これぞ「末法の世」 現代中国の僧侶たち

2023/09/30
更新: 2023/10/01

現代は「末法(まっぽう)の世」だという。冒頭からその書き出しにしてしまったことで、筆の重さを禁じ得ず、正直とまどっている。

現代中国の風景の一つとして、中国の仏寺の僧侶について伝えるのが本記事の趣旨である。ただ、その導入として、まずは日本の仏教について少しだけ前置きしておきたい。

「末法の世」に存在する仏僧

日本でいう宗教の「仏教」とは、実は明治の初めころに、西洋のキリスト教が新設の学校などとともに大々的に入って来てからの新しい名称である。

江戸期までは、これを「仏法」や「仏道」と呼んでいた。法や道といった旧来の名称のままのほうが、不純物が混じりにくいという意味で、あるいは日本人にとって良かったのかもしれない。

いわゆる「鎌倉新仏教」のなかの浄土真宗の祖である親鸞(1173~1263)は、僧侶のまま妻帯した。その大きな理由は、この宗門が「民衆とともに、普通の生活のなかで修養していく道」を選んだことにある。

衆生を一人でも多く救いたい、というのがその大義である。確かに、安芸門徒に代表されるように、とくに戦国期を通じて、浄土真宗(一向宗と言ってもよいが)は日本国内の東西に大きな広がりをみせた。時の権力者である信長も、秀吉も、ひいては家康でさえも、ひたすら念仏を唱えて向かってくる一向宗門徒の頑強さには、ほとほと手を焼いた。

その祖である親鸞は妻をもち、複数の子をもうけた。その宗門と寺院は、親鸞の子や孫が継いだ。ただし、こうした日本独自の仏教の解釈は、海外の、とくに戒律の厳しい上座部仏教の国々からすれば到底理解し難いものであり、女犯(にょぼん)をはじめとする戒律に抵触した「破戒」と見なされる。

彼の国において、仏門の僧侶たる者は、全ての俗世の欲を捨てた「特別な存在」であるからだ。それらの国(例えばミャンマーやスリランカ)では、僧侶と一般民衆の間には厳然とした一線が引かれている。

その点では、日本に来た中国人も同じ考えであるらしい。彼らは「日本の僧侶は、なぜ結婚できるのですか?」と本当に不思議そうに聞いてくる。答えると説明が長くなるので、なるべく聞こえないふりをしている。

余談ながら、日本のテレビドラマの『西遊記』は、亡くなった夏目雅子さんを皮切りに、美しい女優さんが玄奘三蔵を演じるのが一つの慣例になっているようだ。

ところが『西遊記』の本家本元である中国の人々からすれば「三蔵法師を女優が演じるなど絶対にダメ。あり得ない!」という。彼らの基盤となる宗教観からして、日本製の『西遊記』は、大いに叱られるレベルであるらしい。

あくまでも大まかな総体としての話だが、日本の仏寺は、その実態として葬儀業者にちかい「企業」であると考えたほうがよい。もちろん厳しい修行を積む禅寺などもあるが、そちらは今は置く。

例えば、故人につけられる戒名は、遺族が僧侶にわたすお布施の額によってネーミングが変わる。お寺も、男女を問わず、また修行の多寡にかかわらず「住職の子供」が後継する。はて、インドの釈迦牟尼の教えにそのような内容があったかどうか、寡聞にして知らない。

ともかくも日本の仏教は、現状のような「かたち」で日本社会のなかにある。それ以上でも、以下でもない。つまるところ日本の僧侶は、俗世における職業の一つなのだ。

日本の僧侶もまた「普通の人」として、一般社会の常識のなかで生活している。その是非については、本記事の主題ではないので、ここでは言及しない。

ただし、以下に紹介する「中国の僧侶」は(もちろん全てがこうではないと信じたいが)果たして「これが寺の坊さんか?」と思うような、すさまじい破戒ぶりを示しているようだ。

「党のためにある」寺院の惨状

中国では近年、仏法修練の場である寺院が金儲けに走ったり、「美女に囲まれて、高級車を乗り回す僧侶」のニュースがたびたび報じられている。彼らのあまりのひどさに、国民の嫌悪感が高まっている。

SNSにも、俗世を捨てて「断欲」したはずの僧侶たちが見せる「本来あるべからざる姿」を映した動画が、しばしば投稿されてきた。

関連動画については「僧侶までがこの有様では、まさに末法の世だ」と嘆く人もいれば、まことに達観的な「党の指導を受ける寺の僧侶だから、べつに驚かないよ」といった「悟り」の境地まで、幅広くコメントが寄せられている。

その指摘の通り、今の中国では「全てが党のためにある」。そのため、仏教の寺院や道教の道観でさえも、中国共産党の魔性の浸透は避けられない。

中共高官が平気でやっていることは僧侶もやる。つまりは女犯であれ邪淫であれ、守銭奴になることであれ、中国の宗教界の重鎮から末端の寺の僧侶まで、総じて例外はないのだ。

もちろん、真面目に(?)お勤めをしている寺院や僧侶も一部にあることは留保しておきたい。

その上で以下に挙げるのは、まさに中共党員そのままの「破戒ボウズ」の実態である。このごろ中国の僧侶が、それが何の原因かは不明だが、僧衣を着たまま集団で殴る蹴るの大ゲンカをする動画が、SNSに拡散されて物議を醸している。

例えば、以下の動画がそうだ。仏罰を恐れないとは、なんとも嘆かわしい「お坊さん」たちである。

 

(殴る蹴るの大ゲンカをする僧侶たち)

(殴る蹴るの大ゲンカをする僧侶たち)

 

中国仏教界のトップも「破戒」三昧

2018年、中国仏教界の最高指導者で「中国仏教協会会長」でもある釈学誠(しゃく がくせい)がセクハラで告発された。釈学誠は、多数の女性の弟子に性的暴行を加えたほか、巨額の使途不明金まであったという。

釈学誠が住職を務める北京の「龍泉寺」は当初、「住職に対する告発は、でっち上げだ」と主張していた。しかし後に、調査を行った中国政府で宗教関連を担当する国家宗教事務局は「セクハラについて、指摘は事実だった」と認めた。

釈学誠は当時、中国仏教協会会長、全国政治協商会議(政協)常務委員、政協の民族・宗教委員会副主任などを務める「中国仏教界のドン」と呼ばれるほどの大物だった。

セクハラ住職の釈学誠は、2018年11月に「中国仏教協会会長」を解任されている。その解任以前には、中国当局の弾圧方針に従い、釈学誠は気功修煉法「法輪功」に対して誹謗中傷を繰り返していた。

 

写真は2014年、全国政治協商会議に出席した釈学誠。(WANG ZHAO/AFP/Getty Images)

 

閉ざされた「天国への道」

世の人びとの道徳が著しく低下した今の時代は「末法の世」と呼ばれている。

エポックタイムズ(大紀元)のシリーズ社説『共産主義の最終目的』のなかで、中国共産党の真の姿について詳細に分析している。

以下、同社説のなかから、中国の宗教に関連する部分を一部抜粋して紹介する。

「文化と道徳は共存関係にある。伝統文化の破壊は道徳の堕落に直結する」

「中国共産党の数十年来の統治を俯瞰(ふかん)すると、文化と道徳への破壊は終始、一貫して行われている」

「中国共産党は仏道の理念を伝播する役割を果たしていた僧侶、道士に対して、殺戮、投獄、洗脳、強制還俗、宗教教義の改ざんを経て、共産党に完全に服従させた」

「宗教をコントロールし、破壊するための道具として『仏教教会』や『道教協会』を設立した」

「今、寺院はすでに新たな投資先となり、金儲けのために寺院を囲い込む者すらいる。観光スポットには偽寺院や偽道観、偽法師、偽道士があふれかえり、観光ガイドと和尚、道士などが一緒になって観光客から金銭をだまし取っている」

「観光客から金銭を巻き上げる手段は多岐にわたり、信仰心を悪用した商法が続出する事態になっている。寺院を経営するビジネスはまさに金の生る木となっている。西安のある人物が七個の寺院を経営し、一年間に数千万元を儲けているとの報道もある」

「寺院の住職がCEOとなり、寺院も値札をつけられて株式市場に上場する」

「中国共産党の統治下に置かれ無神論がはびこる現代中国では奇妙な現象がみられるが、もはや人々は見慣れてしまい、もうそれを奇妙だと思わなくなっている」(引用、以上)

中国共産党は、利益などの手段を使って、伝統的な宗教を完全に変異させてしまった。

いまや中共の支配下にある各宗教団体は、中共にとって「金の生る木」であるばかりか、異見者を弾圧する道具になっている。中国共産党に呑み込まれた中国の仏教は、すでに中共の一部となり、衆生をだます悪事の共犯者となっているのだ。

古来、健全な信仰は、民衆の心の拠り所であり、日々の生活の規範であった。

しかし、共産主義による無神論にすり替えられた結果、信仰はその意味を失い、修養によって自身を向上させるための「天国への道」が閉ざされたのである。

こうした「この世の地獄」から脱却するには、どうすればよいか。

その大元凶である中国共産党を、根こそぎ解体するしかない。現状のままでは、ますます多くの衆生が、狂死するか、悪魔の邏卒になるしかないからだ。

「末法の世」は、まことに恐ろしい。

 

(浙江省佛(仏)学院の開学式典。中国のSNSより)
(中国国旗を手に、行進する道士。右は、拳をあげて、中国共産党への忠誠を誓う道士たち)

 

(僧侶たちによる舞台のパフォーマンス。バックには「永遠に、党に従って進む」と書かれている。文革時代に逆戻りしたような、信じ難い光景である)

(僧侶たちが、中国国旗を無気力に振りながら歌うのは「没有共産党、就没有新中国(共産党がなければ、新中国はない)」。)

(チベット仏教の寺。お経を唱えながら「札束」を投げ渡している。ここも、かなり中共に毒されたらしい)

(下は、どの寺であるかは不明だが、僧衣を着た者たちが狂気の宴を催している。もはや「地獄の光景」にしか見えない)

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。