「AI競争で中国に負けている」元米国防総省高官からの警告と提言=独占インタビュー

2021/10/19
更新: 2021/10/19

国防総省でソフトウェア最高責任者を務めていたニコラス・シャラン氏(37)は13日、英文大紀元の特集番組「米国の思想的リーダーたち(American Thought Leaders)」の独占インタビューに応じ、人工知能技術の開発競争において、挙国体制で取り組んでいる中国共産党(以下、中共)に米国は負けていると警告し、対策を提案した。

シャラン氏は先月、米政府の人工知能(AI)開発への投資不足に抗議し、国防総省初の最高ソフトウェア責任者を辞任した。

インタビューのなかで同氏は、中共が中国企業を完全支配し、その技術を利用していることが、国防総省を離れると決めた主な理由だと語っている。

同氏によると、中共は国内企業に協力させることで、多くの分野で世界をリードしている。しかし米国では、国防総省と民間企業の協力関係に透明性がないことが、双方の協力意欲を低下させている。民間の技術を活用できないため、米国は競争上、不利な立場に置かれている。

「これは大きな挑戦であり、警鐘を鳴らさざるを得ない。私たちは戦いに負けていることに目を覚ます必要がある」と同氏は言う。

中共が米企業に浸透

「中共が米企業に浸透している」。同氏は、国防総省がテクノロジー企業と協力し、中国がAI分野で優位に立つのを阻止しなければならないと提言した。

同氏によると、中共は、米大学や最も革新的な企業に多くの優秀な人材を送り込んでいる。企業内からのデータ漏洩のリスクは非常に高い。だが、このインサイダー脅威は、最も過小評価されがちである。

インサイダー脅威を軽減するには、米国の民主主義の価値観を維持することと、中共とのつながりを持つ人々(人材)に対して適切な措置を講じることとの間で、バランスをとる必要がある、とシャラン氏は述べている。

昨年10月以降、米政府は共産党員の米国への移民を禁止する制度を導入した。シャラン氏は、米国の産業安全保障を確保するためには、中共への依存とつながりを効果的に断ち切り、リスクを事前に回避することが不可欠であると強調した。解決策は、彼らの家族を中共の支配から解放し、米国に連れてくることにあると同氏は主張する。

差がつく米中のAI開発

近年、米政府と大手テクノロジー企業との間のコミュニケーション不足や、時に米軍に向けられる敵対感情が問題となっている。

その最も顕著な例は、Google社が、AIとビッグデータを使ってドローンの精度を高めるという米国防省との契約を打ち切ることを決めたことだ。だが、同社は中国軍のAI開発を直接的および間接的に支援している。

Google以外にも、アップル、IBM、マイクロソフトなどの主要企業は、中国にAIラボを設置している。中国当局は、国家安全保障法を使い、いつでも米企業に企業秘密の引き渡しを要求できる。

セキュリティ専門家は、米国の国家安全保障上のリスクを軽減するために、中国へのAI技術の移転を禁止することを求めている。シャラン氏は、テクノロジー分野で活躍できる人材の背景を徹底的に審査し、成果を重視する研究開発プラットフォームを構築する必要があると提案した。「私たち(米国)は、行動と結果に焦点を当てなければならない。私たち(米国)は、戦場で戦う人々に真の価値を提供しなければならない」と語った。

シャラン氏は以前、国防総省で空軍、陸軍、海兵隊、海軍、宇宙軍のセンサーを統合した全軍合同命令制御システム(JADC2)のモデルを開発した。

空軍関係者が「最高傑作」と評したこのシステムの開発は、数カ月前に突然、予算が打ち切られた。このことがきっかけで、シャラン氏は国防総省をやめると決断した。

敗北を勝利に変えるチャンス

シャラン氏は、米国がAI戦争に勝つための機会の窓は急速に閉じつつあると考えているが、すべての希望が失われたわけではないと主張している。

「もう負けたとは思っていない」。同氏は、「今すぐ行動し、早く目を覚まさなければ、10年後、15年後に成功する機会を失うことになる」と語った。

「時代の流れとともに、AI の活用は加速していく。このままでは、ある時点で取り返しのつかないことになり、追いつくことができなくなる」

シャラン氏は、国防総省がイノベーションとベンチャー精神を奨励し、民間企業との協力関係を透明化しなければならないと述べている。

同時に、彼は政府部門の官僚主義や無能さを批判した。「ビジネスでは、良い仕事をすれば、ボーナスや称賛を得ることができる。政府では、リスクを取らない方が安全である。たとえ自分が担当した巨大プロジェクトが失敗しても、黙っていれば昇進の機会はいくらでもあるからだ」

英文大紀元がシャラン氏の主張について国防総省にコメントを求めたところ、同省のジョン・カービー報道官は、12日のプレスブリーフィングでのコメントを送ってきた。なかにはこう書かれている。

「ロイド・オースティン国防長官は、この分野における中国の成長意欲に対する我々の懸念を非常によく理解している。彼は責任ある方法で、産業界や学術界と緊密に連携しながらAI能力を向上させ、デジタル分野で有能な人材を育成することに注力している。今後もこのような取り組みを続ける」

「私が言えることは、私たちは技術や能力としてのAIの重要性を認識しており、長官もこのことについて話している。私たちは責任を持ってAI技術を進歩させるために、多くの努力とエネルギーを注いできた」

(翻訳編集・王君宜)

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。