米連邦地裁のタニヤ・チュトカン判事は2月17日、政府効率化省(DOGE) に対する一時的差し止め命令の発令に慎重な姿勢を示し、まだ最終判断を下していない。
この訴訟は、15州の司法長官がDOGEが政府の無駄削減や連邦職員の削減を進める過程で権限を逸脱したと主張したことに端を発している。
ワシントンD.C.地裁のタニヤ・チュトカン判事は、この主張に懐疑的な姿勢を示し、2月18日夕方までに最終判断を下す予定だ。
「DOGEは無駄を削減するために設立された機関であり、その活動は権限の範囲内にある」と、チュトカン判事は2月17日の審理で述べた。
トランプ氏、DOGE、イーロン・マスク氏を相手取った訴訟
この訴訟は、トランプ大統領、DOGE、そして同機関を率いるイーロン・マスク氏を被告として提起された。
原告はニューメキシコ州、アリゾナ州、ミシガン州、カリフォルニア州、コネチカット州、ハワイ州、メリーランド州、マサチューセッツ州、ミネソタ州、ネバダ州、オレゴン州、バーモント州、ロードアイランド州、ワシントン州の14州。
原告側は、トランプ氏がDOGEを設立し、マスク氏を長官に任命した際に議会と協議しなかったことが、憲法の「任命条項(Appointments Clause)」に違反すると主張している。
DOGEは、トランプ氏が大統領就任初日に設立した機関で、従来の「米国デジタルサービス(U.S. Digital Service)」 の名称を変更する形で設立された。同機関は、「テテクノロジーとデザインを通じてアメリカ国民により良い政府サービスを提供する」を目的としている。
原告側、制限措置を縮小
原告側は当初、公的資金の支出変更、政府契約の取り消し、規制や改正の撤回、または法で設立された機関の解体や支配を禁じるなど、DOGEの活動に対して11項目の制限措置を求めていたが、2月14日の審理後に裁判所の要請を受け、2つの制限措置に絞り込んだ。
この命令が認められれば、人事管理局をはじめ、保健福祉省、運輸省、商務省、教育省、労働省にも適用されることになる。
DOGEの影響と裁判所の見解
原告側は、DOGEの方針による影響は即座には取り消せないとし、DOGEがアメリカ疾病予防管理センターの予算削減を提案したことが、ニューメキシコ州のインディアン・ヘルス・サービスに影響を与える可能性があると主張した。
これに対し、チュトカン判事は「裁判所はメディア報道を根拠に判断することはできない」と指摘。
原告側が「さらなる被害の具体例を明らかにするために時間を要する」と述べたことについて、一時差し止め命令の必要性を損なうものだとの見解を示した。
また、この種の禁止命令を申請するには、各州に「極端」かつ「差し迫った」損害(政府プログラムの停止や職員の解雇など)が存在し、それが「不可逆的」であることを証明する必要があると述べた。「現時点では、被害の多くがまだ発生していない」とも指摘した。
DOGEによる大規模解雇の有無を確認
審理の中で、チュトカン判事は司法省の弁護士に対し、DOGEや他の政府機関で大規模な解雇が行われたか、また今後予定されているかを確認するよう求めた。しかし、司法省の弁護士はその場では即答できなかった。
「14日に数千人の職員が解雇されたかどうかを確認することは、私にとって非常に重要だと思っている」と判事は述べた。
また、トランプ政権が今後数週間以内に大規模な解雇を実施しないことを保証できるかを司法省の弁護士に問いただしたが、弁護士は「政府機関を代表してその約束はできない」と回答した。
さらに、司法省の弁護士は、これまでの解雇は適切な手続きを経ており、各機関の責任者によって承認されていると説明した。
原告側の懸念と政府の反論
原告側の弁護士は、DOGEが政府機関のデータにアクセスすること自体よりも、そのデータが職員の解雇や部門閉鎖に利用されることを懸念していると主張した。
これに対し、政府側は、この発言は原告側の主張の一貫性を欠いていると指摘。「一時差し止め命令はDOGEのデータアクセスを制限することを目的としているが、原告側が懸念しているのはその利用方法であるならば、訴訟の半分は無意味になる」と反論した。
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