専門家ら「ファーウェイ敗訴の可能性高い」米政府提訴で 

2019/03/08
更新: 2019/03/08

中国通信機器大手の華為技術ファーウェイ)は7日、米政府機関に同社の通信製品の調達を禁止した「2019年度国防権限法(NDAA2019)」が米国憲法に違反するとして、米政府を提訴したと発表した。海外メディアや専門家は、中国当局の世界覇権戦略の一部であるファーウェイだが、敗訴する可能性が高いと分析する。

2018年に成立した国防権限法は、米国政府機関と関連下請企業に対して、ファーウェイと中国通信機器大手の中興通訊(ZTE)の通信設備およびサービスの利用を禁じている。

ファーウェイの郭平・副会長兼輪番会長は7日の記者会見で、米政府によるファーウェイへの締め出しは、公平な競争に反しており「最終的に米国の消費者が打撃を受ける」と強調した。

いっぽう、米市場に占めるファーウェイ製品のシェア割合は実に少ない。アイルランド統計サイトStatCounter Global Statsによると、米モバイル・ベンダー市場シェアの統計では、2018年2月から2019年2月まで、米国におけるファーウェイの市場シェアは1%前後で推移している。2月単独では0.75%にとどまった。

中国メディア・騰訊科技は2018年1月30日、英市場調査会社「カンター(Kantar)」のデータを引用し、2017年米国スマートフォン市場におけるファーウェイの市場シェアはわずか0.4%と報じた。

猛反撃

米国は、トランプ政権より前の政権から、中国当局と近い関係にあるファーウェイやZTEを警戒していた。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の2018年12月の報道によれば、米議会の一部の議員と情報機関関係者は2007年から、ファーウェイを注視していた。同年のスリーコム買収案は議会で反対され、ファーウェイに断念させている。2011年に公開された米国防総省報告書では、ファーウェイとZTEの中国軍との密接な関係を指摘した。2012年の米下院報告書では、議員らはファーウェイとZTEは国家安全保障上の脅威として、警鐘を鳴らした。

ファーウェイは最近、海外メディアの取材を積極的に受けたり、海外で訴訟を起こしたりするなど、米への「猛反撃」を始めた。7日の記者会見も、外国メディアを対象に開催され、英語や日本語、アラビア語など5カ国語でネットを通じてライブ中継を行った。

ファーウェイの孟晩舟・最高財務責任者(CFO)が3月3日、2018年12月イラン制裁違反の容疑で米政府の要請でカナダ政府に逮捕されたことは、カナダ憲法による個人の権利が「著しく侵害」されたとして、カナダ政府や入国管理局などを提訴した。

カナダ司法省は1日、米国への孟晩舟氏の身柄引き渡し手続きを正式に開始すると発表した。孟氏によるカナダ政府への提訴は、身柄引き渡しに関する審理を先延ばしするための策略とみられる。

敗訴の可能性が高い

米紙ニューヨーク・タイムズは5日、情報筋の話として、ファーウェイは「私権剥奪法(Bill Of Attainder)」に基づき、米政府を提訴する可能性があると報じた。私権剥奪法は、特定の個人やグループに対して、裁判せず立法により刑罰に処する行為を定義する。私権剥奪法は米憲法によって禁じられている。

報道によれば、法学者らはファーウェイ側が敗訴する可能性が大きいと推測する。

ロシアのコンピューターセキュリティ会社、カスペルスキー(Kaspersky Lab)は2017年12月、「私権剥奪法」に基づき、米政府を相手取る行政訴訟を起こした。米政府は2017年9月、カスペルスキーがロシア諜報機関に協力しているとして、米政府機関に対して、カスペルスキーの製品を使用しないよう通達した。

米コロンビア地区連邦地裁の裁判官は2018年5月、米政府のカスペルスキー製品の使用禁止命令について、「米政府がロシア側のサイバー攻撃から、政府ネットワークを保護するためである」とし、合憲であると判断した。カスペルスキー側の訴えは棄却された。

ファーウェイの意図

中国問題専門家の横河氏は大紀元の取材に対して、ファーウェイの米政府への提訴の意図について、「中国当局は、世界覇権戦略の崩壊をどうしても避けたいからだ」と分析する。

横河氏は、ファーウェイの世界進出は中国当局にとって、南シナ海政策や巨大経済圏構想「一帯一路」のように、その世界覇権戦略において「非常に重要な部分だ」とした。

「中国当局は米政府への提訴を通じて、この戦略の失敗を先延ばししようとしている。中国当局は、少しでも弱点を見せてしまえば、世界支配という野望が実現できなくなることを懸念している」。

横河氏は、ファーウェイの米政府への提訴によって、米議会および米政府のファーウェイに対する疑念が実証されるとの見解を示した。

マルコ・ルビオ米上院議員(共和党)は7日、ファーウェイの米政府への提訴についてツイッターでコメントを書き込んだ。

ルビオ議員は「ファーウェイが米政府を訴えるだって?いいだろう。全世界は、ファーウェイがいかに中国当局のために詐欺、窃盗、スパイをしたかを知ることになる。これは待ちきれない」

議員はまた「皮肉にも、中国の企業が米国で司法プロセスを踏める。しかし、米企業は中国で司法プロセスを踏めない」と、中国における米企業の条件の不当さを非難した。

(翻訳編集・張哲)