中国の首都・北京で開催された重要会議(全国政治協商会議と全国人民代表大会)、いわゆる「両会」は、それぞれ10日と11日に閉幕した。
今年の開催期間は史上最短の8日間となり、例年に比べ異例の短さが際立った。
毎年3月に開かれる「両会」は、その年の成長戦略を議論する場とされており、中国共産党は、このような重要会議を通じて「全過程の民主」を誇示しようとしている。「全過程の民主」とは、中国共産党の指導下で意思決定に国民が関与するというものだが、一部の専門家からは「実態は民主主義とは正反対の全過程独裁にすぎない」との指摘が上がっている。
「ショー」
「両会」に参加する委員やいわゆる「国民代表(当然ながら国民が選んだわけではない)」たちは、官製メディアの取材に対し、決まって「習近平の重要談話がいかに素晴らしかったか、それにどれほど感銘を受けたか」について熱く語る。
この現象について、オーストラリア在住の法学者、袁紅氷(えんこうひょう)氏は、「両会は毎年恒例の政治ショーに過ぎず、参加する代表や委員たちは、メディア取材に応じる際、ただお世辞を並べるだけの集団と化している」と厳しく批判している。
両会の参加者たちは会議出席期間、とても贅沢な待遇を受けることで知られている。彼らの仕事は共産党を称賛し、共産党の提案する政策に無条件で「同意」と言うだけだ。
たとえば2012年には全国人民代表大会の代表たちが豪華な晩餐会を開き、国民の批判を浴びた事例がある。また、2018年には一部の代表が高級時計やブランド品を身につけて会議に出席していたことが報道され、「庶民の代表とはほど遠い」との声が上がった。
「国民の声」はどこに消えたのか
今回の「両会」で注目された「民営経済促進法案(民間企業に違法な罰金を科すのを禁じる規定などを盛りこんだ)」は通らなかった。
「国民のため」の政策が成立しない一方で、共産党幹部の特権と利益が優先されている状況が改めて浮き彫りになった。
「人民に奉仕」のスローガンはいつも口先だけだ。
「両会」を通じて見えてきたのは、「国民の声」ではなく「共産党の意向」だった。国民の利益よりも党の利益を優先する姿勢が続く限り、中国の政治に対する国民の不信感が拭われることはないだろう。

国民の未来
経済の低迷に直面する習近平政権にとって、成長戦略を議論する場とされる今回の「両会」は出口を見いだせたのだろうか。
不動産不況や失業率の高止まりなど、多くの経済問題が依然として未解決のままだ。
結局のところ、中国共産党政権は国民の生活向上よりも、自らの権力を守ることに終始している。形ばかりの会議と虚飾に満ちた政治ショーの先に、国民の未来は見えてこない。
中国共産党はもともと「人間は必ず天に勝つ」「人為的に世の中を改造する」と豪語し、清王朝が倒れ混乱状態にあった中国の人々に全人類を解放し、大同(皆が平等)の世をもたらすなどという理想を唱え、政権をとった。その過程で農民には土地を与えると約束し、労働者には工場を与えると約束し、知識人らには自由と民主を与えると約束し、平和を約束した。その約束は現在一つとして果たされていない。
「共産党についての九つの論評【第一評】共産党とは一体何ものか」には「ある代の騙された中国人が亡くなると、その次の代の中国人が引き続き虚言のとりこになる。これは中国人の最大の悲哀であり、中華民族の不幸である」と述べている。
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