みんなまだいるか。（大家都還在嗎？／大家还在吗？）

この一文が、いまも華人圏のSNSに、毎日のように投稿され続けている。
添えられるのは、決まって一枚の写真。
中国の俳優、于朦朧（アラン・ユー）の写真である。

彼が9月に墜落死したと公式に発表されてから、まもなく4か月になる。
公式発表では、亡くなった日は9月11日、死因は高所からの墜落とされている。
しかしこの説明には当初から疑問の声があり、実際の死因は別にあるのではないか、亡くなった日も11日より前だった可能性があるという説が、いまも根強く語られている。

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【特報連載】于朦朧事件　第2回「地上の沈黙～国家総動員の封殺～」

「于朦朧事件」連載第2回。沈黙を強いられる地上で何が起きているのか。世界では「Justice for Alan Yu（アラン・ユーに正義を）」の声が響いている。

当局はこの件について、墜落による死亡であり事件性はないとの公式結論をすでに出している。
その後も、異議や疑問を公にした市民を複数拘束し、見せしめとする動きが報じられたほか、
ネット上では関連する投稿や議論に対する検閲も続いている。

公式には、この出来事はすでに「結論が出た事件」として扱われている。
当局の側は、事件を終わったものとして処理しようとしてきた。

だが、それでも終わっていない。

華人圏では、特定の誰かが続けているのではなく、さまざまな人が日替わりで、
同じ写真と、同じ一文を投稿し続けている。

「みんなまだいるか」

これは抗議文でも、政治的主張でもない。
長い説明も、感情を煽る言葉もない。
それでも投稿には、多くの「いいね」が付く。

ここでの「いいね」は、単なる評価や賛同を示すものとは少し意味合いが異なる。
「私はまだいる」「忘れていない」という返事として受け取られ、
互いの存在を確かめ合う、生存確認のような役割を果たしている。

コメント欄に並ぶ言葉も短い。

「私たちはみんな、ここにいる」
「12月22日、まだいる」
「真相が明らかになる日を、今も待ち続けている」
「もちろん、ここにいる。光は闇に勝つ」

議論はほとんどない。
怒りをぶつけ合う言葉も少ない。
だが、人々は去らない。

（于朦朧の映像とともに「世界はあなたを忘れない」と添えられたYouTube動画）

ネット上には、こうした投稿が数多く存在する。
「本当に忘れられない。別れを受け入れられない」
「あなたがいてくれたおかげで、善良や美しさを見ることができた」。
どれも強い言葉ではなく、静かな感情をつづったものだが、数百件規模の反応が寄せられている。
声高に訴えるのではなく、日常の投稿の中で、そっと弔いと記憶を重ねていく。
そうした行為が、ネットのあちこちで続いている。

その執念は、弔いの行動にも表れている。

華人社会には、亡くなった人を弔う節目として、死後100日に法事を行う習慣がある。
線香をあげ、供え物をし、故人の魂を送る大切な区切りの日だ。

しかし于朦朧の場合、その「100日目」が定まらなかった。
実際に亡くなった日が分からないと、多くの人が考えているからである。
公式発表の9月11日を、そのまま信じていない人は少なくない。

そのため華人圏では、9月11日から数日さかのぼった期間、
どの日に亡くなったとしても弔いを欠かさないよう、毎日法事を行っていたという人も珍しくなかった。

一日を選ぶのではなく、すべての日を弔う。
そこには、別れを受け入れられないという感情と、
真相が語られていないまま終わらせたくないという意地が重なっている。

事件からまもなく4か月になる。

それでも、人々は去らない。
忘れない。
終わらせない。

声を荒らげれば封じられ、
問いを投げれば消される。
だから人々は、同じ写真と、同じ問いを、今日も静かに置き続ける。

――みんなまだいるか。

それは抗議ではない。
だが、意地でも終わらせまいとする執念である。

語られる日を待ち続ける人々が存在する限り、
この事件を終わらせることは許されない。
それが、いま華人社会に残っている、
静かで、しつこく、そして強い意地なのだ。