、実質的な領事館としての機能を期待されている。
イタリアは1970年に北京政府との国交を樹立して以来、台湾といった「敏感」な問題については言及を避けてきた。いっぽう、メローニ政権は台湾問題に対する関心を見せ、海峡の情勢に懸念を表明している。
米シンクタンク「ウィルソン・センター」のニコラ・カサリーニ氏は、過去のイタリアの外交ではもっぱら貿易が重視されてきたが、近年では状況が変わりつつあると指摘。ドラギ前首相の時代から見られたこのような傾向はメローニ氏の保守派政権でさらに顕著になり、商業的利益のみならず価値観も重視する外交になったと分析する。
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