トランプ米政権は23日、対外援助事業を担う国際開発局(USAID)の職員約1600人を削減すると発表した。それ以外の国内外の職員の大半に対しては23日深夜から休暇に入るよう指示した。こうしたトランプ政権に対して世界の主要メディアは疑問視する態度を見せている。
なぜトランプ政権は貧困地域での人道支援や経済成長を支えてきたUSAIDの人員を削減したり、休職させるのだろうか。
指摘されてきたUSAIDの腐敗の問題
USAIDはこれまでに多くの成果を収め、特に1100億ドルを投じた「米大統領エイズ救済緊急計画(PEPFAR)」は2003年から現在に至るまで、世界中で2600万人の命を救ったとしている。
しかし20年前頃から、その運営には政府内で疑問視する部分があった。2003年、ジェスフォード元米国会計検査院(GAO)国際・貿易チーム長は「USAIDの予算と任務が拡大する一方で経験豊かな人員を削減しており、USAIDの対外支援プログラムに対する監督能力に疑問が投げかけられている」と警告した。
2009年には当時のオバマ大統領も連邦機関による業務の外部委託に言及し、「大幅なコスト超過、あからさまな詐欺行為、監督能力と情報開示の欠如などの問題がある」と警鐘を鳴らしていた。
最近も2023年、上院外交委員会トップのジム・リッシュ上院議員(共和党、アイダホ州)はガザ地区への資金援助に次のような質問を投げかけた。
「パレスチナ人はテロリスト集団と結託して彼らの利益を追求している」「なぜUSAIDは2億5千万ドルの追加支援を要求しているのか。背後にある利害関係は何か」
サマンサ・パワー元USAID長官はその質問に対して説明できなかった。
トム・コットン上院議員(共和党)は2024年にパワー長官への書簡で、「イスラエル、そしてアメリカの敵対組織にアメリカの資金が流れている。これは道徳的、戦略的な失敗であり、アメリカの納税者に対する裏切りだ。その意味でUSAIDは罪深い」と述べている。
政府効率化省(DOGE)を主導するイーロン・マスク氏は2月11日に記者団に対して、DOGEがUSAID内で「巨額の詐欺行為」を発見したと詳細を伏せて述べている。
「我々は2週間のうちに、おそらく数十億ドルを超える規模の不適切な資金移動を特定した。その額は想像できないものになるだろう」「そのほとんどは無能と不正が引き起こした」
USAID改革に対する職員の抵抗
政府内でもUSAID改革を試みる動きがあったが協力を得られなかったようだ。
2011〜25年まで上院議員を務めたマルコ・ルビオ現米国務長官は2月4日に記者団に対し、「我々は20年、30年にわたってUSAIDの改革を試みてきたが、一度も協力を得られなかった。議会にいる身として、基本的な質問に対しても一切回答を得られなかった」と語っている。
USAIDは、一部書類を機密扱いにしたり、連邦契約に関する情報を議会に提供することは連邦法違反だと主張することで、議会による監督を回避していたという。
USAIDで軍民協力業務を担当したマーク・モイヤー氏(2018〜19年)は、「役人が頭を捻らせて巧みに資金を隠そうとする組織だ」と指摘している。モイヤー氏は2月6日のFOXニュースのインタビューで、存在を確認できないUSAIDの計画が第一次トランプ政権の時に多数あり、それらが最近になって明らかになったと述べている。機密情報を公開したとしてUSAIDから解雇されたモイヤー氏は、「腐敗を暴露したことに対する報復行為だ」と語っている。
またその援助も疑問視するものが少なくないようだ。
マイケル・マコール下院議員(共和党)は、アメリカよりも保守的な国で「LGBTQIAプログラム」を支援したり、カトリックの政府に訴訟を起こしたり、チベット仏教の本拠地であるネパールで無神論を推進したりするなど、USAIDは自滅行為をしていると指摘している。
USAIDを支持する声
米上院民主党トップ、チャック・シューマー院内総務は議場で米政府効率化省(DOGE)の影響力を非難し、USAIDワシントンオフィス閉鎖の違法性を指摘している。
「我々の目には、選挙で選ばれていない陰の政府が連邦政府を強引に乗っ取ろうとしているように見える」
一方、マコール下院議員(共和党)は、「USAIDには国家安全保障のために果たすべき使命がある」「60年代に発足した当初の目的はソ連への対抗だった。我々はかつてのUSAIDの存在意義を取り戻す必要がある」と述べた。
2012年、ルビオ氏は米シンクタンク「ブルッキングス研究所」のパネリストとして「世界のあらゆる場所でアメリカの対外援助や人道支援を有効活用し、アメリカの影響力とリーダーシップの強化、および国益と理念の達成に貢献する必要がある」と発言していた。ジョニ・アーンスト上院議員(共和党)は資金援助先に対する独立調査を求めている。
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