田中角栄の最後の弟子 石破茂首相の対中戦略は

2024/10/08
更新: 2024/10/08

中国共産党(中共)が近隣諸国への脅威を増す中、石破茂新首相は米国、台湾、オーストラリアなどの同盟国との団結を主張している。中国共産党を阻止するために。これは、数十年にわたって冷たかった日中間の関係を打ち破り、北京当局との国交を樹立しようとした石破首相の師、田中角栄のアプローチとは著しく対照的である。

9月27日、自民党の石破茂元幹事長が決選投票で高市早苗経済安全保障担当大臣を破り、第28代自民党新総裁に選出され、第102代総裁に就任し、10月1日には臨時議会が開催され、首相に任命された。

石破氏、中共に対する抑止戦略を採用

石破茂氏から任命された中谷元防衛大臣は月曜日(10月7日)、防衛省でサミュエル・パパロ米インド太平洋軍司令官と会談し、日米間の指揮統制を強化することを確認した。自衛隊と米軍の指揮統制枠組みを改善し、協力を強化した。

岩屋毅新外相は同日、オーストラリアのペニー・ウォン外相と就任後初の電話会談を行った。日豪外相は「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、安全保障を含む幅広い分野で協力することで一致した。

石破氏はまた、中共と戦うためにオーストラリアや南太平洋諸国との協力を強化したいと考えている。

共同通信社が月曜、事情に詳しい関係者の話として、日本政府は太平洋の島国における通信インフラの強化に向けて米国やオーストラリアと協力する予定であると報じた。台湾と国交を結ぶツバルやパラオなどが支援対象となり、海底ケーブルの敷設に加え、データセンターなどの陸上通信施設の建設も推進する。こうした動きは太平洋における中共の影響力に対抗することを目的としている。

以前、石破茂氏が首相に選出されるわずか1か月半前、国会議員として台湾を訪問し、中華民国の頼清徳総統と会談した。同氏は「今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない。東アジアが明日のウクライナになるのを防ぐために我々は知恵を出し合わなければならない」と語った。

石破茂氏の心配も無理はない。ロシアがヨーロッパで戦争を引き起こし、ウクライナに侵攻していたちょうどその時、中共は台湾を「統一」すると脅した。 アメリカのNBCによると、中共(中国共産党)党首の習近平は昨年12月、サンフランシスコでの首脳会談でバイデン米大統領に対し、中国は台湾と中国本土の統一を達成すると述べたが、具体的な時期はまだ決まっていないと伝えた。

中共は東シナ海でも日本と頻繁に領土問題を起こしている。 8月27日、航空自衛隊は九州南西海岸の男女群島上空で中国のY-9偵察機が2分間旋回しているのを発見し、戦闘機を緊急発進させた。中共航空機に領空から離れるように警告した。

日本軍によると、2023年4月~2024年3月に日本の緊急発進は669回近く行われ、そのうち約7割が中共軍機に対するものであった。

2022年11月、習近平は中央軍事委員会の統合作戦指揮センターを視察した際、軍に対し「全力を戦闘に集中し、戦闘に懸命に取り組む」よう求めた。

石破氏は頼氏に対し、「同じ価値観を共有する日本と台湾の間で地域抑止力を確保し、経済発展を促進し、すべての人の安全と安心を確保できることを期待している」と語った。

石破氏は台湾訪問時に「中国(中国共産党)に武力行使しても成功しない、あるいは莫大な代償を払うことになると認識させることが非常に重要だ」とも語った。

石破氏は米国との同盟強化を目指す

石破氏は米国との同盟強化にも期待している。

石破氏は首相に選出された翌日、ジョー・バイデン米大統領に電話し、前任者とバイデン氏が強化してきた二国間同盟をさらに強化する意向を表明した。

石破氏は10月2日、バイデン氏との電話会談後、記者団に対し「岸田文雄前首相とバイデン大統領は日米同盟を大きく強化した。この政策を引き継ぎ、さらに強化していきたいと述べた」と語った。前日、石破茂氏は官邸で記者団に対し、日米同盟の向上に向けた具体的なビジョンを表明した。

石破氏は現在の日米同盟を「非対称」と呼び、日本の米軍基地と日本が所有する米国の基地を共同で管理したいとの意向を表明したが、それには二国間軍事協定の変更が必要となる。

ハワイの米太平洋軍(米インド太平洋軍)統合情報センターの元作戦部長カール・シュスター氏は大紀元に対し、アメリカは石破氏の提案の一部を採用すると信じていると語った。

「なぜなら、日本は駐留米軍の経費の70%以上を支払っているからだ。これは、ほとんどの同盟国が私たちに基地の家賃を請求しているヨーロッパの同盟国とはまったく対照的だ」

シュスター氏は「私が沖縄に駐在していた間、維持費や建設費を払ってもらっていたので分かった」
と述べ、日本が在日米軍基地の家賃と維持費を支払っていることを明らかにした。

田中角栄の後押しで石破氏政界入り

石破茂氏の中共抑止戦略は、彼の政治指導者である日本の第64代と第65代首相の田中角栄の対中路線とは全く異なる。

石破茂氏の父、石破二郎氏は上院議員、鳥取県知事、田中角栄の親友だった。 1981年に父が死去すると、葬儀委員長を務めていた当時三井銀行に勤めていた石破茂氏が田中角栄を訪ね、感謝の意を表した。田中角栄は石破茂氏に衆院選への参加を説得し、「訪問世帯数で票数が決まる」というカラクリを教えた。

石破茂氏は1986年の衆院選に立候補し、地元5万4千世帯を訪問し、最終的に5万6534票を集めて当選し、「田中角栄最後の弟子」と呼ばれた。

田中角栄は中国との国交樹立を推進した日本の首相だった。組閣からわずか2か月後の1972年9月29日、田中角栄は北京との正式な国交樹立を発表した。当時、日本では大きな反対があり、田中角栄が中国へ出発する前日、自民党内の一部のタカ派が田中の自宅に押し入り、彼の北京行きを阻止しようとした。

田中角栄は北京と国交を樹立することを決意したが、中共の働きかけや融和的な姿勢が無関係ではない。

田中角栄に事態の打開を求めた中共 日中関係は半世紀で大きく変化

土地改革、三反五反、大躍進、文化大革命を経験した中国経済は悲惨な苦境にあり、外部の資本と技術を緊急に必要としていた。一方で、日本経済は第二次世界大戦終結からわずか 33 年後の 1978 年には年平均成長率が 10% 近くに達し、世界第 2 位の GDP (国内総生産)を達成していた。

1978年10月、当時の副首相であった鄧小平が異例の東京訪問を行い、日本を訪問した最初の中国共産党最高幹部となった。

鄧小平は日本の家電大手パナソニックを訪問した際、同社の創業者で会長の松下幸之助氏に「あなたは日本では経営の神様として知られている。中国の近代化促進に協力してくれないか」と懇願した。

鄧小平は望んでいたものを手に入れた。パナソニックは、中国人技術者250人を同社の茨城工場に半年間招き、製造技術や経営を学び、その後、これらの技術者は北​​京のブラウン管の合弁製造工場のリーダーとなった。

さらに、鄧小平の新日鉄君津工場訪問が中国での宝鋼の設立につながった。また自動車メーカー訪問は、日中間の多くの合弁事業につながり、現在、中国で販売されている自動車ブランドの上位 5 社のうち 3 社を占めている。

しかし、鄧小平の訪日から40年以上が経ち、習近平が鄧小平の「韜光養晦(才能を隠し、実力を蓄える)」政策を放棄し、覇権を争う意図を明らかにしたことで、中国共産党と日本の関係は悪化した。

日本政府は昨年7月、最先端の半導体製造装置など23品目を輸出規制の対象に挙げた。これは実際、2022年10月に米国が対中輸出管理を強化する措置と一致している。最先端の半導体製造に必要な洗浄、露光、検出装置などを中国が輸入することは困難になった。

その一方で今年8月26日、中共のY-9偵察機が長崎県の男女群島沖付近で日本の領空を侵犯した。

9月18日、空母「遼寧」と他の中国海軍艦艇2隻が台湾に近い沖縄県の与那国島と西表島の間を航行し、日本の接続水域に入った。その同日、深セン市の日本語学校に向かう途中、10歳の日本人男児が44歳の中国人の男に刺殺された。

事件後、半世紀前に中国での工場建設を支援するため200人以上の技術者を中国に派遣した日本のパナソニックグループは、日本人従業員とその家族の日本への一時帰国申請を認めると発表した。東芝や日本の自動車大手トヨタなど多くの日本企業も、中国にいる従業員に対し、警戒を怠らず安全に注意を払うよう呼び掛けている。この事件は日本企業の中国撤退を加速させるのに影響する可能性がある。
 

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
韓江
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