中国の「対北シナリオ」 5態

2006/08/27
更新: 2006/08/27

【大紀元日本8月27日】デイリーNK韓国語版によると、国連安保理は北朝鮮によるミサイル発射に対し、対北決議案を採択した。中国が同決議案の表決で賛成に回ったことで、中国の対朝鮮戦略についての議論が加熱している。「中国の北朝鮮放棄が始まった」と言う分析から、「中国の国連対北決議案賛成は北朝鮮と組んでの出来合いレース」といった極端な解釈もある。中国の選択と、北東アジアや世界に及ぼす影響を、今までに出された 中国の対北朝鮮シナリオ5態を分析して見る。

1.分断された朝鮮半島の現状維持

中国政府の公式な立場は、「中国は朝鮮半島の平和と安定を望み、平和的な統一を支持する」というものだ。朝鮮半島の平和と安定を望むということは朝鮮半島に戦争のような激変が起きないことを希望するというものだ。これは朝鮮半島の現状況が変化しないことを前提とする。平和的統一は現状維持ではないはずだが。

金ゾングオ漢陽大国際大学院教授は去る28日、「オー・マイニュース」のインタビューで、「中国の本音は非核化された状態での分断された朝鮮半島の現状維持」と述べた。分断された状態だけではなく、非核化された状態でなければならない。

北朝鮮の核武装は、台湾と日本、そして南韓の核武装を促進しかねず、従って中国は 6者会談で積極的な役目を演じる。朝鮮半島に戦争が勃発した場合、中国が死活問題と捉えている2008年北京オリンピックに莫大な支障が生じる。

北朝鮮総人口の 10% に当たる200万人(この中には武装した脱営兵たちも含まれるであろう)が東北 3省に避難しても、中国社会は大きな混乱に陥る。金教授は 、「中国は平和的な朝鮮半島の統一も願っていない」と分析した。

去る 2000年 6月15日、 南北首脳会談後に金大中・前大統領は 、「北朝鮮金正日総書記は、南北統一後も在韓米軍が駐屯することに同意した」と明らかにした。南北統一後、鴨緑江と豆満江を境にして、事実上米国と国境を向い合うようになることは中国としては無惨な出来事だ。

しかし、むしろ南北統一を恐れる必要はないと主張する中国の学者もいる。マディソン中国広東省社会科学院研究員は、2005年 3月に香港の時事週刊誌 「阿洲週刊」に寄稿した文で 、統一された 「大高麗国」が必ずしも中国と友好国にならないとしても、韓国は今まで日本を敵視し対立してきた国家なので、統一韓国は日本を圧するための切り札になると主張した。東北アジアで中国の最大の敵は日本だ。

2.北朝鮮政権内部の親中改革派が政権奪取

強い慰留にもかかわらず核開発をしようとする金正日政権に、極度にがっかりした中国が、親中改革派が政権を取るようにした後、北朝鮮の改革・開放を積極的に支援するというシナリオだ。

北朝鮮改革派の代表的な人物で、金正日総書記の妹婿である張成沢氏が、有力な候補に上がる。これは韓国内保守陣営一部で主張するシナリオだ。去る 7月 22日、極右志向のサイト(www.chogabje.com/)に、「ブッシュ米大統領と胡錦涛総書記の妥協策は張成沢氏、 北ミサイル火遊びの主眼は、親中派への牽制かもしれない」という文が掲載されたことが一例だ。

北朝鮮に親中改革・開放派が政権を樹立すれば、核ミサイルを開発するわけがないから、米国も賛成するはずだという論理だ。しかし中国は、北朝鮮に対する影響力があるが、親中改革・開放派政権を立てるほどの力はないというのが一般的な観測だ。

去る 2004年秋、匿名希望の一中国共産党党員はこんな主張も展開した。「もし中国が、北朝鮮内で親中改革派が政権を取るようにしたら、その日で南韓とは仇敵の関係になる」。中国が南韓を要することは日本を牽制するためだ。このシナリオは、実現の可能性が極めて低いだろう。

3.北朝鮮政権崩壊を看過

米国がイラクのように北朝鮮を攻撃しても放っておくというシナリオだ。国連対北決議案に中国が賛成した後、注目される論理だ。

このシナリオは、基本的に中国が早ければ来る 21世紀中盤に、米国と国力が均衡するまでは正面対決を避けるはずであり、それ以前に北朝鮮と米国の内で一つを選択しなければならない状況になれば、米国側につくと仮定する。

これは韓国内保守陣営と米国ネオコン(新保守主義)が希望することでもある。しかし一般的に中国が北朝鮮を苛めることがあっても、絶対見放さないという観測が多い。

7月18日の「デイリーNK」によれば、ファン・ジャンヨプ前労動党書記は、「ミサイル試験発射など一時的な意見の違いはあるが、根本的な中朝関係は変わらない」、「中国は北朝鮮ミサイル打ち上げを前もって分かっていたはずであり、ただ米国との関係が悪化しすぎることを警戒して、北朝鮮を説得する形式的な姿を見せただけ」と主張した。

4.中国が北朝鮮を直接統治

多くのシナリオの中で一番極端だ。中国が直接北朝鮮を占領するというのだ。中国が去る 2002年から本格的に推進した「東北公正」によれば、大同江以北の北朝鮮の土地は中国の歴史的領土だ。東北公正が盛んな時に、たくさん出たシナリオだ。

「東北公正」は、朝鮮半島北部と満洲地域を掌握している途中、西紀 668年に滅亡した高句麗が韓国史ではなく中国歴史なのを証明する中国政府のプロジェクトだ。したがって中国は、現在北朝鮮の土地に対する歴史的縁故権を主張することができる。

直轄統治論の変種が 、「親中軍事クーデター操縦説」だ。軍部の中の鷹派を親中派で固め、軍事クーデターを画策し、金正日政権を打倒させた後、軍部が政権を樹立するというのだ。

しかし中国内部の少数民族問題も手に負えない中国が、北朝鮮というまた新たな火種を自ら引き受ける理由がないという反論も多い。

5.米-中のビッグディール説

一つは米国が台湾問題で譲歩する対価の代償として、中国が北朝鮮を米国に渡してやるというのだ。これは韓国の歴史的経験から出た説でもある。

1905年、米国のセオドア・ルーズベルト大統領の特使である陸軍長官ウィリアム・ハワードタフトと日本の総理・桂太郎が密約を結んだ。米国がフィリピンを統治する対価の代償として、日本が朝鮮を保護国とすることで合意した。

しかし米国の立場で見る時、台湾の戦略的価値は北朝鮮のそれよりずっと大きく、従って実現の可能性が極めて低いという反論がある。

また一つのビッグディール説は、中国は米国の北朝鮮攻撃を見逃すが、この地を韓国が統治するのではなく、国連管理下の中立地帯に置くというのだ。

米国の立場では、金正日政権をとり除くことができるし、中国の立場では、米国の影響力を遮断する緩衝地帯を置くことができるという長所がある。

もちろん第3世界で発生する数十万人の難民も救済することができない国連が、 2200万人の人口を抱え、経済的に疲弊した北朝鮮を援助することは到底考えにくいという主張が多い。

しかしこのシナリオは国際法上で見る時、全然根拠がないわけではない。現在、韓国の憲法上では、大韓民国の領土は朝鮮半島とその付属島嶼にするとなっているが、 1948年 12月 12日 「国連決議195」では、南韓を「国連韓国臨時委員団の監視が可能な地域で樹立された合法政府」と認めただけだ。

すなわち、国連決議案によると、北朝鮮は南韓の領土ではないという主張が成り立つことになる。去る 1991年、南北韓が同時に国連に加入した時反対論理の中一つが、北朝鮮を合法的な別個の国家で認めることで憲法と衝突し、統一の当為性が毀損されるというものだった。

多様なシナリオが出ること自体、状況の不透明性とそれを解消する見込みが見えない現実を反映しているのかもしれない。