公式データによると、2026年上半期、中国のGDPは前年同期比4.7%増となった。一方、社会消費品小売売上高は同1.3%増にとどまり、両者の差はさらに広がった。
2025年はGDP成長率が5.0%、社会消費品小売売上高は50兆1202億元で、伸び率は3.7%だった。これにより、GDP成長に対する消費の寄与率は52.0%から44.68%へ低下した。当局が掲げる「消費の基礎的役割を十分に発揮する」という方針は、現実との乖離を改めて浮き彫りにした。
本稿では、4つの点からこの問題を論じる。
1 小売売上高が低迷 大都市で進む消費の二極化
月ごとの社会消費品小売売上高の伸びは非常に低調で、5月にはマイナス0.6%に落ち込んだ。6月も前年同月比でわずか1.0%増にとどまっている。

特に注目すべきなのは、一線・二線都市での消費低迷と構造的な分化である。高級ブランド品や高級商業施設では高額消費の失速が進み、外食業では高価格帯の外食離れが広がる一方、格安メニューが人気を集めている。
2026年上半期、一定規模以上の小売事業者のうち、ブランド専門店の小売額は前年同期比で8.7%の大幅減となり、百貨店も2.1%減少した。一方で、低価格と生活必需品需要に支えられたコンビニエンスストアとスーパーの小売額は、それぞれ6.6%、3.8%増加した。
この背景にある核心的な要因は、中間所得層の縮小である。かつて彼らを支えていた不動産価格の上昇期待や高額な年末賞与といった「資産が増え続けるという幻想」は崩れた。結果として、消費水準を自ら引き下げ、支出を生活必需品中心に切り替えざるを得なくなっている。
都市別に見ると、北京市の1〜5月の社会消費品小売売上高は前年同期比で2.5%減少した。全体としても、2026年5月の都市部消費は前年同月比0.9%減となり、市場全体をマイナスに押し下げた。6月の都市部消費品小売額は3兆6844億元で、前年同月比の伸びはわずか0.8%だった。上半期全体でも、都市部消費品小売額は21兆5506億元にとどまり、前年同期比1.2%増にすぎない。
これは、一線・二線都市を中心とする都市部消費が、強い縮小圧力にさらされていることを示している。
2 住宅ローンが異例の純減 家計の借り入れ需要が縮小
中国人民銀行の金融統計によると、2026年上半期の人民元建て融資は10.72兆元増加した。しかし、家計部門向け融資は3668億元減少した。その内訳を見ると、短期融資は5881億元減少し、中長期融資は2212億元増加した。
住宅ローンそのものが純減し、信用需要の弱さが鮮明になったことは、過去を振り返っても極めて異例である。
第一に、短期融資の大幅減少は、住民がクレジットカードやローンを使って高額消費をしたり、消費者信用を利用したりする意欲が著しく弱まっていることを直接反映している。
第二に、個人向け住宅ローンの新規貸出金利は3.1%前後という歴史的な低水準にとどまっているにもかかわらず、中長期の住宅ローン増加幅は極めて小さい。これは、不動産市場による景気下支え効果が限界に達し、返済や繰り上げ返済による住宅ローン残高の減少を十分に補えていないことを示している。
ここで、住宅ローンが人民元建て融資全体に占める割合の変化を見ておきたい。
1998年、中国で住宅制度改革が行われ、福利厚生としての住宅分配が終了した。これにより、商業ベースの個人向け住宅ローンが本格的に登場した。住宅ローンの普及と自動車など大型消費向け融資の導入に伴い、2007年には、住宅ローンが人民元建て融資残高全体に占める割合は、1998年の1%から15%前後へ上昇した。
2008年から2021年にかけては、急速なレバレッジ拡大とピークへの上昇期だった。「4兆元」の財政刺激策、不動産在庫の解消政策、バラック地区改造に伴う現金補償政策などを背景に、この割合は15%前後から32%前後へ急上昇した。2021年には新規融資が約8兆元に達し、過去最高を記録した。家計部門は銀行融資の最大の受け皿となった。
しかし2022年以降、不動産バブルの崩壊により、家計部門は自発的な債務圧縮局面に入った。住民向け新規融資は急減し、2022年2月には初めて単月で純減を記録した。個人向け住宅ローン残高は2023年、2024年、2025年と3年連続で純減となった。2025年には住宅ローンが0.67兆元の純減となっている。住宅ローンが融資残高全体に占める比率も、20%台の水準まで低下した。
3 家計預金の伸び鈍化 消費ではなく資産運用と返済へ
中国人民銀行のデータによると、2026年上半期の家計預金は7.58兆元増加した。ただし、前年同期と比べると増加幅は3.19兆元少なく、近年の同時期としては最低水準となった。
この間、4月には住民預金が1.94兆元と大きく減少し、5月にも0.11兆元減少した。住民預金が2か月連続でマイナスとなるのは、過去10年で見ても珍しい。
比較すると、2023年上半期には11.91兆元増と、同時期として過去最高を記録した。2024年上半期は9.27兆元増、2025年上半期は10.77兆元増だった。これは、ここ数年続いてきた「手元に資金があれば、とにかく定期預金に回す」という貯蓄熱が、明らかに冷めてきたことを示している。主な理由は、預金金利が「1%台」に入り、魅力が急落したためである。
しかし、減少した預金は消費に使われていない。資金は、低リスクの銀行理財商品、マネー・マーケット・ファンド、債券ファンドなどの資産運用商品に流れている。銀行理財商品とは、中国で広く販売されている資産運用商品を指す。これらの商品は現在、一般的な預金を上回る利回りを示すものが多い。
中国人民銀行のデータによれば、2026年上半期、非銀行金融機関の預金は4.65兆元増加し、前年同期より2.1兆元多く増えた。また、中国人民銀行調査統計司司長の閻先東は7月15日、国務院新聞弁公室の記者会見で、6月末時点の資産運用商品の総資産が124.8兆元に達し、前年同期比で12.7%増、年初から4.6兆元増加したと述べた。家計部門は依然として、資産運用商品への新規資金流入の主な供給源となっている。
さらに、一部の資金は「自発的な債務圧縮」に使われている。預金の満期を迎えた一部の住民は、その現金を住宅ローンの繰り上げ返済やその他の債務圧縮に充てた。これが、上半期に住宅ローンが3668億元の純減となった直接的な要因でもある。
4 約1億人が債務問題か 家計負担が中国経済を圧迫
中国の家計レバレッジ率、つまり家計部門の貸出残高がGDPに占める比率は60%前後で、一部の先進国に近い、あるいはそれを上回る水準にある。
しかも、中国では住民の可処分所得がGDPに占める割合が約43〜45%にとどまり、先進国の60%超を大きく下回っている。そのため、「家計債務と可処分所得の比率」で見れば、中国の実質的な家計債務負担はすでに110%を超え、アメリカを上回っている可能性すらある。さらに、この60%の債務圧力は、実際には住宅ローンを抱える若年層や中間層に大きく集中している。

近年、中国経済は悪化の一途をたどっており、住民の返済が滞った債務は急速に増えている。これはすでに、経済発展を妨げる大きな要因となっている。データの敏感性を考慮してか、当局は2023年の時点で、個人向け融資の延滞および債務不履行に関する集計データの公表を停止している。
ただし、関連する研究は存在する。調査会社Gavekal Dragonomicsは、26行の銀行財務報告書などを分析した上で、2025年末時点の中国家計の不良債務規模は2.22兆元に達したと指摘した。これは中国GDPの約1.6%に相当し、前年より21%増加して過去最高を更新した。また、約1億人の成人が債務の延滞または債務不履行の状態にあり、成人人口の約10.6%を占めるという。浙江大学金融研究院は、中国の金融機関が毎年処理を迫られる個人向け不良債権の規模が、2兆〜3兆元に達する可能性があると予測している。
不良債務は主に、「消費者ローン・オンライン融資」と「住宅抵当ローン」の2つに分けられる。前者には、クレジットカード、消費者金融、小口のオンライン融資が含まれ、近年、返済不能が最も速く増えている分野である。
アント・グループ、バイトダンス、美団などは、「利用条件が緩い」「30秒で融資可能」「最高30万元まで借り入れ可能」といった手軽な融資サービスを展開してきた。これにより借り入れのハードルは大きく下がり、将来の収入を見込んだ消費と借り入れ需要が刺激された。
しかし、この数年で経済情勢が悪化し、不良債務は急増した。中国最大の銀行である中国工商銀行を例にとると、2025年のクレジットカード債務の不良率は1ポイント以上上昇し、4.61%に達した。これは同行全体の不良率1.31%を大きく上回っている。
国家金融監督管理総局によれば、2026年第1四半期末時点で、商業銀行の不良債権残高は3.7兆元、不良債権比率は1.51%だった。表向きはなお管理可能な水準に見える。しかし、市場では実際のリスクは公式データより高いとの見方が一般的だ。一部の国際金融機関も、大手銀行の個人向け融資の実質的な不良率は5〜6%に達する可能性があり、中小銀行ではさらに高い可能性があると推計している。
結び
氷は一日にして厚くなるものではない。中国経済の冷え込みは、消費をさらに深く冷え込ませている。
もはや景気循環だけの問題ではない。より根本にあるのは、中国経済が抱える体制、政策、構造に根ざした深刻な問題である。本稿で取り上げた4組のデータは、その表面を描いたにすぎない。実際の状況は、さらに深刻である可能性が高い。

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