ビリビリが造反したのか、そんな噂が中国のネット上で飛び交っている。
世論統制で知られる中共の指揮系統が、いまやめちゃくちゃになっているのだ。

中国の中堅俳優・于朦朧（アラン・ユー）の死に関する投稿は、事件直後から空前の厳しさで封鎖された。報道も投稿も一斉に削除され、彼の名は検索不能となり、その名を口にすることすら禁じられた。さらに「于」と同じ発音の「魚」や「魚のマーク」まで検閲対象となり、出演ドラマのキャスト表からも名前が抹消されるなど、まるで彼の存在そのものを消し去ろうとするかのような統制が続いている。

それほどの空前の封鎖環境の中で、なぜか中国の動画共有サービスBilibili（通称ビリビリ）だけは例外だった。「于朦朧」や「798芸術館（于が監禁されていた場所の一つとされる）」といった敏感なキーワードを検索すると、死因に疑問を投げかける内容の関連動画が拡散し続けている。まるで命令に逆らうかのような異常事態である。

「命令が真逆なんです。どちらに従えばいいのか分からない」。あるビリビリ元審査員がSNSで内部告発したところによれば、宣伝を統括する中宣部と、ネットを管轄する国家インターネット情報弁公室（網信弁）の指令がたびたび衝突し、現場は混乱に陥っているという。以前は両者の命令が衝突することは少なかったが、最近になって矛盾が急速に深まった。網信弁が新たな命令を出した直後に中宣部がそれを撤回するなど、まるで内部で綱引きをしているかのような状態だ。

「広めろ」「消せ」「やっぱり広めろ？」　命令がコロコロ変わる中国のネット検閲

「広めろ」「消せ」「やっぱり広めろ？」上から次々と飛ぶ真逆の命令。中国の検閲チームは右往左往？

元審査員は「全てが政治闘争の延長で、どの命令も国民のためではなく、上層部の権力争いのためだ」と証言し、さらにこう続けた。「今の世論操作はもうめちゃくちゃです。権力がぶつかり合い、商業が金で口を挟み、国民はただ弄ばれているだけです」

この「矛盾した指令」は、中共の宣伝体制が内部から崩れつつあることを示している。世論を完全に支配してきたはずの体制が、統制の限界をさらけ出している。

ファイアウォール（中国当局によるネット検閲システム）の向こうで命令がぶつかり合う。そんな異常な状況の中で、人々の間からは「いい兆しだ。この壁が倒れたとき、中国にもようやく朝が来る」という希望の声が静かに広がっている。

「ファイアウォールを壊せ」この呼びかけはいま、海外の華人社会で運動として広がっている。

沈黙と検閲に覆われた長い夜は、まだ終わっていない。
それでも「ファイアウォールを壊せ」と叫ぶ声が広がる今、その壁の向こうに新しい朝が見えている。

于朦朧事件

于朦朧事件は、中国の中堅俳優・于朦朧（ユ・メンロン／ユ・モンロン／アラン・ユー、37歳）が9月11日、北京の高級住宅で不審な死を遂げた事件である。（死亡日は9月9日前後であり、転落による死ではなかったとする声も浮上している）

警察はわずか1日で「酒に酔った転落事故」と発表したが、現場には不審な点が多く、どう見ても他殺を疑わせる状況が相次いで指摘された。事件直後から徹底した言論封鎖が行われ、関連投稿は即座に削除され、アカウント封鎖も相次ぐなど、前例のない検閲が行われた。

投稿の削除と報道の封鎖は、かえって人々の疑念を深めた。やがて中国国内にとどまらず、海外の華人社会にも波及し、民衆による「真相調査」が本格的に始動、事件の全貌を少しずつ明らかにしていった。分析の結果、于が長期間監禁され、虐待を受けた末に計画的に殺害された可能性が浮上。

さらに、権力者の性的要求を拒んだ報復や、上層部の儀式的な「いけにえ」、人体標本ビジネスや特権階級の犯罪隠蔽など、国家権力の闇を示す疑惑が次々と表面化している。事件は今も、中国社会の底に潜む恐怖と腐敗の象徴である。

中国俳優・于朦朧事件 止まらぬ波紋 市民調査が暴いた「国家の闇」

中国俳優・于朦朧事件。警察が動かぬ中、市民が一丸となって真相を追い始めた。国営ホテル、人体標本、臓器狩り…一俳優の死が暴いた「国家の闇」は、いま中国社会全体を揺るがしている。