ポスト冷戦時代の中共スパイ

2010/07/10
更新: 2010/07/10

【大紀元日本7月10日】今、国際社会で「スパイ狩り」が注目されている。6月29日、米連邦捜査局(FBI)は10人のロシアのスパイを逮捕した。これらのロシアのスパイの手口の多くが旧式の情報工作のコピーであり、米メディアの言い方では「冷戦時代の残渣に過ぎない」という。

ドイツのスパイ事件

米国のスパイ狩りは冷戦時代の残渣に過ぎないというなら、欧州のスパイ狩りはポスト冷戦時代の特徴を持っていると言える。ドイツ最大の週刊誌『デア・シュピーゲル』の6月26日に発表された「スパイ戦」によると、中国共産党(中共)特務機関「610弁公室」の高官が在独の法輪功団体の情報を探るため現地へ行き、一人の情報提供者を獲得したことに対して、ドイツ裁判所が取調べを進めており、また情報提供者になった中国系学者が起訴されようとしている。記事によると、ドイツの国籍を持つ中国系学者・孫容疑者がどのように情報提供者として籠絡され、どのようにしてドイツとヨーロッパの法輪功学習者の内部メールを大量に中国に転送したかが詳しく紹介されている。

6月21日に発表されたドイツ内務省護憲局(米国のFBIに相当)の09年度報告では、中共がドイツでもっとも頻繁にスパイ活動をしており、経済、政治、軍事などの多方面の領域に深く及んでいると指摘した。また、中共のスパイの特徴と仕事の方式を詳しく紹介し、中国の駐ドイツ大使館、領事館がスパイの大本営であると指摘した。明らかに、中共の西側諸国でのスパイ活動は中共独特の特色を持っており、西側の反スパイ活動もその特色に対応している特徴がある。

中共スパイ活動の特徴

その一、中共の西側諸国でのスパイ活動の規模は、すでに旧ソ連と今日のロシアを上回っている。中共は人海戦術を採用し、国家安全局、公安、軍の系統を使う以外、留学生、学者、外国駐在員、商人、定住者を利用して情報を収集している。この点だけでも、ロシアをはるかに凌駕している。

米国の学者ジョン・ファイアルカ氏は自著『経済スパイ戦争の最前線』の中で、今、中国安全部が米国へ派遣したスパイの数はすでに冷戦時のKGBスパイの派遣ピーク時より多いと指摘した。中共は米国に3200のペーパー会社があり、さまざまな情報を収集している。カナダとオーストラリアにおける中共のスパイはそれぞれに千人以上いる。ドイツの護憲局は直接中共のドイツにおけるスパイの数を表示していないが、すでに中共政権を最大の敵と見なし、中共のスパイに対する防備を主要な任務としている。同局は各大手会社に公文書を発送し、防備を強化するように要求している。中国からの入国者がドイツでの博覧会を見学する際に、甚だしきに至っては商店の中でも撮影を断られる場合があるが、他の国からの人に対してはこのようなことはない。

その二、中共政権と他の国の最大の違いは、そのスパイ活動を軍事、科学技術、経済、外交などの情報を探ることに限定せず、もう一つの主要な力を異見分子と法輪功学習者への監視とコントロールに置いていることだ。即ち本国の同胞に対する迫害である。これは中共独裁政権の重要な特徴である。

今回の事件で、ドイツの法輪功学習者を監視する目的で一人の情報提供者を獲得するため、610弁公室の高官まで出動させたところを見ると、中共が法輪功弾圧をその最も主要な政治目的としていることは明らかである。これはすでに大量に暴露されている、中共がカナダ、米国、オーストラリア、台湾などで法輪功学習者を広く監視した状況と同じである。

その三、中共のスパイ活動は明らかに中国大陸の腐敗の特色を持っている。中共が協力者を獲得する場合、普通は個人的関係を構築して、名、利、色で誘惑する。例えば面会、招待、饗応、贈り物、便宜をはかる、色仕掛けなどである。今回の事件で、中共は孫容疑者が、父親が重態でビザを申請しなければならないことを利用し、落とし穴を設けた。西側諸国の官吏を味方に引き入れたケースでは、西側の官吏を中国に招待し、「まるで帝王の如き待遇」や色仕掛けで誘惑した。もともと中共を非難し、自由民主の理念を持つ政界要人が、赤い絨緞とハニートラップの前で次から次へとやられるケースもあった。

その四、中共のスパイ活動はまた民族的感情といわゆる愛国主義を利用している。中共が海外で籠絡する対象は大体中国系の人物である。西側の反スパイ専門家は、これは中共がロシアやその他の国と違う一つの主要な特徴と見ている。これは、一つには華人が国を愛することと、共産党を愛することの違いをはっきり区別できないことを利用しているのであり、もう一つは中国国内の家族を巻き添えにする方式で協力させることである。このような嘘プラス暴力の方式でしばしば華人を服従させることができる。85年から現在まで、米国で捕えられた中共のスパイは、すべて中国系であり、純粋な外国人は1人もいなかった。

対抗する西側諸国

中共のスパイ活動はすでに西側諸国で重大な関心を引き起こしており、各国はそれに対抗する行動を開始している。ドイツの反スパイ部門はすでに今回の中共の華人に対する監視・コントロールを重大な犯罪と見なして処置を行った。ドイツの護憲局はもっぱら中共のスパイを監視する部門を設けた。また、ドイツ政府は冷戦時旧ソ連に対処した方法を採用し、中共の大使館職員の身分を調査し、不法に情報収集する中共の外交官を追放しようとしている。

ドイツの「スパイ狩り」は中共に対してはっきりとメッセージを伝えた。本土であろうと、他の国であろうと、人権を侵害し、民衆を迫害するのは許されないことを。東ドイツはかつて秘密警察が最も荒れ狂った所である。推定によると、180人の東ドイツ人に対し1人の秘密警察官がいた。その密度は旧ソ連の600対1とヒトラー統治の7千対1をはるかに超えている。東ドイツの人民は共産党の密告制度に対して身を切られる痛さがある。従って、かつて東ドイツ人であったメルケル首相が、率先して中共のスパイ活動を制約するのは、歴史的原因があると考えても理に適うだろう。

(翻訳編集・金本)