今月11日と12日、四川省の重慶市北碚区歇馬街道石盤村で、黒服を着た数十人の「実行部隊」が動員され、村民である李忠秀(女性)さん一家に対して土地と家屋を接収。この場所からの「強制立ち退き」を行った。
現場を捉えた動画のなかには、現場で最後の抵抗をする李さんとその弟が、複数の男によって両手両足をつかまれ、悲鳴を上げながら排除される様子が映っている。こうした「政府ぐるみの犯罪」ともいえる事例が、今の中国では横行している。
突然あらわれた「重機と暴力団」
関係者によると、11日に約200人、12日にも100人ほどの工事関係者が突然やってきて、李さんの土地を重機で掘り起こすなどしたという。
事前に何も聞いていない李さんは、警察に通報した。警察官は現場に来たが「これは政府がやっていることだ。警察には管理する権限がない」とだけ言い残し、去っていったという。
関係者によると、強制立ち退きにあたった黒服の「実行部隊」は、区の公安や郷鎮人民政府(街道辦事処)が雇った地元の暴力団員だという。11日にやってきた200人のなかには各村の村長や党トップ、街の管理組合の当局者、警察や区の治安隊などの高官も含まれていた。
李忠秀さんは13日、エポックタイムズの取材に対して「このような土地収用は、関連法規が定める規則にのっとっておらず、違法である。正式な手続きもなく、その計画についても一切村民に知らせていなかった。そのうえ、納得できる補償もないため、私の家族は終始、収用に同意していない」と明かした。
双方の合意に至っていないにもかかわらず、当局は11日に突然、大勢でやってきて重機で土地を掘り起こし始めた。李さんと弟は、これを阻止しようと抵抗したが、黒服の男たちに強制排除された。
同じ村の趙利さん(仮名)は、次のように語った。
「この土地収用は手続きが違法なうえ、補償金も十分に支払われない。李忠秀さん一家は孤立無援だ。まるで家畜の豚のように、暴力的に排除された。警察は、悪者の共犯者になって、見て見ぬふりをしている。これが、あいつら地元政府のやりかただ。世界に笑われるよ!」
地方政府が「土地を強制収容し、不動産業者に売却」
中国では今、債務返済に追われる地方政府が「住民の土地を強制収用して、不動産開発業者に売却する」という手法がはびこっている。
中国では、個人で土地を所有することはできないが、長期的に使用する権利は法律で保障されている。したがって、地元の暴力団を雇って、村民の土地や住居を奪いとる「強制立ち退き」は明らかに違法だ。しかし、その違法行為を、地方政府ぐるみで行っている。
このような背景をもつ「強制立ち退き」は、今や中国における社会不安の要因の一つにもなっている。
立ち退きに応じない市民や村民に対して、地方政府や開発業者が雇った暴力団による殴打、脅迫や嫌がらせ、理由をこじつけた留置など、理不尽な暴力が後を絶たない。もちろん、地方政府がこれを黙認しているため、警察も介入できないのだ。
絶望のあまり「焼身自殺に走る人」も
暴力団の報復を恐れて、強制立ち退き案件の依頼を引き受ける弁護士は少ない。そのため、被害者が訴えても、公正な司法判断を得られる望みはほとんどないのが実情である。
そこで、絶望のあまり「焼身自殺」という最終手段に訴える人もいる。国際人権非政府組織(NGO)のアムネスティ・インターナショナルが2012年10月に調査した「中国における強制立ち退きの事例」40件のうちの9件で、立ち退きに抗議あるいは抵抗した住民が、自殺などにより死亡している。
2009年から2011年の間、強制立ち退きが関係する案件で「焼身自殺」の報告が41件ある。アムネスティは、これまでにも「中国政府は、強制立ち退きを防ぐ策を講じていない」と繰り返し批判してきた。
今年6月26日、吉林省通化市梅河口市で、強制立ち退きに抵抗する男性・王文洲さん(54歳)が焼身自殺を図った。
王さんの娘によると、焼身自殺を図り、重傷を負った父親を載せた救急車のなかで、父親の手術許可の署名をしようとする母親に対して、同乗した当局者が暴力的に阻止したという。
父親は、病院へ搬送されたが最終的に死亡した。この事件について、官製メディアは全く報じていない。焼身自殺事件があったにもかかわらず、その後、当局による強制立ち退きは行われた。
(強制立ち退きに抵抗する王文洲氏に対し、集団で暴力を振るう当局者ら)
(撮影日時や場所は不明。家屋の取り壊しを強行する重機に向かい、屋上から火炎瓶らしきものを投げつけて抵抗をする住民)
(撮影日時や場所は不明。強制立ち退きに反対し、デモ行進をする村民)
(撮影日時や場所は不明。強制立ち退きに遭い、適切な代替住宅を与えられず、雪が降る酷寒のなかで「草ぶきの小屋」に住む老夫婦。お婆さんは泣いている)
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