予告なしのダム放水で「全てを失った」 絶望の町で、被災者の自殺が続く =中国 河北

2023/08/22
更新: 2023/08/22

「予告なしのダム放水だった。これは天災ではなく、人禍だ」。7月末から、中国で起きた一連の洪水災害をめぐり、多くの被災民が口にするのはこの言葉である。

しかし中国国内で、その「真実」は報道されていない。官製メディアや現地当局は、一貫して「豪雨による洪水被害」と主張。全てを、自然災害のせいにしてしまったのだ。

現在、水は引いた。しかし残されたのは、あまりにも無残な、廃墟となった故郷の町と、永遠に癒えることのない被災民の心であった。

なかには、家や全財産を失った衝撃から立ち直れず、せっかく洪水から助かりながら、生きることに絶望して、自殺する被災者も少なくないという。

予告なしのダム放水を受けて完全に水没した河北省涿州市刁四村に住む70代の男性・藏永中さんには、半身不随の息子(51歳)がいた。息子は、8月1日の洪水の際に避難することができず、水没した自宅内で死亡した。

(「体の不自由な息子を助けられなかった」と、泣いて語る藏永中さん)

今月15日、中国メディア「紅星新聞」の取材に応じた藏永中さんは「洪水が来た時は夜だった。携帯電話は電波が届かず、停電にもなっていて、外部に助けを求めることもできなかった」と語ると、声を震わせて泣きだした。

藏さん夫婦は、ベッドに寝たきりの息子を家におき、助けを求めるため外へ出て、声の限りに叫んだ。しかし、水の増す勢いが強すぎたため、救助隊の船は来る途中で何度も転覆し、到達できなかった。

25年前の交通事故で不自由な体となり、それでも心血注いで面倒を見てきた息子が水に呑み込まれていく光景を、老夫婦は、ただ見ているしかなかったという。

ユーザーから関連動画に寄せられたコメントのなかには、決して看過できない重大な指摘も多い。

洪水災害の後、携帯電話の電波が断たれるなんて前代未聞だ。被災地の民衆が撮影した画像や動画、救助を求める声がネットに投稿されるのを防ぐために、わざと信号を遮断したのだろう。もし本当にそうだとしたら、これこそ人為的な二次災害だ!」

河北省廊坊市の覇州市揚芬港鎮の村では、せっかく洪水から助かったにもかかわらず、生きることに絶望して「井戸へ飛び込んで自殺した高齢者が、すでに2人いる」として、関連投稿がネット上に拡散されている。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。