4月3日から施行されるトランプ大統領の新関税は、米国製造業復活と貿易不均衡是正を目指し、世界経済に大きな波紋を広げる。この政策の背景や影響を詳しく解説しよう。
施行されるアメリカの新関税は、なぜこれまでとは異なるのか? トランプ大統領の主な目標は四つあり、主流派のエコノミストは、ほとんど誤っている。
どの産業が恒久的に変わるのか? 米国と中国への影響はどうなるのか?
世界市場の混乱 トランプ大統領の新関税は何が異なるのか
今週、トランプ大統領の新関税が施行され、世界の資本市場は、前例のない乱高下の時期に突入した。3月30日、トランプ大統領は、エアフォース・ワンで記者団に対し、「すべての国から始まる」と語り、「切り捨てはない」と強調した。
数日前の発言とは大きく異なる。トランプ大統領は以前、多くの国を除外する可能性があると述べていた。スコット・ベッセント米財務長官も、米国と貿易不均衡が続く15か国、いわゆる「ダーティ15」が関税の影響を最も受けるだろうと述べていた。
過去(例えば、2018~19年にかけての中国との貿易戦争)と比較して、新たな関税には、四つの重要で本質的な違いがある。
1.前例のない範囲
トランプ大統領の第1期の関税は主に中国(約3700億ドルの商品)を対象としていたが、新たな相互関税はカナダ、メキシコ、欧州連合(EU)、日本など、アメリカの主要貿易相手国すべてを網羅している。ロイターによれば、これにより輸入総額が2兆米ドル以上に影響を及ぼすとされる。
さらに、トランプ大統領の通商・米国製造アドバイザーであるナバロ氏は、増税の範囲や規模がさらに拡大する可能性があると指摘している。3月30日にFOXニュースで彼は、「自動車関税だけで約1千億ドルを調達できる」と述べ、「その他の関税」によって「年間約6千億ドル、10年間で10兆ドルが追加される」と語った。
2.法的根拠と執行の違い
トランプ大統領は、新たな関税措置を発表し、「1962年の通商拡大法」232条(国家安全保障)および「1977年の国際緊急経済権限法」(IEEPA)を発動して、議会を迂回した。これは第1期よりもさらに議論を呼び、企業に移行期間を与えず、一部企業には適用除外もない。
また、トランプ大統領は4月2日を「奴隷解放記念日」と称し、妥協しない意志を示している。
3.複数の地政学的・経済的目的
新しい関税の目的は、大きく変化した。第1期では中国への関税は、経済に焦点を当てていたが、最近の中国、メキシコ、カナダへの関税は、フェンタニル麻薬と国境の不法移民を狙ったものである。
新たな関税の目標は、より包括的かつ複雑であり、トランプ大統領の四つの主要な目標を網羅している。
第一に、貿易不均衡解消が急務である。国際貿易を学んだ者なら、一国の対外的な目標には、貿易バランスが不可欠であり、それが欠ければ貿易戦争勃発という危険性が理解できるだろう。しかし過去数十年、多くの国が、アメリカ製品輸入を避けつつアメリカへの輸出増加に慣れてしまった。この状況は長期的には持続不可能である。アメリカは、現在36兆ドルに達する国家債務に依存し、世界的消費高水準維持してきたため、その規模を縮小せざるを得ないのだ。
トランプ大統領によれば、貿易不均衡や不平等な関税・非関税障壁撤廃こそ、他国によるアメリカ利用阻止という決意表明である。3月31日ホワイトハウスのレビット報道官によれば4月2日ホワイトハウスローズガーデンイベントで相互関税措置の発表予定。
「何十年もの間、我が国を搾取してきた不公正貿易慣行を撤廃するための関税プラン発表」「今こそ歴史的変化をもたらし、アメリカ国民のために正しいことする時」レビット氏はさらにEU、日本、インド、カナダの関税率を引き合い出し、「これらの市場は米国製品輸入を事実上、不可能にしてきた事と、過去数十年も多くアメリカ人の破産、失業を招いてきた」と、述べた。
新関税の第二のターゲットはアメリカの製造業である。これはフェンタニル問題に似て非なるものであり、産業をアメリカに回帰させることを目指している。理論上、フェンタニル問題が解決すれば、中国、メキシコ、カナダへの関税は撤廃される。
トランプ大統領の三つ目の大きな目標は、アメリカにイノベーションを取り戻すことである。ヴァンス副大統領は最近、グローバリゼーションがアメリカのイノベーションを損なっていると指摘し、「私たちが製造している場所では、デザインに優れているようになる」と述べ、「安価な製品に依存する習慣が、アメリカのイノベーションを損なっている」とも、語った。
トランプ大統領の新関税の第四の目標は、アメリカの敵を攻撃し弱体化させることである。トランプ2.0の関税は多くが中国共産党を狙っており、トランプ大統領は追加関税を考案している。ベネズエラの石油購入に25%の関税を課すと脅し、イランが核兵器放棄の取引に署名しない場合には、イランの石油購入にも同様に25%の関税を課すとした。これらの追加関税の対象には中国共産党も含まれていた。
追加関税はすでに効果を上げている。30日にエアフォース・ワンでトランプ大統領は、「(石油を委託するためにベネズエラに行った)船はすべて去った」と、述べた。
一方、悪の国際連盟は、金銭で結ばれ、国内で国民を弾圧し、対外的にはテロリズムを輸出している。彼らの石油パイプラインが断たれれば、世界はより平和になると考えられる。
トランプ大統領は今後、追加関税制裁をさらに強化する見込みである。要するに、4月3日から始まるトランプ大統領の新関税の主な目的は、交渉ではなく、アメリカの製造業やイノベーション、貿易収支を促進し、中国共産党やイランなどアメリカの敵を攻撃することである。
ナバロ氏は「関税は史上最大の減税である」と述べており、この政策がアメリカンドリームを再発明するものであると主張した。
主流のエコノミストたちは間違い ナバロ氏:「関税は史上最大の減税である」
したがって、関税は、アメリカが他国と交渉するための手段に過ぎないという古い考えに固執する者がいるならば、その者は時代遅れである。マイク・ペンス元副大統領は、「関税は中国のような国を交渉に参加させる良い手段であるが、自由貿易は商品のコストを下げ、すべてのアメリカ人の生活の質を向上させる」とソーシャルメディアXに投稿した。ペンス氏の認識は誤りである。トランプ大統領の新関税は、アメリカンドリームを再発明するものである。
今月初め、スコット・ベッセント財務長官は、ニューヨークのエコノミック・クラブでのスピーチで、「安価な商品へのアクセスは、アメリカンドリームの本質ではない」と述べた。NBCのインタビューでは、繁栄の本質について「中国製の安いガジェット(小道具や小物を意味する)」を買うことではなく、真のアメリカンドリームは「薄型テレビを見ること」ではなく、外国との競争に打ち勝つ良い仕事と、家を購入できる高い賃金を得ることであると強調した。
大多数の経済学者は、同じ誤りを繰り返している。最近の主要メディアでは、トランプ大統領の新関税が、米国にインフレと不況をもたらし、他国からの報復や世界の混乱を引き起こすといった報道が目立つが、実際、トランプ大統領の1期目において、主流派のエコノミストたちは対中関税がインフレを引き起こし、アメリカ経済に悪影響を及ぼすと予測していた。しかし、トランプ大統領の1期目の消費者物価指数は平均1.3%で、過去数十年で最低の水準となり、アメリカは高成長と低失業率を実現したのである。
では、なぜ彼らは誤ったのか。その理由は以下のとおりである。
1.企業が利幅を縮小し、サプライチェーンをシフトすることで値上げを回避する能力を過小評価した。
2.全体主義国家の利益への適応力を過小評価した。
アメリカは世界最大の購買力を持ち、誰もアメリカ市場を失いたくない。トランプ大統領1期目では、中国共産党は通貨切り下げによって関税の一部を吸収した。トランプ2.0では、20%の新関税に直面した中国共産党が耐え、輸出還付金を増やして対応する可能性が高い。
3.自由貿易を過信するのは誤りである。
経済理論は、国民を中心に据えるべきであり、もしそれが国や国民に利益をもたらさないなら、理想的なモデルや「世界連邦」は、支配者や特定の利益集団の祭りに過ぎず、大多数にとっては悲劇となる。ここ数十年のグローバリゼーションで、最大の恩恵を受けたのは中国共産党(CCP)と少数の支持者であり、大多数の国民はその恩恵を享受していない。中国では、経済発展と技術進歩が中国共産党に人民を支配・弾圧する力を与え、大規模な臓器狩りや新疆ウイグル自治区の強制収容所、香港での人権弾圧といった犯罪を引き起こした。現在、中国共産党は、その専制的な支配を台湾に輸出し、アメリカを倒して、世界にその影響を広げようとしている。
4.トランプ政権の政策の包括性が過小評価されている。
トランプ大統領が導入したのは単なる関税ではなく、複合的な施策の数々である。関税の負担を軽減または相殺するために、国民や企業への減税を行い、経済成長を促進し、雇用と所得を増加させるために3兆ドル以上の投資を誘致し、消費者物価指数(CPI)の大部分を占める石油や食料の価格を引き下げ、インフレを大幅に抑えることが求められている。
3月30日、ナバロ氏は、関税が通常消費者の物価上昇につながるという番組MCのブリム氏の指摘に対し、「トランプ大統領を信じろ」と力強く答えた。ナバロ氏は、トランプ大統領の最初の任期中も経済学者たちが誤っていたことを指摘した。
また、関税は「米国史上最大の減税」になるという衝撃的な発言をした。「シャットダウンは減税であり、雇用、国家安全保障、そしてアメリカを再び偉大にするものである」と述べた。混乱したブリム氏は、ナバロ氏にその理由を説明するよう求めた。
ナバロ氏は、関税が政府の歳入を増やし、納税者に利益をもたらすと説明した。自動車関税だけで約1000億ドルの増収が見込まれると言う。
「新税制法案を成立させる必要があり、アメリカ車を購入する人々には、減税や税額控除を提供するつもりである」
と、強調した。
数日前、トランプ大統領は、アメリカ製自動車を購入する消費者に減税を行うと発表した。これにより、自動車メーカーは、囚人のジレンマに直面する。海外生産を続ければ赤字に陥り、値上げすれば購買意欲が低下し市場を失うことになる。結局、賢明な選択は、米国内に工場を設立し、値上げを避けることで関税を回避し、トランプ政権の国産車への補助金で、利益を増やすことである。
3月30日、トランプ大統領は、関税が自動車メーカーの価格上昇を引き起こすことを「気にしない」と記者団に語りつつ、「価格を上げてほしい。そうすれば、人々はアメリカ製の車を買うだろう」とも述べた。しかし、自動車メーカーであれば、どのように行動すべきか。
もちろん、マスク氏の政府効率化省が、政府支出を大幅に削減し、減税の効果が現れるまでには時間がかかるため、短期的には消費者心理に影響が出る。しかし、これは一時的な現象であり、経済的な観点から見ればリセッション(持続的かつ構造的な景気後退)ではないことは明白だと言う。
5つの戦略産業が米国に戻ることで、中国経済は深刻な混乱に直面
では、トランプ大統領の新関税のもとで、どの産業が世界的な構造調整を引き起こすのか。5つの主要産業が米国に回帰すると予想される。
まず、自動車産業について触れよう。
1.自動車産業。カナダやメキシコの多くのアメリカ企業が、アメリカに戻ってきており、ヨーロッパや日本の企業も、アメリカでの工場設立を増加させている。実際、多くの企業がアメリカに工場を設立しているが、メキシコなどの生産コストが低いため、稼働率が、完全には活用されていなかった。これが、自動車に対する関税が、主流の経済学者が言うほどの影響を及ぼさない理由の一つであり、稼働率の移行は予想以上に早く進むと考えられる。
2.半導体とAI産業。トランプ大統領は、軍事や国家安全保障、さらには将来の技術競争力のために、最先端チップの復活を確実にしたいと考えている。サプライチェーンはアジアからアメリカへとシフトしている。
3.鉄鋼とアルミニウム。これらは製造業の基盤を支える重要な素材であり、自動車、軍事、造船産業の復活が求められ、米国が3月12日から導入した25%の世界的関税により、生産能力が集約され、輸入依存度は低下した。
4.医薬品と個人保護産業。3年間のパンデミックからの最大の教訓は、医薬品が中国共産党に支配されていることだ。これにより、トランプ2.0は医薬品の現地化を加速し、インドや中国への依存を減少させるところだ。すでに、ジョンソン・エンド・ジョンソンやイーライ・リリーが、中国以外の現地投資を拡大する動きを見せた。
5.造船産業。現在、中国の造船所は、年間1700隻以上の船舶を生産し、世界市場の50%以上、コンテナ生産の95%を占めている。米国は、中国が(戦時中のように)輸送を遮断すれば、輸出入が麻痺することを懸念していて、さらに、造船能力の不足は、米国の海軍計画を遅らせ、国家安全保障を脅かしているのだ。
このような状況のもと、アメリカの一部の産業は復活する。製造業には経済乗数効果があり、1ドルの製造業生産高は約2.0~2.6ドルのGDP(国内総生産)成長をもたらすというデータがある(米国製造業協会と米商務省のデータ)。
この産業のシフトと再編成の過程で、最も影響を受けるのは中国であり、市場の喪失、サプライチェーンの移行、イノベーションの衰退が懸念されて、さらに米中対立が激化すれば、中国の対外貿易黒字の減少や対中外資の急速な喪失も加速するに違いなく、中国の外貨準備高は、危機に直面する可能性がある。
今後の2年間は、中国共産党にとってさらに厳しい時期になる。経済の急速な衰退とともに、社会的・政治的不安定が訪れることが予想される。
次に何が起こるのか、注目すべきだ。
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