植民地主義は遠い昔のことだと思われがちだが、世界には今でも何億人もの人々が植民地支配のもとで暮らしている。ただ、今日の植民地主義は、過去とは異なっている。目に見えにくく、暴力的でもない。
アフリカは「中国の特色ある植民地主義」の下にあると言われている。そこでは、中国共産党は橋や港、道路などの重要なインフラを大規模に整備している。その見返りとして、アフリカ諸国は中国共産党に自由を明け渡すことになった。
アフリカ54カ国のうち、45カ国が中国の広域経済圏構想「一帯一路」に参加している。今年、サブサハラ域内最大の国であるコンゴ民主共和国は45番目の署名国となった。調印後間もなく、北京と「異例」の採掘協定を結んだ。コンゴはコバルト、ダイヤモンド、銅など、世界有数の資源産出国である。現在、中国共産党が同国の鉱業を牛耳っている。
一帯一路構想は、署名国に莫大な負債を負わせる。オンライン雑誌『ザ・ディプロマット(The Diplomat)』11月号で、コラムニストのマーシー・クオ(Mercy Kuo)氏は、2013年の一帯一路発足以来、「中国は米国の2倍以上の支出をしている」「その多くは融資という形で提供され、融資と援助の比率は31対1で推移している」と書いている。
さらに憂慮すべきことに、記事は「署名国政府は、中国に対する実際の返済義務および潜在的な返済義務を過小報告しており、過小評価分の額はGDPの約5.8%に相当する」ことを明らかにした。
署名国の中には、「買い手の後悔」を味わっている国もある。クオ氏は記事の中で、一帯一路のインフラプロジェクトの3分の1以上が「腐敗スキャンダル、労働違反、環境破壊、市民の抗議など、実施上の大きな問題に遭遇している」と指摘した。さらに、「プロジェクトの中断や中止が相次いでいる」という。
クオ氏の発見は、米ウィリアム&メアリー大学のエイド・データ研究所が最近発表した報告書でも裏付けられている。同研究所の所長で報告書の共同執筆者でもあるブラッドリー・パークス(Bradley Parks)氏によると、政府の負債として公になっていない「隠れ債務」が約3850億ドルにのぼる。隠れ債務問題は今後さらに深刻になる可能性があるという。
これはアフリカに何をもたらすのだろうか?一言で言えば、いいことは何もない。
例えば、赤道ギニアは北京に多額の借金がある。米国情報機関の報告によると、中国共産党は現在、この西アフリカの国に初の恒久的な軍事基地を設置しようとしている。人口わずか140万人のこの小さな国には、海底油田が豊富に埋蔵されている。このことは、中国共産党も見逃していない。
昨年12月5日付のウォール・ストリート・ジャーナル紙は、米陸軍大将アンドリュー・ローリング氏の言葉を引用し、この新基地によって中国共産党は「大西洋における海軍の拠点」を持ち、米国と直接競合できるようになると報じた。
一帯一路構想に参加していない国も、中国共産党の不吉な影から逃れることはできない。中国共産党はアフリカ54カ国のうち52カ国にすでに投資しており、そのうち49カ国は北京と覚書を交わしている。これらの覚書は、「悪魔の取引」に等しい。アフリカ諸国は、北京から巨額の資金を受け取ることで、中国共産党が自国の裏庭に入り込み、資源を搾取することを許しているのだ。
金融覇権―「デジタル人民元」
中国の対アフリカ投資は戦略的である。今後、中国とビジネスを行うには、中国共産党が発行するデジタル人民元(E-CNY)を使うしかないだろう。
昨年、華為技術(ファーウェイ)はデジタル人民元専用のアプリをプリインストールしたスマートフォン 「Mate 40」 を発売した。発売後まもなく、中国共産党は何百万人ものアフリカ人にこの携帯電話を届け始めた。
オーストラリアの有力シンクタンク、ローウィー国際政策研究所は昨年11月17日に発表した報告の中で、「中国は、アフリカを(国内に次ぐ)第2の優先地域とすることで、世界の金融システムを混乱させることを狙っているのだろう」と指摘している。
中国共産党は、世界で最も成長の速い大陸であるアフリカを利用し、国際的なパワーバランスを再構築しようとしているのだろうか? 答えは「イエス」だ。 アフリカは世界で最も成長の速い大陸であるばかりでなく、若者人口が一番多い大陸でもある。人口の6割が25歳以下だ。
近年、アフリカで最も急速に経済成長を遂げているナイジェリアの首都ラゴスは、中国からの投資で溢れている。中国は今、この巨大都市に銀行を開設しようとしている。ナイジェリアで起きていることは、中国共産党がアフリカ大陸全体の金融システムをコントロールしようとする試みと見るべきだろう。
中国共産党は金融だけでなく、軍事面でも影響力を広げている。「中国の軍事教育と英連邦諸国」と題する最近の報告書によると、ガーナやタンザニアなどアフリカ複数国が、中国共産党が提供する「政治軍事学校」を開設している。これらの行動は、中国共産党が発展途上国に対する支配力を強めていることの表れであると分析されている。報告書が示すように、これらのプログラムに参加している国の多くは、一帯一路の署名国でもある。
征服された大陸
中国はわずか10年の間に、ダイヤモンド、金、銀、銅、鉄、コバルト、ウラン、ボーキサイト、石油、砂糖、塩、カカオ豆などの天然資源が豊富な12億人の大陸を事実上征服してしまったのである。
この植民地化が進む中、米国と欧州連合 (EU)はただ黙って見ていた。昨年、「一帯一路」に対抗するために打ち出された、米国主導の「より良い世界の再建」(B3W)やEUの「グローバル・ゲートウェイ(Global Gateway)」といった途上国向けの新たなインフラ支援構想は、失敗に終わる運命だと感じざるを得ない。時すでに遅し。アフリカのほとんどの国は、すでに中国共産党の債務の罠に陥っている。
さらに悲しいことに、多くの署名国は「一帯一路」から逃れたいと思っても、すでに不可能な状態にある。
例えば、ウガンダの債務は180億米ドルで、GDPの50%近くを占めている。この負債のほとんどは中国に負っている。ウガンダのヨウェリ・ムセベニ大統領は最近、未払い債務の再交渉のために代表団を北京に派遣した。昨年12月6日付のナイジェリアの英字紙「パンチ」によると、中国共産党は「当初の融資契約の条件変更は一切認めない」と拒否、要請は却下された。その結果、同国唯一の国際空港であるエンテベ国際空港は、中国に「接収」されることになりそうだ。
中国共産党の「資金援助」は、略奪的な融資に他ならない。貸し倒れが発生した場合、国際空港など様々な担保が中国共産党に渡されることになる。アフリカ大陸全体が中国共産党によってじわじわと食い尽くされ、破滅に向かっているのを、私たちは目の当たりにしている。最近、中国共産党の指導者が、今後3年間でさらに100億ドルをアフリカに投資することを約束した。中国共産党の植民地支配は今後も続くだろう。
執筆者プロフィール
ジョン・マック・グリオン(John Mac Ghlionn)は研究者であり、エッセイストでもある。彼の作品は、ニューヨーク・ポスト、シドニー・モーニング・ヘラルド、ニューズウィークなどの一流紙に掲載されている。また、心理社会学の専門家でもあり、社会的機能不全とメディア操作に強い関心を持っている。
オリジナル記事:「China Now Controls Africa」より
(翻訳:王君宜)
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