四川省で進められる中共当局のダム建設に反対して、連日のように抗議や中止を求める請願活動を行ってきたチベット人や僧侶が、現地警察に一斉逮捕された。拘束された人数は、1千人以上に上る。
「1千人を一斉逮捕」という段階で、すでに想像を絶する異常性がある。しかも、凍てつく寒さのなか、拘束されたチベット人は公安から拷問を受け、食事が与えられないため空腹のあまり気絶する人もいるという。
問題のダムは、金沙江という、下流で長江につながる大河につくられようとしている。このダム建設によって水底に沈む6つの寺院のなかには、貴重な古代の壁画が保存された千年以上の歴史をもつ古刹・汪堆寺(おうたいじ)も含まれる。
当局のダム建設をなんとか阻止しようとして、現地の僧侶やチベット人はこれまでに何度も抗議をしてきた。地面に土下座して、懇願する姿も伝えられている。
今月22日、大勢の僧侶やチベット人は再び街頭に出て、努めて平和的に抗議や請願を行った。しかし、彼らを待ち受けていたのは、やはり公安による暴力だった。彼らは激しく地面に引き倒され、殴打された。
米政府系放送局のラジオ・フリー・アジア(RFA)が情報筋の話を引用して伝えたところによると、当局は放水銃や唐辛子スプレー、スタンガンなどを使って抗議するチベット人を鎮圧した。その際に負傷して、病院へ搬送された市民もいる。
抗議活動を鎮圧した後、現地当局は集落に通じる全ての主要道路を封鎖するとともに、村や寺院に対して、通信の遮断をふくむ厳しい制限を行った。
大規模抗議の翌日(23日)四川省公安当局は少なくとも2つの寺院の僧侶を含む1千人以上のチベット人を逮捕した。逮捕されたチベット人は四川省のチベット族自治州、徳格県に位置する集落「汪布頂(ワンプディン)郷」の人々である。
その翌日から、捉えたチベット人に対して、苛烈な拷問が開始された。なかには拷問の末に病院送りになったチベット人もいるという。
RFAの情報筋によると、拘束されたチベット人は、公安の質問に対する回答を拒否するたびに平手打ちされ、ひどく殴られるのだという。また別の情報筋によると、チベット人たちに与えられるのはお湯だけで、食事は与えられない。そのため、空腹のあまり極寒のなかで気絶する人も多いという。
(チベットの状況を伝えるチベット人作家で米国在住のジャーナリストの丹珍(Tsering Kyi)氏が転載した米政府系放送局のボイス・オブ・アメリカ(VOA)の報道)
中国共産党当局によるチベット人に対する弾圧に対して、米国のチベット問題担当特別調整官・ウズラ・ゼヤ国務次官(民間人保護・民主主義・人権担当)は25日、「中共は人権と言論の自由を尊重するとともに、水と土地の管理政策の立案と実施に、チベット人が参加できるようにしなければならない」と自身のSNS・ツイッター(現X)に投稿した。
ゼヤ氏はさらに、ダム建設によって水底に沈められる寺院について「それらの何世紀もの歴史を持つ寺院は、数百人ものチベット仏教の僧侶の家であるとともに、かけがえのない文化遺産だ。米国は、チベット人が彼ら独自の文化や宗教、言語を維持し、保護することを支持する」と訴えた。
国際人権NGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)」の元中国担当部長であったソフィ・リチャードソン(Sophie Richardson)氏も自身のSNSに、次のように書いている。
「チベットの僧侶や市民は、苦痛のなかで叫んでいる。民主国家の政府は、中共によるこのような人権侵害に対して『深い懸念』を表明するだけでは全く不十分だ。中共の役人に、彼らがしたことの責任を取らせること。これが重要だ」
SNS上には、ラマ僧やチベット人たちが、黒服の警察や当局者に対して、泣きながら跪き、ひたすら懇願する動画が複数流れている。リチャードソン氏の言う通り、日本をふくむ民主国家が「深い懸念」を表明するだけで済むものではない。
世界の目は今、ウクライナやガザに引き付けられている。しかしそのために、中国で今おこなわれている非道や人権侵害を看過することは許されない。
(米政府系放送局のラジオ・フリー・アジアによる報道)
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