毎年12月10日は「世界人権デー」だ。1948年に国際連合で「世界人権宣言」が採択されたことを記念している。日本ではこの日を含む1週間(12月4~10日)が「人権週間」と定められ、人権の重要性を啓発する活動が行われている。
日本の「人権外交」
日本政府は「人権外交」によって世界の人権状況改善に貢献する方針だ。外務省のウェブサイトには「人権外交」についての『日本の基本的立場』が掲げられている。
そこには「国際社会の人権問題に対処するにあたって重要な点」の第一として、「人権及び基本的自由は普遍的価値であること。また、各国の人権状況は国際社会の正当な関心事項であって、かかる関心は内政干渉と捉えるべきではないこと」とある。中国共産党(中共)が他国から人権侵害を指摘されたときに反論によく使う言葉が「内政干渉」だ。「国内問題に干渉するな」と言って聞く耳を持たない。日本政府はその言い訳にすでに布石を打っているのだ。
実際、令和4年12月5日に参議院本会議が決議した『新疆ウイグル等における深刻な人権状況に対する決議』の冒頭文には次の文章が見られる。「近年、国際社会から、新疆ウイグル、チベット、南モンゴル、香港等における、信教の自由への侵害や、強制収監をはじめとする深刻な人権状況への懸念が示されている。人権問題は、人権が普遍的価値を有し、国際社会の正当な関心事項であることから、一国の内政問題にとどまるものではない」
日本政府の言動には一致が見られているのだ。
「ビジネスと人権」と中共の人権侵害
「ビジネスと人権」の理念に関する意識も高まりを見せている。2020年に策定された『「ビジネスと人権」に関する行動計画(令和 2年10月 ビジネスと人権に関する行動計画に係る関係府省庁連絡会議作成)』では、日本企業による人権尊重の取り組みを促進するためのガイドラインが示されている。この中で、企業は人権侵害に関与しないよう注意を払うことが求められている。
いっぽう、日本は中国との経済的つながりが深い。日本企業にとって人権問題に触れるような中国企業との関りは絶対に避けなければならない。さらに、最近の中国経済の低迷は著しい。中国共産党が支配する中国では、政治的自由が制約されているが、それでも最近までの中国の目覚ましい経済成長が人々の不満を吸収していた。中国共産党政権による統治の安定と経済成長は直結した問題だ。今後、経済成長が続くのかどうか、これは今後の中国人権問題を左右する大きな要素でもあるのだ。
法輪功迫害 見過ごされがちな人権問題
中国における人権状況は国際社会から厳しい批判を受けている。特に注目されているのは、新疆ウイグル、香港、チベット、南モンゴルにおける抑圧だ。いっぽうこれまで、『法輪功への迫害』については、他の人権問題ほど注目されていない現状があった。その理由には、中共政権による情報統制が挙げられる。法輪功学習者は、拷問や強制失踪、生体臓器収奪などの深刻な迫害を受けているが、この問題は国際社会であまり取り上げられてこなかった。
法輪功保護法案の進展
しかし、アメリカでは、「法輪功保護法案」が進行中だ。この法案は法輪功への迫害を阻止し、特に生体臓器収奪に関与した者への制裁を含んでいる。この法案を提出したのはマルコ・ルビオ米上院議員だ。トランプ次期大統領は11月13日、外交トップを担う国務長官にルビオ議員を起用すると発表した。このことから、この重大な人権問題への関心はさらに高まると予想される。ルビオ氏は対中強硬派として知られる。米中関係や人権問題へのアプローチに大きな影響を与えることが期待されている。
日本「人権外交」の強化
日本政府は人権問題への対応を強化しつつある。しかし、まだまだ日本ができることはあるだろう。特に法輪功迫害のような見過ごされがちな問題にも目を向け、国際社会全体で人権保護に取り組むことが重要だ。今までの日本の人権外交は、「対話」と「協力」の姿勢に立って、国連等国際フォーラム及び二国間対話等において進められてきた。今後は、アメリカの新政権下での動向にも注視しつつ、日本の「人権外交」のさらなる進化が期待される。
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