中国経済は低迷を続けるばかりか、急落していると言ってもよい。そのようななか、習近平国家主席が推進する「共同富裕」は、中国の富裕層や中産階級にパニックをもたらしている。
その反応の一つとして、海外へ向けた大規模な資金や資産の移転が加速している。
資金の海外流出を招いた「共同富裕」
「共同富裕」とは、習近平氏がコロナ禍の最中にあった2021年8月に打ち出したスローガンである。その内容は「貧富の格差を是正し、全ての人が豊かになることを目指す」という極めて理想主義的なものであり、当初から「絵に描いた餅」の感は否めなかった。
「共同富裕」の狙いは、民衆の不満を抑制することにあった。そのため、ともかく習近平政権は「貧困の撲滅」を掲げ、それに「成功した」と主張している。
しかし、操作された公式データとは裏腹に、農村から都市部に至るまで、すさまじい貧困にあえぐ下層民は依然として多く存在しており、スローガンの「共同富裕」は全く達成されていないのが現状である。
そもそも中国の富裕層や中産階級にとって、自分が所有する富を低所得者に分け与えることは絶対に受け入れられない。そのため彼らは、必然的に海外への「富の移転」を探ることになる。
なかでも、日本の不動産は、購入すれば所有権が永久に保証されるため、中国人富裕層にとっては資産価値が減らない「狙い目」の投資先になっている。
彼らの本音を端的に言えば、今の政権がつぶれる前に「自分のカネを安全な場所へ移しておきたい」ということなのだ。言うまでもないが、中国共産党の現体制について、すでに先が短いことを彼らは見切っている。
このような外国への資金流出を防ぐため、中国政府は取り締まりを強化している。これに対して、個人資産を安全に保とうとする人々の本能が、かえってその流出を加速させているのが現状であろう。
活況を呈する「地下銀行」
そのような背景のなかで、いま「地下銀行」が活況を呈しているという。
地下銀行とは、銀行法等に基づく免許を持たず、不正に海外に送金する闇業者のことだ。こうした地下銀行の動きもふくめて、最新の分析によると「今年中には、1.1万億元(約1,500億ドル)以上が中国から流出する」と予想されている。
いまや、中国の全ての省など、各地に「地下銀行」が存在しており、特に香港やマカオに近い地域ほど「地下銀行」は大盛況だという。
中国SNSのウィーチャット(微信)や百度、タオバオ(淘宝)、Facebook、ツイッター(X)などにも「地下銀行」の関連情報は普通に載っているし、わざわざネットで調べなくても、知り合いに聞けば関連情報はすぐに手に入る。
これらの「地下銀行」は、例えば海外へ送金する場合、通常の銀行のような煩雑な手続きを省き、素早いやり取りができることを「売り」にしている。ともかく「地下銀行」を利用すれば、指定の口座に入金すると、希望する相手口座へ即座に送金できるのだ。
ただし、もともと闇業者なので、その安全性や、どれほど信用できるかは定かではない。
中国は「沈みかけた船」
エポックタイムズの記者が、ある「地下銀行」に連絡したところ、次のような答えが得られた。
「中国人の顧客が、人民元を中国国内の指定された銀行口座に入金すれば、顧客の外国の口座に、すぐに国内で入金した額と同等の外国為替が入金される。もちろん、その逆のパターンも可能だ」
送金手数料については「為替レートは、その日の金額で計算される。別途、手数料が必要」という。このほか「為替レートのなかに手数料が含まれる方法」を取っている地下銀行もあるが、この場合は為替レートが割高になる。
闇業者である「地下銀行」は、日本でも華人が多く住む池袋などに存在している。表面上は「スマホ修理」などの看板を掲げているが、裏業務の「銀行」も盛んに行われているという。
米国在住の中国人実業家・孟軍氏は「金持ちは、みな(中国から)逃げてしまった」として、次のように語った。
「多くの富裕層は、必死になって中国国内の住宅や不動産を売り、その金を海外に移している。なかには、米国やカナダにある海外不動産を購入する際に、購入代金を中国国内で人民元で支払い、外国で直接、権利移転手続きをする、という方法をとる人もいる。いま富裕層は、さまざまな方法を使って資金を海外に移転している」
中国共産党の中国は、今まさに「沈みかけた船」である。
そうなれば「沈みかけの船」から逃げ出す中国人は、今後ますます増加することは必至である。孟軍氏も言うように、中国の著名な大富豪は「すでに(中国から)逃げてしまった」。次に逃げ出すのは「中国共産党の高官たち」とみても、およそ間違いはなさそうだ。
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