日産自動車はホンダとの経営統合を断念し、構造改革の行方に注目が集まっている。同時に、日産グループのサプライチェーンに属する中小企業の経営が厳しい状況にあることが明らかとなった。東京商工リサーチ(TSR)の調査によれば、日産グループと取引する国内の1次中小サプライヤーのうち4割が減益で、4社に1社が赤字に陥っている。
売上高は増加するも、利益は減少
調査対象となった1次中小サプライヤー1060社の売上高は最新期(2023年度)に3兆6034億円と前期比7.3%増加。しかし、最終利益は1133億円で、前々期比8.3%減少した。一方で、資本金1億円以上の大企業では、売上高が21.4%増、利益は69.0%増と大幅に成長。中小企業と大企業の業績格差が浮き彫りとなった。
中小サプライヤーの構成と利益状況
日産グループの中小サプライヤーの売上高別構成を見ると、10億円未満の企業が49.4%を占め、小規模な企業が多いことが分かる。利益面では、最新期における黒字企業の割合が84.7%と改善の兆しはあるものの、赤字企業が15.2%存在し、依然として厳しい経営環境が続いている。また、減益企業は全体の40.8%を占め、業績悪化が目立つ。
自動車業界の変化とサプライチェーンの再編
自動車業界では電動化や自動運転技術の進展により、環境が激変している。完成車メーカーのみならず、サプライヤーにも再編の波が押し寄せつつある。地域密着型の中小サプライヤーは、地銀の支援を受けて再編が進みにくい構造にあるが、国内のファンド関係者は「ファンドを活用した再編が選択肢になり得る」としている。
日産の課題と今後の展望
日産グループの中小サプライヤーの中には、すでに経営が悪化している企業も見受けられる。これらの企業を支えるべき日産自体も構造改革の途上にあり、サプライチェーン全体を俯瞰し再編を進める余力が問われている。業界全体での再編が迫る中、日産グループがどのように対応するかが注目されている。
日産グループのサプライチェーン再編の動きは、近い将来、さらなる動揺を引き起こす可能性がある。サプライヤーとの共存共栄の実現に向け、日産がいかに舵を取るかが問われる局面だ。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。