ガソリン価格 住宅 金利 中間選挙を控えた米国の生活費事情の内幕

2026/10/31
更新: 2026/10/31

民主党はトランプの関税とイラン戦争を非難し、共和党はバイデン時代のインフレを指摘し、有権者は生活の苦しさを感じている。

中間選挙を前に有権者が両党の経済実績を比較検討する中、生活費への懸念が決定的な争点として浮上している。ジョー・バイデン大統領時代の40年ぶりの高インフレを指摘する声がある一方で、ドナルド・トランプ大統領の関税政策やイランでの紛争を非難する声もある。 民主党はガソリン価格の高騰やその他の出費についてトランプを非難する一方、有権者は青い州(民主党支持州)と赤い州(共和党支持州)の間の生活費の違いを比較している。 コスト上昇を巡って両党が非難の応酬を繰り広げる中、彼らの経済実績の現状は以下の通りである。

 

トランプとバイデン

2024年の選挙戦を通じて、トランプはインフレを抑え、生活のしやすさを回復させると日常的に約束していた。そして2月下旬にイランでの戦争が始まる前、米国の総合消費者物価上昇率は、連邦準備制度理事会(FRB)が目標とする達成困難な2%に少しずつ近づきつつあった。 しかし、紛争が勃発してホルムズ海峡の交通が遮断され、世界的なエネルギー価格が高騰すると、インフレの見通しは大きく変わった。

開戦から9か月を迎えようとしている現在、この戦争により米国の年間インフレ率は持続的に3%を超えた状態が続いている。 

エネルギー主導の価格高騰は前政権が直面した課題を反映しているが、バイデンはさらに深刻なインフレショックと戦っていた。彼の政権下では、年間インフレ率が2022年6月に40年ぶりの高水準となる9.1%でピークに達し、これが彼の経済実績における大きな弱点となった。

2021年1月の就任時、年間インフレ率は1.4%であった。 議会の共和党員を含む批判者たちは、ガソリンスタンドから食料品店に至るまでの全面的な価格上昇の原因は彼のエネルギー政策にあると非難した。

 2021年の就任直後、バイデンはキーストーンXLパイプラインの許可取り消しや、連邦領地における新規の石油・ガス採掘リースの停止など、化石燃料産業を標的としたいくつかの大統領令に署名した。 これに対し、エネルギー企業は投資を抑制し、拡張計画を縮小した。供給の制約がエネルギー市場を不安定にし、2021年から2022年にかけて石油とガスの価格を大幅に押し上げた。

 

民主党の元財務長官ラリー・サマーズを含む著名な経済学者の一部も、バイデン政権下のインフレの要因として1兆9千億ドルの米国救済計画(American Rescue Plan)を指摘した。この景気刺激策は、新型コロナウイルスパンデミック後の不況を防ぐことを目的としていた。 

著名な経済学者モハメド・エラリアンはこの計画を批判し、経済を過熱させ、破壊的なレベルのインフレを引き起こすだろうと警告した。これらの警告にもかかわらず、バイデンは2021年3月にこの景気刺激策に署名して法案を成立させた。インフレ率はその月の2.6%から2021年末には7%へと急速に上昇した。 

バイデン政権下の2022年、ガソリンの全国平均価格は過去最高の5.02ドルに達した。全国平均が3ドルを下回ったのは、第2次トランプ政権下の2025年後半になってからであった。 その後、イランでの戦争を受けて原油価格が1バレル100ドルに向けて上昇したため、2026年にガソリン価格は再び急騰した。これにより、2026年5月の全国平均価格は1ガロンあたり約4.50ドルに押し上げられ、今年最高値を記録した。それ以降、価格はやや落ち着きを見せ、10月27日時点の全国平均価格は1ガロンあたり約4.27ドルとなっている。

2021年にガソリン価格が急騰し始めた際、バイデンは当初このインフレを「一時的なもの」として片付けていた。彼は2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻を価格上昇の原因とした。価格の上昇が続くと、彼は企業を価格つり上げだと非難し始めた。 

バイデン政権下では消費者物価指数は年間平均5%上昇したが、トランプの第1期政権下では年間1.9%であった。現在までのところ、トランプの第2期政権下における年間平均インフレ率は3%近くとなっている。 累積的に見ると、バイデンの4年間の任期中に消費者物価指数は21%以上上昇したが、トランプの第1期任期中は7.7%であった。そしてトランプが第2期を開始して以来、全体的な物価は合計で約6%上昇している。 

バイデン政権の終盤に向けてインフレは鈍化したものの、その累積的な影響により労働者の賃金は目減りした。実質(インフレ調整後)の収益は2年以上にわたって減少し、これが大衆の購買力を低下させ、家庭に経済的圧力をかけた。

 

イラン戦争から広範な新関税に至る逆風にもかかわらず、トランプ政権下でのインフレはバイデン政権時よりも低く抑えられている。さらに、基調的なインフレは落ち着いており、変動の激しいエネルギーや食品の価格を除いた9月の年間コアインフレ率は2.6%であった。 しかし、トランプの大統領就任(第2期)からほぼ2年が経過した今でも、米国人は生活費に対して強い不満を抱いており、それが幅広い経済への見方や投票所での選択に影響を与え続けている。

 中間選挙に向けて、さまざまな世論調査が、経済やインフレに関するトランプの支持率が完全に水面下(不支持が支持を上回る状態)にあることを示している。10月6日のエコノミストとYouGovの世論調査では、大統領の経済対応を支持した回答者は36%であった。 

比較すると、バイデンは2022年の中間選挙に向けて、より良い世論調査結果を得ていた。その年10月のエコノミストとYouGovの調査では、40%がバイデンの経済対応を支持していた。 この高まる不満は、消費者心理にも反映されている。 

ミシガン大学の消費者態度指数(現在および将来の経済状況に対する大衆の信頼度を測る広く注目される指標)は10月に48となり、その約75年の歴史の中で2番目に低い数値を記録した。最低記録の44.8は、今年の5月に発生した。

 心理が悪化し続ける一方で、過去数年間で実質の中央値所得は改善し、貧困率は着実に低下している。 労働省労働統計局によると、フルタイムの賃金・給与労働者の週給中央値は、2025年の第1四半期から約4%上昇している。 国勢調査局は9月、公式の貧困率が昨年10.2%という過去最低水準に低下したと報告した。 

ドイツ銀行の経済学者たちによると、消費者の経済に対する感覚と実際の経済統計との間の乖離が拡大しているという。エポックタイムズにメールで送られた最近のレポートで、彼らは「家計は、スポットのインフレ率ではなく、COVID以降の累積的な価格や生活費のショックに反応している可能性がある」と説明した。 さらに、進行中の住宅のアフォーダビリティ(価格の手頃さ)の課題や人工知能に対する懸念の高まりも、消費者心理の重しになっていると彼らは付け加えた。 

カマラ・ハリス前副大統領は10月20日のX(旧Twitter)への投稿で、「食料品やガソリンから住宅や保育に至るまで、ドナルド・トランプ政権が行った選択のせいで、あらゆるもののコストが上昇している」と記した。 バラク・オバマ元大統領も10月24日のミシガン州での集会における演説で、コスト上昇の原因はトランプの政策にあるとし、「誰も望んでいなかった」イランでの戦争を指摘した。

 

赤い州と青い州

中間選挙を控え、ガソリン代や光熱費などのエネルギーコストを主な懸念事項に挙げる消費者は依然として多い。そのため、生活費の負担をいかに抑えるかが、政策立案者と候補者の双方にとって大きな課題となっている。

 ガソリンスタンドでの価格に関して、エネルギー研究所(IER)の7月の報告書によると、民主党が知事と議会を支配している州ではガソリン価格の平均が1ガロンあたり3.69ドルであったのに対し、共和党の州では平均3.14ドルであり、1ガロンあたり0.55ドルの差があった。 

報告書によれば、この格差の大部分は、より高いガソリン税、製油所に対する敵対的姿勢、および燃料コストを押し上げるその他の政策に起因している。 さらに、活動家たちはエネルギー企業に対して数十件もの気候関連の訴訟を起こしており、これらが成功すれば、石油、ガス、石炭の生産・精製企業にとって数千億ドルの損害賠償に達する可能性がある。 これらのコストは、価格引き上げという形で消費者に転嫁される可能性が高い。

 ディーゼル価格もイラン紛争中に急騰している。燃料コストは9月の記録的な高値である約6.53ドルからは下がっているものの、1ガロンあたりの平均価格は依然として確実に6ドルを超えており、1年前より約40%高い水準にある。

 

電気料金について、IERとAlways On Energy Researchの分析によると、青い州の住民は赤い州の住民に比べて、平均して42%高い電気代を支払っていることが分かった。 この違いは、ネットゼロ排出義務、カーボンプライシングやキャップ・アンド・タックス制度、そして化石燃料を風力や太陽エネルギーに置き換えることを意図したその他の法律など、強権的な規制に起因していると、IERの広報担当者アレックス・スティーブンスはエポックタイムズに語った。

 

住宅のアフォーダビリティ(取得しやすさ)

電気料金と同様に、住宅の取得しやすさも赤い州と青い州で分かれている。 2025年のRealtor.comの報告書によると、住宅が最も手頃な州は南部と中西部に位置している。 報告書は、南部と西部の州が最も多くの住宅を建設しており、2024年に全国で発行された新築住宅建設許可の半分以上をこれら2つの地域の7つの州が占めていると指摘している。 アフォーダビリティについて各州を評価したその報告書には次のように記されている。「南部と中西部の州は、アフォーダビリティと住宅建設の観点から良い評価(AとB)をすべて獲得した。一方、建物の用途制限や土地利用に関する規制が一般的に厳しい西部と北東部の州に、悪い評価(DおよびF)がすべて集中する結果となった」 

新型コロナウイルスパンデミック後に起きた前例のない記録的な住宅価格の高騰を受け、バイデン政権とトランプ政権の双方が、住宅の取得しやすさを改善すると主張する対策を提案した。この夏、議会はここ数十年で最も包括的な住宅法案である「21世紀住宅への道(21st Century ROAD to Housing)法」も可決した。 この法律には、環境審査の合理化、州や自治体に対する建物の用途制限と土地利用指針の改革の奨励、住宅近代化の支援、および大規模機関投資家による一戸建て住宅の購入制限など、供給を増やすための数十の条項が含まれている。

「この国では十分な住宅が建設されてこなかった。したがって、供給側の取り組みを優先すればするほど、最終的に住宅はより安定し、より手頃な価格になるだろう」と、元連邦住宅局長官のフランク・キャシディはエポックタイムズに語った。 住宅着工件数はまだ2020年以前の水準に戻っておらず、2022年のピーク以降は減少傾向にある。現在、業界の専門家は、米国では400万から500万戸の住宅が不足していると述べている。

 

既存物件の販売価格の中央値は、年初に40万ドルを下回って以来、着実に上昇している。全米不動産協会によると、8月の既存住宅販売価格の中央値は41万7500ドルであった。 逆に、国勢調査局のデータによると、9月に販売された新築住宅の販売価格の中央値は40万400ドルであり、1月の39万8700ドルから上昇している。 しかし、比較的安価な新築住宅は、より規模の大きい既存住宅市場のひっ迫を和らげるには至っていない。 この不足に追い打ちをかけるように、住宅ローン金利の上昇が月々の支払いをさらに押し上げている。不動産情報サイト大手レッドフィン(Redfin)によると、金利7.4%での住宅ローンの月額返済額(中央値)は約2800ドルに達し、1年前から8%以上も上昇している。その結果、多くの家庭にとって現在の住宅は手が出ない水準となっており、これがトランプ政権の課題となる可能性がある。

 

金利と借入コスト

トランプは、金利の低下が米国経済にとっての「ロケット燃料」になるだろうと述べている。 大統領によれば、これを達成する一つの方法はFRBが行動を起こすことである。 「米国経済は非常に力強いのだから、FRBの計算式に関係なく、世界で最も低い金利にするべきだ」と、トランプは9月のFRB政策会合を前に記者団に対して語った。 しかし、他の中央銀行の多くと同様に、FRBは逆の方向へと進んでいる。 FRBは9月に2023年7月以来初となる0.25ポイントの利上げを実施し、政策立案者も市場も同様に、二次的・三次的なインフレ効果を防ぐために少なくとももう一度の利上げを想定している。

 

中東での戦争勃発以来、米国債市場は脚光を浴びており、主要な利回りは数十年ぶりの高水準にまで上昇している。 企業、消費者、および政府のさまざまな借入コストに影響を与える重要な金利である指標の10年国債利回りは、最近、2002年以来の最高水準で取引を終え、5.3%を超えた。10年債利回りはその後沈静化し、約5%まで後退した。 トランプが第2期を開始したとき、10年債利回りは約4.6%であり、2025年10月には3.93%にまで低下していた。住宅ローン融資大手の ローンデポット(loanDepot)のヘッドエコノミストであるジェフ・デルグラヒアンは、「市場は現在、製造業者がコスト上昇分を消費者に転嫁するのか、市場は現在その動向を注視している」と述べた。

デルグラヒアン氏はエポックタイムズに対し、「コスト増が総合インフレとコアインフレの両方に現れ始めれば、住宅ローン金利は高止まりする可能性がある」と語った。一方で、「企業がコスト上昇分を価格に転嫁せず自社で吸収すれば、インフレ懸念が後退して金利が低下する余地も生まれる」と指摘している。こうした金利上昇の影響は、すでに米国の住宅市場全体へと波及している。

フレディマック(連邦住宅貸付抵当公社:米国の住宅ローン金利の動向を示す代表的な指標を発表している政府系機関)によると、住宅ローン金利は過去3年間で最高水準に達しており、10月上旬における30年固定金利の平均は7.28%であった。通常は10年国債利回りに連動するこの30年ローン金利だが、2月下旬に2022年以来初めて6%を割り込んでいた状態から一転して急上昇している。こうした金利の高止まりが長引けば長引くほど、2024年の大統領選挙で重要な支持基盤となった若者層にとって、マイホームの夢を実現することはますます困難になるだろう。

アンドリュー・モランは10年以上にわたり、ビジネス、経済、金融について執筆。「The War on Cash.」の著者。
Emel Akan
エポックタイムズのホワイトハウス上級特派員、トランプ政権担当記者。 バイデン前政権とトランプ第一次政権時は経済政策を担当。以前はJPモルガンの金融部門に勤務。ジョージタウン大学で経営学の修士号を取得している。
経済記者、映画プロデューサー。ウォール街出身の銀行家としての経歴を持つ。2008年に、米国の住宅ローン金融システムの崩壊を描いたドキュメンタリー『We All Fall Down: The American Mortgage Crisis』の脚本・製作を担当。ESG業界を調査した最新作『影の政府(The Shadow State)』では、メインパーソナリティーを務めた。