「アンチ警察」運動により米警官の退職希望者が殺到 急増する銃撃事件

2021/07/02
更新: 2021/07/02

中共ウイルスの感染拡大や「アンチ警察」運動が急増するなか、米国最大の警察署では、ここ1年半、警官の退職が続出している。

米国国内の上位3つの警察署は、採用難に加えて退職者の増加により、2019年以降、数千人の警官が離職した。他の主要な管轄区域からも、警官が大量退職したという報告が寄せられている。

いっぽう、それらの都市では、殺人事件や銃撃事件が大幅に増加している。

米国最大の警察組織ニューヨーク市警察(NYPD)の広報担当者は大紀元に対し、2019年には1509人だった退職者が2020年は2600人に急増。(新規採用を加えても)警官の数は約1500人が減少したとメールで伝えた。今年5月中には、350人近くが職を離れた。

退職の多くは、昨年ミネアポリスで逮捕された黒人男性ジョージ・フロイドさんの死をきっかけに、勃発した抗議行動や暴動を通して、活動家グループが煽ったアンチ警察感情と関係している。この事件では、フロイドさんが意識を失う前に何度も「息ができない」と訴えていたにも関わらず、警官は8分以上頸部と背中を膝で強く押さえつけた。

昨年、ニューヨーク州では、警官が容疑者の拘束時に膝で背中や胸を押さえつけることを禁じる警察改革法が成立した。警官や専門家は、抵抗する対象者を安全に取り押さえるために、警官が日常的に使う格闘技術を犯罪化する法律だと批判した。

また同州は、軽犯罪および非暴力の罪で起訴された被告に対し、裁判所が保釈金の支払いを課すことを禁止した。その結果、犯罪者は逮捕後すぐに日常に戻ることになる。この新たな制度に対し、警官は自分たちの仕事を無意味なものにし、士気を下げるものだと訴えた。

NYPD人事部長のマーティン・モラレス氏によると、NYPDは今年、40ドルの申込料を免除し大規模な採用活動を行ったが、それでも前回の応募者数には及ばなかったという。その理由の一つは、今回の募集期間が例年よりも短かったことだ。

モラレス氏は5月18日の記者会見で、過去の警察官採用試験の結果を見ると、1万4500人以上の応募者のうち、試験に合格して警察学校に入学するのは9人に1人程度だと述べた。約1600人の新米警官がまもなく誕生することになる。しかし、退職傾向が続けば、新米警官を上回る数千人の警官が退職することになるだろう。

市内の総犯罪件数はわずかに減少し続けているが、銃撃事件は依然として増加傾向にある。2019年、警察署は致死・非致死を問わず900人以上が銃撃されたと発表した。2020年には、その数は倍以上になった。今年は、6月13日時点で721人が銃撃されており、これは2002年以来、この期間で最も多い数である。

シカゴ

大紀元がシカゴ市警察署から入手したデータによると、同署は2019年以降、700人以上の警官が退職している。

2019年、同署は459人の警官を採用したが、2020年には、その数は157人に減少した。今年は、4月30日時点で105人が採用されている。

いっぽう、2019年の警官の退職者数が592人だったのに対し、昨年は646人だった。今年は4月30日時点で330人が退職している。

警察労働組合「警察友愛会」のジョン・カタンザラ支部長によると、退職するのは古参の警官だけではない。

「若い警官がこの部署を離れ、郊外や州外に横滑りに異動している」とカタンザラ氏は大紀元に語った。「彼ら(市の指導者)が、この警察署を引き継いでくれると期待している人たちが、もう十分だと離れていっているのだ」

今年の初め、シカゴの警察友愛会はローリ・ライトフット市長とデビッド・ブラウン警察本部長に対して不信任決議案を提出した。

カタンザラ氏は、給与問題、過剰な仕事量、そして警官に対する尊敬の念の欠如が主な摩擦の原因であると指摘している。

ライトフット市長は、組合指導部が契約交渉を引き延ばしたと非難したが、カタンザラ氏はこれを否定した。

いっぽう、殺人事件と銃撃事件は、2019年から2020年にかけて50%以上増加した。さらに今年は6月13日時点で、それぞれ5%、18%増加した。

ライトフット市長は、犯罪の急増について、失業や貧困、そして隣接するインディアナ州で「軍用武器」を購入できるからだと指摘した。しかし貧困層や失業者の多くは、殺人や銃撃事件には関与しておらず、このような事件に「軍用武器」が使われることもほとんどない。都心部の犯罪者によく使われる武器は、隠しやすい小型拳銃である。

ロサンゼルス

ロサンゼルス市警では、2019年以降、600人近くの警官が退職した。これは、パンデミックに対応して制定された政府の雇用凍結に加え、「警察予算を打ち切れ」と要求するするデモ活動家の要求を受けて、昨年、市が警察予算を1億5000万ドル削減したことが大きな要因だ。

この予算削減により、ロサンゼルス市警は、今年の夏までに警官を9,757人に削減することを目指していた。6月21日の時点で、9,444人にまで減少している。

しかし、ロサンゼルス市警のミシェル・ムーア署長は、5月25日の委員会で、市が今年の予算を多少増やしたことで、7月1日から雇用を開始できるようになったと方針を変えた。これは、パンデミック前の状態に戻すには十分ではなく、「昨年、市長と市議会が行った予算削減の結果減少した人員」を補充するに過ぎないという。

同市では、2020年に致死・非致死を問わず1,300人以上が銃撃され、前年に比べ約40%増加した。今年は6月12日時点で626人が銃撃され、前年同時期に比べて約60%増えている。

他の機関

他の主要な警察署でも深刻な人材不足に悩まされている。

セントルイス警察署は、2020年から2021年6月2日にかけて109人の警官を採用したが、同時期に192人が同署を退職している。

「新人を採用し、訓練し、パトロール業務のために警察署に配属するのと同じくらいの速さで、警官が退職している」とセントルイス警察署のクリスティ・アレン巡査部長は、大紀元に語った。

2020年に同市内で起きた銃による殺人事件は264件、加重暴行事件は3047件だった。2019年と比較してそれぞれ36%以上、20%以上増加している。

シアトル市警は、2020年から2021年4月までに86人の警官を採用した。しかし同じ期間に、252人の警官が離職したと、ランディ・ヒューゼリック巡査部長は大紀元にメールで語った。同市の2020年の暴力犯罪件数は、全体的にやや減少したが、殺人事件は前年の37件から52件に増加した。

アクシオス(Axios)は5月、ノースカロライナ州のシャーロット・メクレンバーグ警察署、アイオワ州のデモイン警察署、さらにアーカンソー州のファイエットビル警察署における人材不足に関する懸念を報じている。

(PETR SVAB/翻訳・蓮夏)