WHOパンデミック条約は豪州の主権を奪うことはない=豪政府

2024/04/09
更新: 2024/04/09

オーストラリア政府が自国の政策決定への主体性が保持されるということを確認したため、パンデミック条約の下で主権を失うという主張は、今のところ下火になっている。

上院の公聴会でワンネイション党のマルコム・ロバーツ上院議員から質問を受けた保健省のメンバーは、「世界保健機関(WHO)には、勧告の採用を加盟国に対して強制する法的権限はない」と述べた。

「オーストラリアには、自国民の健康や国境に係る政策決定に関して独自の主権がある。これ以上明確なことはない」と、労働党のマラルンディリ・マッカーシー氏は、省を代表して、2月15日の上院予算委員会で述べた。

しかし、ロバーツ上院議員は、「最新の国際保健規則(IHR)は、オーストラリアの主権を弱めるものだ」と主張した。

ロバーツ上院議員が言及したのは、国連のパンデミック対策条約草案の文言で、この条約はすべての署名国を拘束することになる。

この草案では、特にCOVID-19パンデミック後の将来において、WHOが国際的な保健対応を行うための中央調整機関となることを求めている。

「国際的な影響力、特にWHOによる影響力が、新型コロナウイルスへの対応をどれだけ押しとどめてきたか、それを心配している」とロバーツ氏は語った。

「この改正作業の過程で、オーストラリアに、WHO指令に従うことを義務付けるという文言が残った場合、アルバニージー政権は、国際保健規則の改正を支持するのだろうか?」

これに対し、ブレア・エクセル保健戦略担当副長官は、「草案では、主権保護が言及されている」と述べた。

「現在、WHOとオーストラリア、そしてその他の国々との間で活発な議論がなされている。国内での議論に移れば、非常に慎重な議論が展開されるであろう」とエクセル氏は述べた。

「このプロセスは、実際には加盟国が運営するもので、その意味でWHOは存在していない。ワーキンググループは加盟国が主導し、加盟国が参加する。オーストラリアが主権を放棄するという考えには、意味がない」と述べた。

こうした動きは、オーストラリアの保健省が、国際保健規則の変更によってオーストラリアに新たな国際法的義務が生じる可能性があると発表してから、2か月も経たない間に起きたことである。

「国内で改定IHRに法的拘束力を持たせるためには、自国法の改正が必要になり、それを議会で検討し可決しなければならない」と文書は述べている。

「IHRを変更するにしても、IHRの中核的な義務に沿ったものでなければならない。それは、国際的な蔓延を制御し、各国が公衆衛生上の緊急事態に対応・協力するための能力を強化することだ」

「オーストラリア政府は、公衆衛生に影響のある問題に対して、国際社会がどのような対応をするのか、常に監視している」とマッカーシー氏は付け加えた。

「もちろん私たちの優先事項はオーストラリア人であり、自国国民の健康を自己決定する主権だ」と彼女は述べた。

パンデミック条約に異議を唱えるニュージーランド

一方、ニュージーランドの3党連立政権は、国連(UN)および関連機関とのいかなる協定の締結にも適用される「国益テスト」の実施を計画している。

ニュージーランド政府の姿勢は、オーストラリアとニュージーランドが加盟する国連加盟国が、「人々の健康を守り、促進する」ことを謳った、パンデミック対策条約の採択期限2024年5月が迫っていることを受けてのものである。

連立パートナーのニュージーランド・ファースト党が考案した「国益テスト」は、「国家の意思決定を制限しようという国連やその機関が提案してくる、いかなる協定に対しても適用され、そうした協定よりも、ニュージーランドの国内法が優先されることを再確認する」ものである。

現在、海外投資には「国益評価」が適用され、それがニュージーランドの利益に合致するかどうかを財務大臣が審査している。

WHOは各国に対して、「疾病X」に備えるためにパンデミック条約に署名するよう促している

1月17日、WHOのテドロス・ゲブレイエスス事務局長は、「疾病X」に備えるために、パンデミック条約に署名するよう各国に呼びかけた。

「疾病X」とは、2018年にWHOが言及したもので、人への感染の原因として医学的に知られていない病原体により世界規模で引き起こされる流行病の代名詞として使用されている。

ロイター通信は、「疾病X」は、将来の大規模な疾病発生に備えて、地域社会をよりよく準備させるためのシナリオであり、世界経済フォーラム(WEF)が公表しているような具体的な疾病ではない」と指摘している。

ゲブレイエスス氏は、COVID-19は最初の「疾病X」であり、各国は別のパンデミックに備える必要があると述べた。

「(コロナ禍で)多くの人を失ったのは、管理できなかったからだ」と同氏は語る。

「助かる可能性もあったが、スペースがなかった。酸素も足りなかった。では、必要なときに拡張できるシステムをどうやって用意することができるのか?」

ゲブレイエスス氏は、パンデミック条約の利点を宣伝し、各国がパンデミック中に直面したすべての経験、課題、解決策を「1つに」まとめることができると述べ、それは「共通の世界的利益」であると付け加えた。

しかし、米国共和党議員の中には、この条約はWHOに主権を譲ることになるとして、納得していない者がいる。

2023年5月、ティム・バーチェット氏(共和党)は、「WHOのパンデミック条約は非常に曖昧で、私たちの主権に影響を与える。世界的なパンデミック発生時に、どのような医療が必要になるかを米国民に伝える場合に、悪用される可能性がある」と述べた。

条約の調印期限は5月だ。

Henry Jom