欧州・ロシア ハプニング

「射殺」は偽装、本人が会見に登場でびっくり 捜査協力だった=ウクライナ

2018/05/31
更新: 2018/05/31

射殺され死亡したと報じられた反ロシア政府ジャーナリストが5月30日、ウクライナ保安局長とともに記者会見場に元気な姿を見せ、大衆を驚かせた。同局長によると、このジャーナリストを狙った暗殺計画の捜査のために「暗殺事件」を偽装したと述べた。容疑者は同日までに逮捕された。

ウクライナ保安局長ワシル・グリツァク氏によると、容疑者はウクライナ人の元兵士で、ロシア治安部隊から3万ドルを受け取り、ジャーナリストのアルカディ・バブチェンコ氏殺害を計画していたという。同局は、容疑者逮捕当時の様子を収めた映像を公開している。

ロシア外務省報道官はこの騒動について、アルカディ氏が生きていたというのは「最も良いニュース」と述べた。一方、依頼殺人の疑いについて、「ウクライナ当局によるプロパガンダ」と否定した。

ウクライナ保安局によると、容疑者はロシア側から、アルカディ氏の家族や生活習慣、ソーシャルメディアでの発言、パスポートの記録などの情報提供を受けていたという。

バブチェンコ氏は元戦場記者。2016年に発生したシリア行きロシア軍用機が黒海に墜落した事件を取材した後、殺害予告を受けて、ロシアを離れた。移住先のウクライナでは民放テレビ番組にも出演している。

偽装作戦は手が込んでいたといえる。5月29日、ウクライナ警察はアルカディ氏は自宅マンション周辺で3発の銃弾を受け、搬送中の救急車内で死亡したと発表した。目撃者が撮影した、同氏が血の海にうつぶせになった写真もネット上に流れた。

グロイスマン首相は射殺報道を受けて、哀悼の意を示すとともに「ウクライナの真の友人でロシアによる侵攻を世界に伝えていた」と同氏を評するコメントを発表した。

わずか24時間後、ウクライナ保安局長との会見の場で姿を見せたアルカディ氏。偽装作戦について「多くの友人や仕事仲間に責められ、気分を悪くさせてしまったのを知っている」「申し訳なく思っている、でもほかに選択肢がなかった」と述べた。

アルカディ氏によると、保安局は2カ月前から偽装作戦を計画しており、本人が協力に応じたのは1カ月前だという。

ウクライナの首都キエフは近年、ジャーナリストや政治家をはじめとする著名人を狙った襲撃事件が起きている。彼らのほとんどは、ロシア政府を表立って批判していた。

2016年7月、ベラルーシのジャーナリストでロシア政府の批評家は、キエフで自動車爆弾により殺害された。2017年6月、ウクライナの高級軍事諜報官も同様に自動車爆弾で殺害された。同年3月、元ロシア議員がキエフのホテル近くで殺害された。

(編集・佐渡道世)