失業者の居場所は図書館 家族には「仕事に行くふり」をする=中国

2023/12/30
更新: 2023/12/30

中国経済は悪化の一途をたどっている。そのようななか、いまやスターバックスカフェに代わって、無料で利用できる公共図書館が「失業者の居場所」として利用されるケースが増えている。

このごろ、北京や上海、広州、深センなど多くの都市の公共図書館が、毎日のように利用者で「満員」になっていることを示す動画がSNSに多く投稿されている。土日ではない平日の昼間であっても、なぜか図書館には多くの人が来ているのだ。

館内にいる人の多くは「失業した人たち」であるという。しかも、家にいると家族に心配かけてしまうため、仕事に行くふりをして図書館に来ているのだ。

「今は収入がないから、コーヒー1杯だって無駄にはできない。だからこそ無料で入れる図書館が失業者の居場所になったんだ」「失業した中高年は、スターバックスカフェではなく、図書館に集まっている。こんな現象からも、中国経済が悪化していることが浮き彫りになっている」。そう指摘する声の主も、今は失業者である場合が少なくない。

今年8月、中国統計局は「全国の都市部における若者の失業率について、公表を停止する」と発表した。

この発表の真意について、中国では普遍的に「失業率のデータがひどいので、皆しばらく見ないでください、という意味だろう」あるいは「もうこれ以上、でっちあげられないからに決まっている」と受け止められている。

若者の失業率の公表が停止される以前、今年の4~6月までの中国の若者の失業率は20.4%~21.3%に上昇。歴史的な新記録を、毎回連続で更新していた。

しかし、北京大学の張丹丹副教授は、以前に「過小評価されている可能性のある若者失業率」という記事のなかで、「躺平(寝そべり)族や親の援助を受けて働いていない1600万人を失業者とみなすならば、3月の中国の若者の実際の失業率は最大で46.5%に達する」といっている。

中共当局は、低い就業率を少しでも高く見せかけるためなのか、その統計方法は驚くほどルーズになっている。例えば、週に「1時間」働いただけでも、就業者とみなしているのだ。

また、インターネット上でアカウントを登録するだけで「大学生が起業した」とみなして、就業者にカウントしていた。

図書館に「一時避難」することはできても、そこに食べ物はない。なんとか生きる道を自力で切り開かなければならないが、大量の失業者を生んだ中国経済の低迷は、もはや回復不可能な段階に至っていることは明白である。

若者だけでなく、中国における実際の失業率は、すでに「恐ろしい数字」になっていることは間違いない。

 

(深センの図書館内の様子)

 

(広州市の図書館内の様子)

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。