政府が閣議決定した総合政策方針「地域未来戦略」が本格的な実行段階に入っている。地域の産業集積を促す「産業クラスター」の形成を通じて地方経済の成長を図るもので、北海道のAI農業、徳島県の蓄電池産業、福岡県北九州市のフィジカルAI、新潟県のアニメーション産業など、各地で特色を生かした取り組みが進められている。政府は年末に向けて財政支援やインフラ整備の枠組みを具体化し、国と地方自治体が連携した産業振興を推進する方針だ。
地域未来戦略は、政府の「日本成長戦略」と連携し、官民投資の拡大によって国内の供給力を強化するとともに、雇用や所得の増加、税収の自然増につなげる経済の好循環を目指すもので、その戦略の柱となるのが、地域の特性や事業規模に応じた3種類の計画だ。
「戦略産業クラスター計画(A類型)」は、政府が成長戦略に掲げる17分野に関連する企業の大規模投資を起点とする広域的な産業振興策である。国が主導的な役割を担い、道路や港湾、工業用水などのインフラ整備と人材育成を計画的に進める。
「地域産業クラスター計画(B類型)」は、都道府県知事が中心となり、地域の産業競争力の向上を図る。海外市場への進出による外貨獲得や、国内市場でのトップシェア獲得を目指す企業の集積と成長を支援する。
「地場産業成長プラン(C類型)」は、市町村や都道府県が主体となり、農林水産業、観光業、伝統工芸、部品加工など、地域固有の資源や産業基盤を活用した持続的な成長を促す。
政府は、これら3類型を支援するため、新たに「『強く豊かな日本』投資枠」を設定した。
現在、37自治体でB.地域産業クラスター計画が49件公表されており、高市早苗首相は自身のX(旧ツイッター)で、各地の産業クラスター計画や国家戦略特区と連携した取り組みを相次いで紹介している。
北海道では、帯広市を含む十勝地方の19市町村が国家戦略特区「十勝AI農業特区」に指定された。「AI・半導体戦略産業クラスター計画(北海道地域)」の一環として位置付けられており、地域の農業と先端技術を結び付ける取り組みとなる。
徳島県では、徳島県では、蓄電池関連企業の集積を生かし、これまで温めてきた「徳島バッテリーバレイ構想」を拡張・具体化する形で「蓄電池分野における地域産業クラスター計画」を策定した。既存の産業基盤を活用し、地域経済の成長を目指す。
福岡県北九州市では、製造・物流・インフラなどの産業現場に蓄積された重要データを強みとする「フィジカルAI」を重点分野とした産業集積を進める。
同市には長年にわたって発展してきた製造業の基盤があり、ロボット関連企業約300社以上が集積している。こうした産業基盤を生かし、「フィジカルAI分野における地域産業クラスター計画」を推進する。
新潟県と新潟市では、アニメーション制作業を対象とする地域産業クラスター計画を策定した。新潟は優れたクリエイターを数多く輩出してきた一方、制作業務が首都圏からの下請けに偏り、付加価値や人材が地域外へ流出するという課題を抱えてきた。
同計画では、こうした産業構造の転換を図り、新潟発の知的財産(IP)の創出を目指す。
一方、政府は地方の産業振興策を継続的に支援するため、年末に向けて「地域未来戦略実現フレーム」の策定を進めている。
具体的には、複数年度にわたる予算措置の確保、地方自治体の財政負担に配慮した支援制度、産業集積に必要なインフラ整備の優先措置、関係省庁を横断した投資・人材育成支援などを検討する。
インフラ整備では、既存予算とは別枠となる「地域未来特別枠」を設けるほか、各省庁の投資・人材支援策についても「地域未来分」として優先措置を講じる方針だ。
高市首相は「予見可能性の高い予算措置の下で、国と地方公共団体が二人三脚となり、日本列島に『産業クラスターの花』を咲かせていく」と呼びかけている。
地域未来戦略は、地方への一時的な財政支援にとどまらず、地域ごとの産業基盤や技術、人材を活用して国内全体の供給力と国際競争力を高めることを目的としている。
政府は産業クラスターの形成と継続的な投資支援を通じて、地方を起点とする経済成長の実現を目指している。
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