オランダに亡命した中国反体制活動家・高志氏の妻と娘が、タイで現地警察によって拘束されたことがわかった。高氏は、中国へ強制送還される危機に直面している家族の救出を国際社会によびかけている。
中国河南省出身の高志氏は3年前、オランダ政府に政治亡命が認められた。このことで、中国にいる高氏の家族は地元警察から2度にわたり尋問されている。さらに高志氏が、自身の友人で同じくオランダに在住する中国人の民主活動家・王靖渝氏が主催する「六四天安門事件」を記念するイベントに参加したことをきっかけに、中国にいる高氏家族への現地警察による嫌がらせがひどくなった。
今年6月15日、中国にいる高氏の妻が住む家を現地警察が訪れ、彼女の携帯電話を取り上げるなどの圧力をかけたという。オランダ側の当局者から「家族の亡命を助ける」との約束をとりつけた高氏は、妻子に「一刻も早く中国を離れるように」と告げた。
家族は当初、タイへ渡り、バンコクのオランダ大使館で緊急ビザを取得してオランダへ亡命する予定だった。そこで妻と娘は先にタイへ渡り、息子のほうも7月3日にタイへ着いた。
だが、その後、誰かが高氏の妻と息子の名前をかたって、ヨーロッパの空港やタイの高級ホテルの部屋、さらにはバンコクの中国大使館などに「爆弾を仕掛けた」とする脅迫メッセージを送りつけたという。
この仕組まれた「爆弾騒ぎ」で、オランダ政府は高氏家族に発給する予定であったビザを取り下げ、一家を「EU渡航のブラックリスト」に入れてしまった。こうして、高氏の家族のオランダ亡命計画は頓挫することになった。
EUのブラックリストに載った高氏の妻と子供たちは航空券を購入することができず、タイでの滞在を余儀なくされたという。
後にオランダ移民局は、高氏家族の名前を「EUの渡航ブラックリスト」から削除することに努めたが、数日に及んだその手続きの間に、高氏の妻と娘のビザが失効(7月11日)したため、翌日タイ警察に連行された。高氏の息子はタイ警察によって逮捕されていないものの、ビザ延長申請はタイ移民局によって拒否されているという。
中国への強制送還の危機に直面する家族の救出を求めて、高氏は現在、オランダやタイ政府に手紙を書くなどして動いており、国際社会にも助けを求めている。
「中国人権擁護団体(CHRD)」のウィリアム・ニー(William Nee)氏はメディア取材に対し、「この爆破予告は、中国当局が中国の反体制派を迫害し、他国政府から中国の反体制派に不利な措置を取らせるための新たな戦術と考えられる」と指摘する。
これに先立ち、オランダに亡命した中国人民主活動家の王靖渝氏、および王氏を手助けした米国のキリスト教系NGO対華援助協会の責任者で牧師でもある傅希秋氏も、本人が知らないうちに誰かがその名前をかたり「爆弾を仕掛けた」などの脅迫メッセージを出すことで、大きな迷惑を被った経験をもつ。
オランダ警察による調査の結果、王氏らの名前をかたって脅迫メッセージを発信したIPアドレスは香港や中国国内のものであるとわかった。海外の反体制派を「爆弾テロリスト」に陥れるこの手口の背後には、中国政府の影があると考えられる。
全くの濡れ衣ではあったが、この仕組まれた「前科」の影響によって、傅希秋氏は今でも渡航のたびに関連部門に報告しなければならないという。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。