<ウィキリークス>告発に敏感な中国当局 報道禁止令

2010/12/01
更新: 2010/12/01

【大紀元日本12月1日】告発サイト「ウィキリークス」に28日公表された25万件の米外交公電について、北京の宣伝当局は、公電の内容が中国の市民に漏れ伝わらないよう、制御する動きを見せている。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、29日夕方現在、公電が公開されているウィキリークス内のページ「Cablegate(ケーブルゲート)」は、中国官製の検閲ソフトにかけられ、閲覧できないようになっている。さらに中国国営テレビとポータルサイト・捜狐(Sohu)のそれぞれの内部関係者によると、中国の報道機関はウィキリークスの告発について当局より報道禁止令を受けているという。この話は、Twitterに似た中国語ミニブログのユーザーにも噂として回っている。

中国当局はこの報道禁止令について一切声明を出していないため、公電にある特定の記述について警戒しているのか、ウィキリークス自体の動きに慎重になっているのか不透明である。国営メディアの中で唯一、中国新聞社が30日付けでウィキリークスの内容に触れている。 「(公電の公表を受けて)日本の首相官邸は、日本政府に米スパイが潜んでいる可能性があるため警戒している」と伝える以外、官製メディアは同サイトについて報道していない。

米政府:中国の兵器技術・材料の輸送を懸念

中国当局が報道禁止令を出す理由として、中国からイラン・中東地区への兵器輸送などが注目されている。公電には、イラン向けの弾道ミサイルと化学兵器に関する技術の移転や材料の輸送を止めるようアメリカが要求したが、中国がこれを無視し続けたことや、米空軍基地を閉鎖させるためにキルギスタに30億ドルの供給を提案していたことが明らかになった。

別の公電によると、今年2月、イランが中国企業から弾道ミサイル用材料の購入を検討していたことについて、米クリントン国務長官は中国政府に対応を求めていた。

米ニューヨークタイムズなどによると、クリントン氏は今年1月、仏士官学校でスピーチし、イランの核開発について、対イラン制裁強化への協力を中国に呼びかけている。同氏はこの中で中国のエネルギー確保の野心とイランの核開発を巡る警戒を関連付ける見解を述べていた。

漏えい恐れる当局 中国版ウィキリークス 実現なるか

いずれにせよ内部情報の漏れを重大犯罪とみなす中国にとって、報道禁止令は中国政府の通信網を漏えいさせる可能性のあるインターネットサイトへの警戒を暗示している。

米ニューヨーク・タイムズ紙の中国人スタッフ、趙岩(ジャオ・ヤン)氏は2004年、国家機密漏えいと詐欺罪で3年間、中国当局に拘束された。2009年には、英豪系資源大手リオ・ティント社の幹部が国家機密を窃盗した罪で拘束されている。

台湾軍部は先日、台湾の国家機密情報を中国当局に漏らしたとして軍部大佐ら2人を二重スパイの容疑で逮捕した。この2人が漏らした台湾機密情報により中国で活動する諜報員らが危険にさらされる恐れがあるとして、台湾行政院は「諜報員の早期帰還に尽力する」と発表した。

中国は告発の少ない国ではない。産経新聞によると2001年、天安門事件について解説された機密文書「天安門文書」が中国政府に衝撃を与えている。また今年7月下旬に開かれた党のトップレベル会議の議事録が、会議の数日後、海外のインターネットサイトに流出したという。

中国における当局の機密のリークは、現行の政治傾向に不満を持つものが党の不安定要素を作り出すための行為という見方もある。多維新聞網は今年11月、中国人民主活動による「中国版ウィキリークス」の創設が計画されていると伝えた。しかしインターネットに詳しい専門家の多くは、創設の計画がオープン過ぎるため、「中共の罠」と警戒している。

米国前長官:インターネットを恐れる国 世界をリードできない

米ライス前国務長官は10月中旬、CNBCの取材で、中国のインターネットへの恐れに言及している。

発言の中で「インターネットを非常に恐れる国は、ナレッジ(知識)ベースの革命をリードすることはできない」と述べ、「中国は将来、世界一の経済大国になりうる。しかし中国の様々な政策にはインターネットに対する恐れが表れているため、世界のナレッジ・ベース革命のリーダーにはなれない」と結論を下している。

中国のインターネットには、報道封鎖など法人レベル以外の言論統制の他に、当局が恐れる市民レベルの発言を抑え、党の宣伝工作の役割を果たす「五毛党」スタッフが存在する。彼らの仕事は主にネット掲示板で政府を称賛したり、政府の失策をかばったりするコメントを投稿することだ。最近では、中国関連ニュースや動画サイトのコメント欄の発言の不自然さや執拗さから、五毛党スタッフが英語・日本語など多言語サイトにも投稿していると、英語圏や日本のネットユーザーにささやかれている。

(翻訳編集・佐渡道世)