中国浙江省温州市の病院で19日午後1時過ぎ、医療事故により家族を失った患者家族が医師をナイフで襲う事件が発生。襲われた医師は死亡が確認された。襲撃後、加害者は病院3階から飛び降り、加害者の生死は不明だ。
中国メディアによると、事件が起きたのは、「温州医科大学付属第一医院」、襲われたのは心血管内科の李晟医師だ。
事件当時の様子を捉えた動画には、白衣を着た医師にしがみついて離さない男の姿があった。男は医師に向かって複数回ナイフで刺し、医師はもがきながら「助けて!」と叫んでいた。その後、男を振り切って診察室から脱出した医師の顔には大量の血が付着し、身に着けていた白衣も赤に染まっていた。
別の動画のなかには、猛スピードで救急室を目指すストレッチャーの上に横たわる医師の姿があった。直後、動画は病院フロントの地面に横たわる男性を映したシーンに切り替わった。
動画撮影者によると、病院のロビーに横たわる「生死不明な」この男はさっき医師を襲った張本人だという。医師を切りつけた後、病院の3階から飛び降りたのだ。
「患者家族が医師を襲い飛び降りる」
関連ニュースはSNSで拡散され、物議を醸している。
患者家族が医師を襲った動機に関しての公式発表はないが、関連トピックスのコメント欄には関係者と思われるユーザーによる次のような状況説明があり、広く拡散されている。
「飛び降りた男の家族がこの病院で医療事故に遭った。男は以前に横断幕を掲げるなどの抗議をしてきたが、一向に解決されない。そこで、怒った男はこのような極端な方法を取った」
このほか、「病院関係者のチャット記録」のスクリーンショット画像もSNSに流れており、それによると、「男は襲う相手を間違えた」という。男の親族が命を落とした手術を執刀したのは今回襲われた当直医師とは別人だというのだ。
「医療紛争」年間1万件以上
近年、中国各地で病院に不満を持つ患者家族による医療関係者への襲撃事件が相次いでいる。
この事態について、東南大学(江蘇省)法学部の張讚寧教授は次のように指摘している。
「病院は国からもらえる予算は非常に少ないため、職員給料の支払いなど90%以上のお金は病院自身で稼がなければならない。そこで少しでも儲けを出すため、医師は過剰に薬を処方し、必要のない検査をさせる。その結果、医徳低下(医療道徳、医師の備えるべき道徳)に繋がり、医師と患者との間のトラブルが絶えない」
「幼い時から『闘争』といった中国共産党による党文化の教育を受けてきたことと関係している」
中国の社会活動家の胡佳氏は、「医師という職業を選んだ人の多くの初心は人助けだったはず。しかし、共産党体制の下であまりに多くの様々な社会矛盾が蓄積されてきた。人は病気になり、それが絶望に変わった時、医師にその怒りの矛先を向けてしまう」
中国当局による公式データによると、中国では毎年1万件近い医療紛争が発生しており、70%の病院で患者による医療関係者への暴行、脅迫、罵りの事件が発生しているという。
「中国共産党政府が発表する公式統計は信用できない」のはもはや常識。そのため、実際の状況はもっと深刻な状況である可能性もある。
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