「警察=正義の味方」、これは文明国家では一応、常識である。しかし中国の場合、必ずしもそうではない。
中国共産党による長年にわたる腐敗統治の結果、「正義よりカネ」に走る警察関係者も残念ながら少なくない。陳情者や人権活動家、被害者遺族といった警察から弾圧を受けている市民からすれば、警察は悪魔の手先そのものである。そのため、「警察が刺された」といったニュースが報じられると大歓声が沸き起こるケースは近年、多々ある。
しかし、今回の事件で殉職になった警官は犯人逮捕中に犠牲になった。
今月1日、中国湖北省武漢市にある警察拠点「漢興派出所」の副所長である邱建軍氏(50歳)は容疑者逮捕中にナイフで15回刺されて死亡した。この殉職事件について中国メディアは取り上げているものの、容疑者の男、馮(29歳)の動機については明らかにされていない。
中国メディアによると、6月1日未明、武漢市公安局は「ホテル前でナイフを持った男が人を切りつけようとしている」との内容の110番通報をうけた。男はその後逃走し、自宅に立てこもった。邱副所長率いるチームは男の自宅へ赴いた。
容疑者宅は最初施錠されており、警察が呼びかけると、数分後、逆上した容疑者はドアを突然開け、警官に対して狂ったように切りつけてきたという。
警官たちは盾、警棒などで武装していたが、ものすごい勢いで切りつけてくる容疑者に押され後退するしかなかった。現場にいた複数の警察官が切りつけられて負傷するなか、邱氏は容疑者ともみ合いをしている間に首や腹部など15か所を刺され、その後出血多量で死亡した。
容疑者はその後自宅から逃走したが、最終的に捕まった。関連トピックスは中国SNS(3日付)のホットリサーチ入りした。
今回の事件の容疑者にはどのような背景があったのか。
ただ逃走したい一心で抵抗をしただけなのか、あるいは警察を恨むような過去があったため自分を逮捕しに来た警察官たちに復讐をしたかったのか、現段階では不明だ。
充満した陰惨な邪気(じゃき)が社会全体に充満した中国では近年、個人的な恨みから相手家族一家(無関係な幼児まで)を惨殺する凶悪事件や、「社会への報復」を身勝手な動機とした多くの無関係な市民を巻き込む事件が頻発している。しかも、その頻度が高くなっていることだけは間違いない。
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