AIの軍事利用で遅れる中国
郭君氏は『菁英論壇』で、「マスク氏の北京訪問は、急な決定だったと思われる。北京が最近行った決定により、テスラのデータ転送の制限を緩和し、百度を介してデータ転送を行うことで、テスラは道路や交通のデータ収集を開始できるようになった。これは2か月前には想像もできなかったことだ」と述べた。
「北京の決断には二つの重要な意味がある。一つは、欧米が中国製の電気自動車に対する規制を強化する動きに対応するための貿易戦争への備えである。もう一つは、中国の電気自動車産業が成長し輸出も増加しているが、将来に不確実性が残っているという点である。電気自動車の真の未来は完全自動運転にあり、単に電動モーターで動く車ではなく、自動運転する高性能コンピューターが電気自動車の将来を決定づけるだろう」と述べた。
中国では現在、電気自動車の生産が活発だが、完全自動運転技術の開発には遅れがある。例えば、現在の電気自動車は1998年の携帯電話に例えられ、AIを搭載した完全自動運転の電気自動車は、2012年以降のスマートフォンにたとえられる。完全自動運転と手動運転の電気自動車の差は、それ以上に大きいだろう。
完全自動運転技術の分野でテスラはリーダーであり、そのFSD技術は未来の方向性を指し示している。アメリカでは多くの地域でテスラのFSDの実地テストが許可され、ヨーロッパやイギリスの一部地域でも認可されている。
郭君氏の話では、FSD技術はデータの共有を通じて向上するもので、データ共有がないとFSDは機能しないそうである。この点から、中国共産党は電動車の輸出における問題を認識し、今後を見据え、テスラのFSD技術を採用して国内の自動運転技術を強化することが必要だと考えているようだ。
大紀元の主筆である石山氏は『菁英論壇』で述べた通り、自動運転は機械が継続して学習する過程であり、膨大なデータの入力と収集、そして訓練が必要である。データ処理の訓練を受けていない自動運転システムは正常に作動しない。そのため、中国共産党がテスラにデータを提供しない限り、FSDの中国での利用は難しいだろう。
中国共産党がテスラのFSDシステムを利用可能にしたのは、産業チェーン、データチェーン、技術チェーンを全面的に取り入れるためである。中国の電気自動車産業が急激に成長した背景には、テスラとの深い関連がある。テスラの高級電気自動車がなければ、収益性の高い車の製造は不可能であり、もし上海に進出していなければ、中国の電気自動車産業チェーンは根底から築かれなかっただろう。
石山氏は「現在話題になっている電気自動車の自動運転技術は一般市民向けのものだが、実際にはAIの軍事利用、すなわち武器化という、より深刻な問題が絡んでいる。この問題は、将来的に中国にとっても重大な課題になる可能性がある」と述べている。
郭君氏は「AIの武器化は、非常に重要な側面を持っている。完全自動運転技術が注目される一因はその軍事利用にある。無人搬送装置が今後の戦争の勝敗を決める可能性があり、AIによる完全自動運転技術は、そのような未来の軍事用無人搬送装置の中核となる」と指摘した。
この分野ではアメリカが先行しており、無人搬送装置や偵察用ドローン、攻撃型ドローンがすでに広く使用されている。さらに、歩兵の作戦支援や武器・弾薬の運搬を行う小型の自動無人搬送システムも実際に軍に導入されている。
4月9日には、米国防総省からAI搭載の戦闘機(忠誠遼機とも呼ばれる)が米空軍戦闘機と合計22回の模擬戦を実施したとの発表があったが、その結果はまだ公開されていない。
米空軍はかつて、AIを用いた完全自動化に最適な既存戦闘機はF-16だと言及していた。昨年行われた電子戦の模擬訓練において、AIは25年の飛行経験を持つアメリカのエースパイロットを5対0で圧倒した。
郭君氏によると、今回の実戦に近い模擬訓練で、F-16のAI操縦システムが改良され、成功した可能性が高いとされている。アメリカは5千機以上のF-16を生産し、その中で2千機が退役し砂漠で保管されているが、これらの機体をアップグレードすることで、大きな可能性を秘めている。さらに、水上及び水中で完全自動運転が可能な無人搬送装置も存在し、これらの技術は未来の戦争において極めて重要となる。
しかし、中国共産党は現在、自動運転技術において遅れをとっており、もし米中が科学技術で競争するならば、この分野での遅れがさらに拡大する可能性がある。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。