グリーンランド自治政府は9日、ウランの採掘を禁止する法律を可決し、南部クベーンフェルド(Kuannersuit)でのレアアースの採掘も禁止した。同地域でレアアースの採掘を計画している中国企業への打撃は必至だ。
デンマーク領グリーンランド南部の鉱床のレアアースとウランの埋蔵量は、世界最大級とされている。
豪企業グリーンランド・ミネラルズ(Greenland Minerals)は2007年、クベーンフェルドでの発掘許可を申請し、3万2000トン近いレアレースの発掘を計画した。投資額が1億ドルにのぼり、37年間続く大型プロジェクトだった。
同社の筆頭株主は中国のレアアース開発・生産最大手、盛和資源控股(ションホー・リソース・ホールディング)である。
これまで政権を握っていた社会民主主義のシウムート党(Siumut)はデンマークからの独立を目指し、経済的な自立につながる採掘計画を支援してきた。
いっぽう、北極圏における「一帯一路」構想を推進するための重要な戦略として、中国はインフラ整備を通じて、グリーンランドに浸透してきている。
2012年に中国の徐紹史・国土資源相がグリーンランドを訪問して以来、両国政府の関係は緊密になった。17年にはグリーンランド政府の全閣僚が2週間訪中した。3度にわたって否定されてきた豪企業による開発計画は昨年9月、許可された。
この開発計画に市民は強く反発した。レアアース採掘の副産物として出てくるウランやトリウムなどの放射性物質により、周辺の水質や農作物に悪影響が出る恐れがあるためだ。
今年4月に行われた自治議会選挙では、「中国企業による『汚染採掘』(Dirty mining)に反対する」と掲げた最大野党のイヌイット友愛党(IA)が勝利を収めた。
IA党首は選挙結果を受け、 クベーンフェルド開発計画を停止する方針を示した。
レアアースはハイテク製品の生産に不可欠であり、欧米は中国と対抗するため、レアアースなどのサプライチェーンの強化に乗り出している。
英シンクタンク「Polar Research and Policy Initiative(PRPI)」は3月、報告書の中で、中国によるレアアース及び他の鉱物の独占は、英国、北米、欧州、太平洋同盟国などの安全保障に影響を与えるとの懸念を表明した。
(翻訳編集・李凌)
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