米ブラウン大学の教授がこのほど、今年3月に実施した中間試験で、少なくとも50人の学生がAIを使って不正をしたとみられる証拠を得たと明らかにした。教授は、この問題を放置すれば、AIが学術制度全体の根幹を揺るがしかねないと警鐘を鳴らしている。
著名な経済学者ロベルト・セラーノ氏は、ブラウン大学で34年にわたり教壇に立ってきた。スペイン紙「エル・パイス」によると、今年3月5日、同氏が担当する学部上級科目の数理経済学で中間試験が行われた。試験は自宅で受験する形式だった。
ところが、結果は異例だった。100点満点中、クラスの平均点は96点に達し、40人が満点を取った。
その後、採点担当者からセラーノ氏に対し、複数の答案がChatGPTで問題を解析して生成した内容と酷似していると報告した。AIを使って解答した疑いがあるという。
確認のため、セラーノ氏は期末試験を対面で、持ち込みを認めない形式に変更した。また事前に学生に対し、中間試験と期末試験の成績分布に大きな差が出た場合、最終成績は期末試験を基準にすると伝えた。
その結果、期末試験の平均点は48点に急落した。中間試験を受けた89人のうち、期末試験に出席したのは59人にとどまった。欠席した学生の多くは中間試験で高得点を取っており、そのうち22人は満点だった。
この結果について、セラーノ氏は「不正の実証は疑う余地がない」と述べた。
同氏によれば、34年の教員生活で自宅受験の試験を実施したのは今回が初めてだった。ブラウン大学では昨年12月13日、世界に衝撃を与えた銃撃事件が発生し、2人が死亡、9人が負傷した。学生の間にキャンパスに残ることへの不安が広がっていたため、自宅での試験実施を決めたという。しかし、その判断が大規模なAI不正につながったとみられる。
セラーノ氏はこの件を大学の学術規範委員会に報告し、学術的誠実性を守る価値観を改めて訴えた。
「高等教育の未来を守りたいのであれば、この決定的な戦いの中で、教職員を孤立させてはならない」と述べている。
AIはカンニングを助長
AIの普及は、高等教育の質にも影を落としている。
ChatGPTが初めて公開される2か月前にアメリカの大学に入学したある学生は、4年間の大学生活を通じて、同級生たちがAIの誘惑に抗えなくなっていく様子を目の当たりにしたと語った。
「AIによって、不正はこれまで以上に容易で、得をしやすいものになった。私の知る限り、大学の課題にAIを使ったことがない人はいない」
昨年秋に科学誌「Nature」に掲載された研究では、AIが利用者の道徳的責任感を弱める可能性が示された。人は自分だけに頼らなければならない場合、うそをついたり、無責任な行動を取ったりしにくい。一方で、行動をAIに委ねると、不誠実になりやすい傾向があるという。
セラーノ氏も、AIは学生の不正を助長しかねないとみている。そのため、この問題について本格的な議論を始めるべきだと訴えている。
「真実、正直さ、誠実さを守らなくなったとき、学者として私たちにどのような信頼が残るのか」。
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