公安調査庁は17日に発表した報告書「内外情勢の回顧と展望」(令和4年1月)で、中国による日本の大学と企業からの技術取得が依然と続いているとし、今後警戒する必要があると警告を発した。日本に対して関係を改善する姿勢を見せているが、「様々な機会を捉えてわが国の対応を批判している」と非難した。
報告書は、中国当局が「千人計画」、海外企業の買収、外国企業の機密情報窃取などを通じて、依然として「必要な技術や能力を海外企業から得ようとしている」と示した。
軍需産業との繋がりが深いとされる「国防七校」に日本人研究者が従事していると言及し、日本企業や大学などの高度な技術や人材が狙われているという。国内の「こうした動向に警戒する必要がある」と警告した。
サイバー攻撃について、報告書は「日本国内外で常態化しており、手口も巧妙化している」「安全保障の観点からサイバー攻撃の脅威は増している」との認識を示した。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)など約200の組織に対するサイバー攻撃について、報告書は「中国軍第61419部隊を背景に持つ中国のサイバー脅威主体『Tick』が関与している可能性が高い」とした。
報告書は、中国の軍や情報機関が大規模なサイバー攻撃に関与しているだけではなく、中国当局とサイバー犯罪者は「いわば『共生関係』にある」とした。
報告書は、サイバー攻撃から日本国内の重要な情報やインフラを守るために「引き続き警戒が必要だ」と強調。
国内問題が山積
一方で、中国当局は、少子高齢化の進行、労働人口の減少、所得格差、高失業率、不動産企業「中国恒大集団」の経営危機など、当局が抱える「問題が山積みしている」と指摘した。
中国当局は、今年1月に発足した米国のバイデン政権との間で、新疆ウイグル自治区の人権問題、香港情勢などで対立が続いており、「大幅な改善は見通せない」と米中対立の長期化を見込んだ。報告書は、中国当局は欧州各国との間でも、人権問題、台湾問題などを巡って「対立が表面化した」とした。
報告書は、中国の習近平政権は米国や欧州各国との間で、人権や台湾などを巡る「対立」と、気候変動や経済面での「協力」に関して「難しいかじ取りを迫られる」との見方を示した。
日本に対して軟硬織り交ぜる手法
公安調査庁は、中国当局は米国と対立する中で、安全保障分野における日米連携強化を警戒しつつ、「経済をてこにした実務協力などを通じて」日本との関係改善・強化に注力するとの見解を示した。
ただ、中国当局は日本との関係を改善しようとしている一方で、日本側へのけん制を続けている。海洋権益において、中国当局は尖閣諸島周辺で、力による「一方的な現状変更の試みを執ように継続している」と報告書は批判した。
中国当局は、日本当局者や国会議員が、中国国内の人権状況や台湾海峡問題について懸念を示し発言したことを「内政干渉」と非難し、日中戦争などの歴史認識に関して、日本側をけん制し続けている。福島第一原発処理水の海洋放出方針に関しても、中国当局は「様々な機会を捉えてわが国の対応を批判し、同方針の国際問題化を図ろうとした」と報告書は糾弾した。
台湾問題を巡って、報告書は中国当局は今後も、蔡英文総統が率いる民進党の「求心力の低下をもくろみ」、軍事、経済分野などで様々な手段を使って台湾に圧力をかけ続け、台湾海峡情勢に関心のある各国に「働きかけを強め」、「台湾の影響力拡大を阻止していく」と分析した。
(編集・張哲)
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