未払い給料を哀願する「農民工」は、どこへ向かうのか=中国

2024/02/24
更新: 2024/02/24

中国では、旧正月に伴う連休も終わった。今月14日以降、仕事のある人たちは生計を立てるための奔走を始めている。いっぽうで、失業中、あるいは以前働いた分の給料を支給されていない「農民工」たちは、途方に暮れている。

農民工とは「農村に戸籍をもつ、出稼ぎ労働者」を指す。必ずしも、農業を兼業をしている「農民の季節労働者」ということではない。したがって彼らの多くは、農業から得られる収入はゼロである。

農民工が給料をもらえない、さらには首を切られて職を失う背景には、彼らを必要とする建設現場をふくむ不動産業界の低迷のほか、地方政府の財政悪化なども大きな要因の一つとなっている。

今月11日、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に応じた農民工の「葉子農(仮名、男性、29歳)」さんは、「新年の予定について」聞かれたが「何をすればいいのか、自分でもわからない」と途方に暮れていた。

クレーン車の免許を持ち、この数年間はずっと都市部の建設現場で仕事をしてきたという葉子農さん。今年の旧正月前には、上海や北京、広州などで働いた。

しかし葉子農さんが、まず気に掛けるのは出稼ぎ先での生活費である。葉さんは「都会へ出れば、生活費などに高い費用がかかる。そう簡単には(都会へ)行けないよ」という。

また、葉さんは「昨年は、どの都市でも、仕事を見つけるのは本当に大変だった。以前に2か月ほど給料を延滞されて、ストライキを行った経験もある。今年の旧正月前に、最後に働いたのは広州の建築現場だったが、未だに給料をもらっていない」という。

福建省のリフォーム業者「必須多賺銭(仮名、お金を稼ぎたい)」さんは、妻と娘、それと2人の老人(両親)と一緒に暮らしている。彼の場合は「給料は少ないのに、生活にかかる出費が大きい。なんとかやりくりして、かろうじて生きている状況だ」という。

自分の今の「最大の願い」を仮名にしたこの男性は、次のように語った。

「この2年の間に、周囲の工業地帯や商店の相次ぐ閉鎖、不動産市場の不景気を目の当たりにした。それで私は、未来に希望が持てなくなった。今は少しでも多くのお金を稼いで、中国を離れ、欧米に行って暮らしたい。その時、家族連れて行けたら一番良い」

近年、農民工が都市部で仕事を見つけることは、ますます難しくなっている。そのため、故郷に戻らざるを得ない労働者が増えているが、郷里に戻っても生活できる仕事があるわけではない。

また、たとえ運よく都市部で仕事が見つかったとしても、働いた分の給料が遅延したり、支給されないなどの苦境に直面することも多い。出稼ぎ労働者は立場が弱いため、雇用側によっていくらでも冷酷に扱われるのだ。

(泣きながら、土下座までして給料の支払いを求める労働者たち)

「中国各地の建設現場で働く農民工の大半が、給料を毎月は受け取れないでいる。月に1000~2000元(約2~4万円)はかかる基本的な生活費ですら、タイムリーにもらえない」と報じる中国メディアもあった。

湖北省出身のある農民工の場合、月に23日の労働で当初約束された給料は6千元(約12万円)だったが、実際に支給されたのはわずか1700元(約3.5万円)だった。

香港を拠点とする労働者の権利団体「中国労工通訊(CLB)」が1月30日に公表したデータによると、昨年の中国の労働者によるストや抗議運動は1794件と、前年より2倍に増えている。このなかでは、製造業における賃金未払いや倒産関連の問題が急増しているという。

ネット上には「給料の支払い」を哀願する農民工の姿を映した、正視できないような動画が溢れている。

なかには、きちんと仕事した後、給料を一銭ももらえないため、そばに立つ黒服の公安要員にひざまずいて「お願いです。私の給料を取り戻してください」と泣きながら助けを乞う中年男性もいる。

しかし、現場の治安維持のために来ている公安は、彼をただ冷たく見下ろすだけだった。

画像(左)は2024年2月7日、「給料を払ってください」と陝西省の建設会社で土下座する農民工。画像(右上)は給料を払ってもらえず、泣き崩れる農民工。画像(右下)は、なす術もなく、路上に跪いて給料の支払いを乞う労働者たち。(SNSより)

(泣きながら、土下座までして給料の支払いを求める労働者たち)

 

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李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。